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女の子のワキを執拗にせめる中年男性




「おじさん!持って来たよー!!」


「おぉ、早かったじゃねぇか。まだ3時間しかたってねぇぞ?」


「そりゃもう頑張ったわよ!間に合わなかったらどうしようと思ってたわ!」


「私も微力ながら頑張ったよ〜。安いやつは生産ガチの人にどんどん買われてっちゃうんだもん」



 パシリに行かせた2人が帰って来た。どうやらもう素材を集めきったようである。話の流れからすると、エリと呼ばれていた子はマーケット機能を使ったっぽいな



「ようし、それじゃアイテムをこの釜ん中に入れてくれ」


「わかったわ」



 錬金釜に入れるよう指示を出すと、2人は素材をじゃらじゃらと入れていく。他人の生産道具に持ち物を入れると所有権を移したことになるっていう裏技を使わせてもらった


 ちなみに釜の中には[黒大蛇のポーチ]があり、入ってきた素材をどんどん飲み込んでいる。ポーチに入れれば数を数えるのが簡単だからな



「……99、100。よし全部あるな。そんじゃ魔法を教える──とその前に、お嬢ちゃんたち名前はなんていうんだい?」


「私はサチよ。こっちが友達のエリ」


「エリで〜す!よろしくおじちゃん!」


「それで、おじさんの名前は?」


「俺に人様に言えるような名前なんてねぇよ。便所コオロギみたいなもんさ。適当にコオロギとでも呼んでくれや」


「コオロギ……ってなに?」


「虫だよサっちゃん。も〜、これだから都会っ子は〜」


「エリ?私たち幼馴染だよね??」



 もちろん俺は名乗らない。偽名トシローはまたどっかで使うことにしよう



「それじゃあサチとエリ、これからお前らに教えるのは『風魔法』だ」


「『風魔法』?コオロギさんが使ってた白と黒の魔法は?」


「あれか?ありゃさすがに無理だ。『光魔法』を勝手に教えたら教会に睨まれるし、『闇魔法』なんてもっとダメだ」



 そんなことはないけどね。バレなきゃどうとでもなる



「やっぱり『光魔法』と『闇魔法』だったのね。ちょっと期待してたから残念だわ」


「おいおい、『風魔法』もいいじゃねぇか。剣使うんなら速さが上がる魔法は便利だぞ?それに土属性の魔物にはほぼ一方的に勝てるからな。あいつら物理防御が高いわりに魔法防御が紙だから、弱点属性ってことも相まってカモなんだわ」



 やべ、興奮して早口になってしまった。ま、まあ話の長いNPCもいるしセーフか?



「魔法を教えて貰えるだけでもありがたいもの。文句は言えないわ」


「ねぇねぇサっちゃん、土属性ってことはあのカメも倒せるようになるんじゃない?」


「…あ!そうね、その通りだわ!『風魔法』ならロックタートルも撃破できるかもしれないわ!!」



 お、気づいた!エリちゃんナイスだ!これでサクッと岩亀も倒しといてくれよ?




「ようし、そんじゃやるぞ。まずはこれを承諾しな」


「え、模擬戦?なにをやるのかわからないけど、とりあえず従うわ」



 目の前のプレイヤーに向かって模擬戦を仕掛けることができる。匿名設定だとマスクネームを設定できるので、「コオロギ」と入れておいた



 模擬戦が承認されると、俺とサチエリパーティは別の空間へと飛んだ



「1人ずついくぞ。まずはサチからだ。『ダークブレス』」


「わ、何!?えっと、MNDバフ?」


「そいつはちょっとしたおまじないだ」



 『鑑定』でステータスを見たが、サチのHPとMND、そして俺のINTだとワンパンしかねないからな。みんなもっとMNDあげようぜ?


 種族はエルフ、メインが【剣士】のサブ【魔法使い】?かなり特殊だな。両方戦闘ジョブなのに、ステータスの被りがないなんて


 エルフの魔法スキル解放緩和が-10%に、【魔法使い】が-15%。『風魔法』には300MP分必要なのが、225でよくなるな



「よし。足を肩幅に開いて右腕をあげろ。へそに力入れて踏ん張れ」


「…なんだかイヤな予感しかしないんだけど」


「ビビって動くんじゃないぞ?『ウィンドアロー』」


「ひゃあっ!?」



 左腕を伸ばし、サチの右腹目掛けて『風魔法』Lv.7アーツの『ウィンドアロー』を放つ。衝撃でよろめいていたが、なんとか立っているようだ



「嘘!?体力が一撃で8割も!?あら?すぐ全快したわ」


「そりゃ「コンボ練習モード」だからな。倒しちまったら意味ねぇし」



 「コンボ練習モード」は、攻撃が途切れるとHP,MP,STが全回復するアレだな


 模擬戦ではスキル取得の条件満たしや熟練度上げはできないはずだった。が、このワキだけはなぜか可能になっていた。それでも一応条件があり、HPがゼロになって〈戦闘不能〉状態になったら最初からやり直しになる



「まだまだいくぞ?『ウィンドスフィア』『ウィンドボール』」


「ちょっと、これでほんとに覚えられるの!?聞いてたやり方と違うんだけど!!」


「そう言われても、このやり方しか知らんからなぁ。おめぇさんエルフで【魔法使い】なんだろ?すぐ終わるからもうちっと耐えな。『ウィンドボール』」


「サチ〜がんば〜」


「エリもこの後やるのよ!?」



 途中で『闇魔法』Lv.5アーツの『ダークブレス』をかけ直し、倒さないよう注意しながら『風魔法』を当てていく。6回目の『ウィンドアロー』を当てたところで、サチが驚きの声を上げた



「あっ!来た!!ほんとに獲得可能になったわ!?」


「おぉ〜おめ!」


「注意点だが、それを取ると弱点属性の『土魔法』が取りづらくなるからな。『土魔法』使える友達がいれば教われるけどな」


「え、そうなの!?これはちょっとやばいかも…?」


「サブマスがさっきクランチャットで『土魔法』取れたって言ってたよ。教えてもらお〜?」


「そうじゃなくて、プレイヤーでもこの方法でできるってことよ!」


「…え?あ!そっか!クランのみんなで教えあったら、みんな使えるようになるじゃん!」



 よしよし、そこも気づいてくれたようで助かる。これで全プレイヤーに広まってくれたら嬉しいんだが



「次はエリだな。サチ、ちょっと手伝いな」


「え?手伝うって…」


「右腹、へその横当たりを狙うんだ。倒しちまったらまた最初からになるから気をつけろよ?エリ、右腕上げてくれ」


「お手柔らかに〜」



 パーティメンバーからのフレンドリーファイアにはダメージ減少があるが、それでも「ダメージを伴う」という条件は満たせる


 【魔法使い】がメインジョブだと、MP消費量減少という本来ならメリットになるはずのステータス補正要素がある。今回はサブジョブなので問題ないだろう



「『ダークブレス』。ほれ、やってみな?」


「わ、わかったわ。『ウィンドボール』!」


「きゃっ!くすぐったい!」


「でしょ?脇腹にダメージの電気信号がいくと結構きついのよ?次はエリの番なんだからね?」


「んも〜!サっちゃんのいじわる〜!」



 …うん。これをさっきまでやってたのか…。おっさんが、女の子に


 しかも会って1日の女の子の名前を何度も呼び捨てにしながら。だってしかたないじゃん、「さん」づけとかしたら逆に違和感あるし



 新たな黒歴史が刻まれる様子に目を背けながら、サチ()()と2人でエリ()()のワキをいじめる。犯罪者の気分になりながらも、無事に2人とも『風魔法』を習得することができた


 次からは「エルフの嬢ちゃん」みたいに種族で呼ぶようにしよう

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