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愚行に見える最善策



〈〈お知らせします。悪魔族と初めて邂逅したプレイヤーが現れました  遭遇者 「(匿名)」「(匿名)」「紫敷布団」「アンドリューサルクス」「(匿名)」「宇宙イルカデルフィス」「タクミ」「緑」「(匿名)」「(匿名)」「(匿名)」「原子海兵シン☆プル」「兎田魔虚羅」「(匿名)」「逸見魔莉緒」「藍沢エ◯のヘソのお」「ライス林」「ユキ」「アカネ」「(匿名)」「(匿名)」「ミギミミニニギハヤミミニミニニギニギニキビタウン」「ダーマッ!」「テトロ」「フレイニ」「めるちのめるちち」「急患婆」「ヅヅ・ザ・滑り芸」「オモンナイザー」「ポックルアルビオ」「スーパームキムキワイ(すごくつよい)」「(匿名)」「生意気ショタの膝裏をすこれ」「ゆーか #莉◯君同担拒否」「アマラヌガ」「阿部高和」「イエス・キリスト(ほんもの)」「(匿名)」「ロウガン」「演じにあ」「山中ろんりくん」「驚愕女性器研究所」「(匿名)」「(匿名)」「(匿名)」「(匿名)」…………〉〉


〈ユニーク称号『悪魔族との初遭遇者』を獲得しました〉

〈BPを1獲得しました〉

〈[闇結晶]を手に入れました〉


〈称号『悪魔の囁き』を獲得しました〉

〈BPを3獲得しました〉

〈スキル『闇魔法』が獲得可能になりました〉




「なっ、なんということをしてくれたのですか!?これでは全て台無しです!!」


「よーし!がんばってたたかうぞー!」



 偽リリーのスカートめくりによって、変装を強制的に解除させられたジア

 その正体は、[悪魔族]であった

 誤解や見間違いなどと言い訳ができたかもしれないが、ご丁寧に称号がばら撒かれて悪魔だと確定されてしまった


 そして、ジアの変装を解いた偽リリーも、人間のガキの姿から悪魔のガキの姿に変わっていた

 ほんまなにしてくれちゃってんのこいつ!?!?



「うわああああ!!?悪魔だああああ!!?」


「ひいぃぃぃ!!?た、助けてぇぇぇぇ!!?」


「逃げろぉ!!地獄に連れ去られるぞぉ!!?」


「あぁ、神よ………」



「な、なに!?悪魔!?」


「あんなにビビるNPC初めて見た……」


「どゆこと!?戦えばいいの!?」


「いやダメじゃね?またこれ実はワルモンじゃありませんでしたってパターンかもよ?」


「というか多分、十中八九あっちのガンギマリ顔の暴走っぽいし」


「じゃあどうすりゃいいんだよ……」


「やった!BP4ゲット!棚ぼたラッキー!!」



 突然の悪魔の出現に、NPC達はパニック状態になって我先にと逃げてゆく

 普段は「死ななきゃ安い」どころか「死んでも安い」、なんなら「死んだほうが安い」なスタイルで、どんな恐ろしいことがあっても怯えることは一切しないのがこの世界(ゲーム)住人(NPC)

 それがどうしたことか。今の彼らは、普通の一般的なゲームのモブNPCのような挙動をしているではないか


 それを見たプレイヤー達は、コワモテのヤクザが小さな虫にビビり散らかしているのを見たかのような奇異の目を向ける

 いつもとの違い様から、事の重大さに気づいただろう


 だが彼らはおそらく、迂闊に動けない

 特に今し方、「痴漢を阻止したと思ったら重要NPCのお仕事を邪魔してしまった」というやらかしを目撃したばかりだ

 すぐに判断して行動に移すことができない。他人の失敗を笑うものは自分の失敗を恐れ、自分で判断することができなくなる


 だから、自分以外の誰かが判断するのを待つ

 自分の判断に他人を経由することで、仮にそれが間違いだったとしても「自分のせいじゃない」と自己弁護できる

 こういう人間ばかりいれば、誰かが動けば自分も動き、誰も動かなければ自分も動かないダチョウの群れの完成だ


 これを「集団心理」という

 自分の行動を他人の判断に委ねていれば楽だろうな、気に食わなかったら他人を叩けばいいんだから


 ファーストペンギンを欲する彼らは、この場で最も有力な判断を下せるだろう人物を探し求める

 そして、それに合致する人間を発見し、その人の行動を注視する


 ………つまり、みんな(コオロギ)を見ていた


 ちくしょう、やっぱりこうなるか………俺だってアレの正しい対処法なんてわからないってのに……!!

 ……いや、変に動かれず俺に従ってくれそうなのは好都合か

 ならまずは………



「………全員、下手に動くな。背中を向けず、ゆっくりと後ろへ下がれ。まだ戦闘を回避できる可能性はある。絶対に刺激するな」


「クマかよ」


「実際力の差は現実の人間とクマくらいあるんでない?」


「なあなあ、コオロギと悪魔ってどっちが強いんだ?」


「めっちゃ警戒してるし、悪魔の方が強いんじゃね?」


「いやでも、他の人間を守り切れないから焦ってるだけで、足手纏いがいなかったら勝てるかもよ?」


「あの大人悪魔のほう眼福〜!」


「もっとローアングルで撮れないかな?」



 とりあえず、現状維持。無難な選択だ

 これ以上悪化することはないだろう。少なくとも、トチ狂って攻撃を仕掛けるよりマシなはずだ


 …………マシ、なはず

 でもこのゲームって「実はあの時攻撃してたらここまでの被害にならなかった」ってケースがしょっちゅうあって………

 現状維持こそが最悪手な可能性は全然あるのだ


 くそっ、初見の流れはこの理不尽な展開があるから恐いんだ

 だから俺はいっつも、セーブ&ロードでやり直しができる『ソロ鯖』に引きこもって、攻略サイトでがっつり予習してからしかゲームをしてないんだ

 俺がガチの初見でゲームやったことなんてほとんどないんじゃないか…?


 ぐぅぅ、胃がキリキリ痛む……

 安定択だと思って指示した現状維持。俺のこの指示のせいで、全員を危険に晒す最悪の展開になる可能性が十二分にある

 いや無理だろ!こんなやり直しのできない状況で「愚行に見える最善策」を見つけられるわけないじゃん!

 頼むよこれが正解であってくれっ…!




「別のアングルからも撮りたいな…………あれ?なんでみんな下がってんだ?」


「おいバカお前!コオロギに下がれって言われてただろ!」


「え、そうだったの?」



「ふとどきものめ!!せいばいしてくれる!!」


「」



 どんな場所にも、人の話を聞かないやつはいる

 協調性がないのか、耳が遠かったのか、何かに熱中していて聞き逃したのか……


 青肌を惜しみなく晒すジアの艶姿を、舐めるように撮影しているプレイヤーがいた

 動画撮影に集中するあまり引き遅れ、1人孤立してしまった

 そんな彼へ向けたのか、偽リリーは視線も向けずにあのハキハキしすぎた声を発し………



 瞬間、撮影者の下顎から上が消し飛んだ



 残された胴体はドサリと崩れ落ち、顎の筋肉がなくなった下顎から舌がダラリと垂れ下がる

 あまりにも突然。どんな攻撃がされたのか、誰もわからなかった

 予備動作すらなかった。偽リリーが「ふとどきもの」の「ふ」と言った時にはもう頭が無くなっていたのだ

 殺された当人ですら、リアクションすらする暇もなかったのだろう、とても静かに死んでいった



「なにをやっているのですか!なぜ人間にいきなり攻撃するのです!?」


「あいつジアのパンツのぞいてた!えっち!」


「覗かれてパンツが見える服装はしていません」


「えっちだからやっつけた!」


「だから覗かれていません。それよりも勝手に行動したことを反省しなさい」


「あ!そっか!イジめないといけないんだった!」


「だから人の話を………」


「えいっ!」



 会話のドッヂボールでジアの言葉を全部回避(ドッヂ)した偽リリーが、勝手に自己完結し、適当な掛け声をかける


 すると、1人のプレイヤーの腹部に巨大な穴が空いた



「あ!しんじゃった!むずかしいなー!」


「やめなさい!これ以上やるなら……」


「えいっ!」



 別のプレイヤーの全身に、500円玉ほどの穴が無数に空いた



「またしんじゃった!」


「いい加減にしなさい!能力を止めないのなら無理やりに……」


「えいっ!えいっ!えいっ!」



 あるプレイヤーは、全身が左右から押し潰されたようにペチャンコになった


 あるプレイヤーは、身体がボコボコと肥大化し、血飛沫のような赤いポリゴンを撒き散らして爆発した


 あるプレイヤーは、四肢が捩じ切られてだるま状態になった

 が、かろうじてHPが残り、生き延びてしまった



「できた!ワタシもにんげんイジめできるよ!」


「これが最後の警告です。止めないのなら、貴女の首に[隷属の首輪]をつけさせていただきます」


「みてみてー!ワタシもできたんだよ!にんげんをころさずにいたぶってくるしめるの!!」


「警告は済みました。今[隷属の首輪]を……」


「ワタシそれきかないよ!わすれたの?!」


「……くっ、そうでした。なぜ貴女のような者にこんな固有能力が発現するのですか…!」


「よーし!もっとじょうずにくるしめられるようになるぞー!!」


「せめて戦闘状態でさえなければ、無理やり連れて帰れるのに…!」



「……っ!」



 完全に悪手でしたね!すみません!!

 しかも焦れたのかジア(ゲーム側)からヒントが出てきたし!!


 なるほどね、戦闘状態を解除しろと

 なら俺たちのするべき行動は………



「全員逃げろ!!背中を見せて全力ダッシュだ!!さあ行け!!」


「え、逃げるの!?それってクマ相手に危険じゃね…?」


「逃げなくても結局殺されてるし、逃げた方が生存率高いってことじゃね?」


「よっしゃ逃げべ!!」


「ちょ、待っておいてかないで!俺足なくて動けないんだけど誰か運んで!!」


「あれって、「俺に構わず先に行け!」ってこと?」


「足手纏いを追っ払ってるのかもよ?」


「じゃあもしかしたら、プレイヤーが全員履けたらコオロギvs悪魔のガチバトルが始まる!?」


「マジか見てぇ!!」



 俺の指示で、この場にいたプレイヤー達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出す……というのが、俺の想定だった

 だが、思ったより動きが悪い。半数は逃げてくれたが、残りは少し距離を取っただけで遠巻きに観察してくる


 なんでだよ!なんで逃げねぇんだよ!!

 野次馬根性丸出しやがって!待ってても俺は戦わねぇよ!というか戦えねぇよ!!お前らが全員逃げたのを確認できたら俺も逃げるよ!!

 まさか自分が言われてると気づいてないのか?あの時みたいに一人一人名指しすりゃいいのか?


 クソ、MMO要素がこんなに難しいだなんて…!

 無駄にネームバリューはあるのにカリスマ性がないからか全然言うこと聞いてくれん…!

 プレイヤーにも好感度パラメータの実装はよ!!





「きみは?!」


「っっ!!?!?」


「きみはたたかわないの?!」



 真下から声がした


 見下ろせば、さっきまでジアの隣にいたはずの偽リリーが、俺の5センチ先にまで来ていた

 俺のへそあたりにある不気味な顔を、首を90度真上に曲げて俺と目を合わせている

 ガチ悲鳴出すとこだったぞ…!!



「んん?!んんん?!きみ、だれ?!」


「なっ!!?」


「おかしいな!しらないぞ!きみってもしかして……!」



 おいまてまてまて!!こいつ何を言おうとしてる!?

 やばい予感がする!こいつに喋らせ続けたら絶対やばい!!


 どうすりゃいい!?

 物理的に黙らせるのは絶対ダメだ!!簡単に倒せてしまうかもしれないけど、それをジアの前でやったら絶対まずい!!こいつは悪魔の1人に成り変わってるわけだからな!!

 なんとか話題を逸らすか?……うん、多分無理!!上手く行かなそう!!むしろ悪化しそうだ!!


 もうパニックパニック、背中に嫌な汗がダラッダラ流れてる

 俺のミス一つでバッドエンドまっしぐらだと思うと重圧(プレッシャー)で胃にボコボコ穴が空いてもう吐きそう漏らしそう!!!

 今すぐにでも全部放っぽり出して逃げたい!!!


 …………あ、そっか



「うおおおおおお!!!」


 バリィィン!!!



 横の窓ガラスにダイブ!!!

 逃げちゃえ!!!



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