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おともだち!



「おかしいとおもったんだ!!ちがうせかいのひとだ!!ねえねえそうなんでしょ?!」


「………チッ、ああそうだよっ!!」



 プレイヤーかNPCかの判断は、その格好や言動で区別をつけることができる

 しかし逆を言えば、格好や言動を誤魔化し、プレイヤーがNPCの模倣をすれば、判別は非常に困難になる

 残された方法は、全てのNPCを把握するという力技くらいしかない


 しかし、どれだけ精巧な偽装をしていても見抜く存在がいる

 それが可能な者に共通する特徴は、内側を見通す力………魂に関する能力を持っているのだ

 つまり、神クラスの存在。彼らは魂の内容を見ることで、相手がプレイヤーかNPCか判別できるのだ


 そして、目の前のコイツも、魂を現世から消し去る「魂滅」属性を持っていると言われている

 「魂滅」属性はストーリー内で度々登場するが、その殆どはなんらかの道具に付与されているものだ

 生物の肉体に直接付与された事例なんて、悪辣なバッドエンドシナリオの章ボスくらいだ

 それも代償なしで扱えるとなったら、他の例はもうジェノサイドモードのプレイヤーくらいしかなくなる。そのプレイヤーですら、リスポーン不可という縛りはあるのに


 コイツの「魂滅」は、他のそれと違って特殊なものな可能性が高い

 つまりアレは、神と近しい能力、魂を扱う能力を持っているかもしれないのだ


 かもしれないと言ったけど、今はっきりとした

 コイツは俺の魂を見抜き、俺がプレイヤーだと暴いた

 やっぱりこいつ、おかしな能力持ってやがる。というより、ゲーム側から厄介な権限持たされてやがる……



「すごいねー!すごくじょうずにへんそうできてるよ!どうやってるの?!」


「……知るかよ、俺たちを招いた創造神にでも聞いたらどうだ?」


「なるほどー!きおくだけひっぱってまぜまぜしてるんだ!!よくなじんでるねー!」


「……それで合ってるんじゃない?知らんけど」


「すごいねー!ちがうせかいのひとにはいりこんでるのにふつうのままだ!ぜんぜんけんかしてない!」


「……なんのことだ?拒絶反応的な?あ〜っと、異邦人の肉体や魂は一から作られてて、乗り移ったとかじゃなくてだな……」


「そっか!とおいようでちかいせかい!ほとんどおんなじいきものだからじょうずにまざってるんだね!!」


「話聞いてる?」


「ちかくでみないときづかなかったよ!!なりすますのとくいなんだね!!」


「あー聞いてねぇな、でっかい独り言かよ」


「それで!なんてなまえなの?!」


「いやいきなり話しかけて来るんかい!ぜってぇ答えんぞ!こっちだって無視してやる…!!」


「「クロート」なの?!「コオロギ」なの?!それとも「トシロー」?!どれがせいかいなのかな?!」


「っ!?お前さぁ……!!」



 こんにゃろ、隠す気もなく平然と俺の過去の会話ログを参照しやがったな…!!

 「トシロー」なんて一回しか口に出してないぞ…!なんでもアリかよこのチートNPC…!!



「どのなまえでよべばいい?!「コオロギ」がいちばんつかってる?!ほんとうのなまえは「クロート」なのにいっかいもつかってない!」


「チッ、姿によって名乗る名前を変えてんだよ」


「へー!そのかっこうは「コオロギ」なんだ!べんじょコオロギのコオロギ!!」


「なんだよ、それを知ってどうすんだよ」



 おねがいだっ!言いふらすなんてことはしないでくれっ…!!



「ナイショにするの!みんなもそうしたから!」


「……誰にも言わないでくれるのか…?」


「そうだよ!みんなおしえてくれなかったのイジワルだとおもってたけど!そうじゃなかった!だからワタシもおしえない!!」


「そうか、よかった………ちなみに、その皆んなってのは誰なんだ?」


「やっとおもしろくなりそう!ワクワクドキドキ!おしえられちゃったらおもしろくなくなっちゃう!みんなやさしい!!」


「また聞いてねぇし……」



 なんっつーかなぁ……こいつとの会話って……


 会話の選択肢を選ぶ時以外は、テキストが流れるのをただ読んでくだけのムービーをやっているみたい

 口を挟みたいところは沢山あるのに、有無を言わさず勝手に進行していってしまうかんじがまんまそれだ



「コオロギのまわりはもっとおもしろくなる!もっとみていたい!ワタシ、コオロギとなかよくなる!!」


「…………は??仲良く?」


「そう!なかよく!おともだちになるの!」


「友達って、俺とお前が?」


「どうやったらなかよくなれるかな?!」



 いや、無理だろ、こんなやつと友達なんて


 こいつはこの後、どっかの国で悪さして戦争を引き起こすことが確定してるんだ

 こんなハッピーエンドクラッシャーと仲良くなんてできるわけがない。関わり合いになりたくない。一刻も早く消えて欲しい



「お前みたいなやつとは友達にならん」


「えー!?!なんで?!」


「お前は争いを生み出すだろ?国の大事なもんを盗んだり、王族を殺したり。そんなことするやつと仲良くできるわけがないだろ」


「そうなの!?!たのしいのに!!なんでやっちゃダメなの?!」


「は?それは、えーっと……」



 ちょっと説明が難しいな……

 まず戦争を引き起こすためだけに作られたNPCに、倫理観とか説明して理解できるのか?

 というか、俺自身が「ジェノサイドルート」でこいつより非道なことやりまくってるから、説得力のある言葉が出てこない気がする……


 まあいいや。どうせ理解されないだろうし、適当に流そう



「あ〜〜〜、そうだな………俺が困るからだよ」


「そうなんだ!!こまらせるひととはともだちにならないんだね!!」


「そういうことだ、意外と理解が早いな。だからお前と友達になるなんてことは、絶対にない」


「わかった!!じゃあがまんする!!」


「……は?我慢?」


「ワタシ、いっぱいたたかってるのすきなの!でももうたたかわせるのがまんする!!ともだちになる!!」


「いや、できるわけないだろ!お前の役割は……」


「できるもん!!みてて!!えいっ!!」


「は?何言って………」






〈しょうごう!『おともだち!』をかくとくしました!すごい!!〉




「はぁ!?なんじゃこりゃあ!!?」


「つくったの!!すごいでしょ!!」


「作ったってお前……」


「もっとちゃんとみて!!がんばったんだから!!」




━━━━━━━━━━━━

しょうごう!:『おともだち!』


 これがあるかぎりワタシはコオロギとなかよくなる!!なかよしのしるし!!

 なかよくするためには!くにのだいじなもんをぬすんだり!おうぞくをころしたり!あらそいをうみだすことをがまんする!やくそく!!

 こうか!:ワタシがやくそくをまもる!やくそくをやぶったらこのしょうごうはじどうてきにきえちゃう!かなしい!!

━━━━━━━━━━━━




「うわ読みにくっ!?」


「これでなかよくなれる?!おともだち?!」


「ちょ、ちょっと待って!いま自分の中で噛み砕いてるから……」


「わかった!!ちょっとまつ!!」



 え、なにこれ?マジでなにこれ??


 どゆこと?つまり?この称号がある限り、あの「歩く戦争フラグ」は戦争を引き起こさないってことか?

 というか称号を作ったってなに!?マジでなんでもありだなコイツ!?


 つまりこの称号がある限り、コイツは戦争イベントを発生させることを「我慢」する。そう単純に捉えてもいいんだよな?

 一見めちゃくちゃ願ったり叶ったりに思える。でもこういうのって大体、ドでかい落とし穴があったりするんだよなぁ……


 この称号のデメリットとしてわかりやすいのは、今後コイツが「友達」として纏わりついてきそうなことか?

 それから、俺が「友達」としての条件から外れても、この称号は消えそうだな………「友達」であり続けるにはどうすればいい?


 邪険にしたり無視したりしなければ大丈夫か…?

 ………いや、さっきもそれやってたけど全く関係なく友達強行されたな。特に心配する必要はない…?

 待て、コイツのセリフになにかヒントがあったかもしれない。思い出そう、なんて言ってたか………

 えーっと、俺と仲良くなりたい理由はたしか、「面白い」から………?

 うん、わからん!!俺のどこが面白かったんだよ!!



「ちょっとまったよ!!おともだちになる?!」


「も、もうちょっと待って!!まだ考えてる!!」


「わかった!!もうちょっとまつ!!でももうまてない!おともだちはあきらめるね!」




〈しょうごう!『おともだち!』がはくだつされました!ざんねん!〉




「ちょっ!?待って待って待って!?なる!なるから!!お友達になろう!!」


「やったー!!おともだち!!うれしいな!!」




〈しょうごう!『おともだち!』をもっかいかくとくしました!やったね!!〉




「ふ、ふぅぅ……焦らせんなよ……」



 あっっぶねぇぇ!!!!!

 戦争フラグから世界(ワールド)を救える千載一遇のチャンスが、俺の判断が遅いせいでふいになるところだったぞ……


 でも本当にこれでよかったのかはわからん。どっちを選んでもやばい匂いしかしなかったし

 あぁもう!!だから初見イベントはやりたくないんだよ!!!



「これでなかよし!!これでおともだち!!」


「友達って……具体的に何すりゃいいんだよ……」


「おともだちにりゆうはいらないよ!しらないの?!」


「いや、わかんねぇよ……なんにもわかんねぇ……」



 これから何が起きて、どう対処していけばいいのか。わからないことだらけで頭と胃が痛くなってくる

 いつも石橋を叩いて渡るどころか、誰かが安全を証明して大勢の人が使った後の鉄橋しか渡ったことがない俺なのに、いきなり今にも崩壊しそうなボロ吊り橋に投げ出された気分だ


 攻略サイトもセーブ&ロードもない。俺の唯一のアドバンテージだった知識チートが全く通用しない相手だ

 これから襲いかかるだろう初見要素を、全てパーフェクトにクリアできるだろうか?ミスったら即で戦争勃発させるかもしれない「友達」相手に


 責任が!!重すぎる!!誰か代わってくれっ!!!



「きょうはいいであいだったね!そろそろかえる!!またあそびにくるよ!!」


「あ、あぁ、いつでも来いよ……(二度と来んな!)」



 偽リリーがようやくここから去っていった

 だが俺の心は晴れないままだ

 ああ憂鬱だ、気が重い。なんで俺がこんな思いしなきゃいけないんだよぉ!!!

























〈『D.E.Mクエスト』の進行が確認されました〉


〈この通知は、上位管理者にのみ通達されます〉





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― 新着の感想 ―
◯◯◯・◯◯◯・◯◯◯かな?
2個目の『おともだち!』は本当に確認をした1個目の『おともだち!』と同じ効果なのか……? 焦って、確認とってなくないか……?
やっぱタイムリープ見抜いてるなこいつ。
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