はい、続きは署で聞くからね〜
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夜になったら生産レベリング。【料理人】のレベルを上げつつ消耗品を補充しておく
ミュラの『ポルターガイスト』の特訓も並行して行う。アカハネという弟分ができたからか、サボることが減ってはりきって特訓に励んでくれている
まあはりきりが空回りしてやらかすこともしばしば、いやしょっちゅうあるけど
それに、サボりは減ったけどゼロになったわけじゃないし、イタズラはなぜか増えた
今日は料理に使う鶏肉を全部[ゴブリンの耳]にすり替えやがった。出来上がったものを見て素で「なんじゃこりゃぁ!?」って叫んじまったよ
リアクションしたら調子づかせちゃうから、今後はびっくりしても顔に出さないようにしないとな
あとなぜか、賢いはずのアカハネも、生産中はイタズラをしてくる
なんでだ?ミュラと一緒にいるからか?朱に交われば赤くなるってか?シグナルレッドはお前やろがいっ
「よし、ここで塩をひとつまみ」と思って調味料籠を見たら塩がなぜか空っぽ。横を見れば、顔中黄色の炎色反応まみれのヒヨコがそっぽを向いていた
餌箱にはまだ[岩塩]が沢山あるのに。なんだ?かまちょか?かまってちゃんか?
とまあ、イタズラっ子共に振り回されながらもレベリングをしていたら夜も明けていた
なぜか『ポルターガイスト』の成長速度が気持ち早くなってた。はりきったからか?
朝になったので生産活動は切り上げ。外へ出る
今日は、とりあえず残りの欠片……『王都プリムス』周辺で取れる欠片を集めようかな
でもその前に、前々から予定していたあのシークレットイベントをこなそう
あれをうまいこと成功させれば、結構な数のバッドエンドルートが潰れるからな
いつもはGルート寄りのエンドを目指してるから無視するけど、今回は成功させておきたい
王都から噴水を使って一度『サーズ』へ、『サーズ』から『セカン』へ転移する
『時空魔法』がレベル20を超えたから街を一個飛ばしても転移料金無料になるけど、癖で順々に移動してしまう
『セカン』に着いたら、ギルドの並ぶ大通りに店を構える、結構繁盛している軽食店に入店する
客のほとんどはNPCだ。たまに来店するプレイヤーもほぼみんなテイクアウトで、店でゆっくり食べていくものはあまりいない
ま、序盤の食事なんて本当にただのEP回復手段以外のなにものでもないからなぁ
料理の品質や食材のティアが低いほど、味がめちゃくちゃ薄くなるし。風味を付けただけの空気を咀嚼してんのかってぐらい、腹が膨れるかんじがぜんぜんしないからな
バフ付きの料理ともなれば美味しくなってくるんだけど、この序盤の街でそんなものは望めない
こんなところで食事を楽しむために食べに来たプレイヤーはいないだろう。いたとしても極一部の物好きだけだ
その店で適当にハムサンドでも注文し、窓際の奥から2番目の席につく
この席と奥の席は、イベントが始まる直前はNPCは誰も座らない。理由とかは特にない。ゲーム的な理由なら、「その方が都合がいいから」だ
なのでプレイヤーが座ってなければ、ここは絶対空席になっているのだ
ここでハムサンドをゆっくり食べながら、目当ての存在が来るのを待つ。1,2時間くらい待つ
暇なので、道行くプレイヤーを『鑑定』して遊ぶ
たぶん全員第二陣だな。種族レベルが15〜20の人ばっかだ
まあ、『セカン』にいるならそれくらいのレベルにはなってるか
第二陣が参入してからもう4日目かぁ、俺が4日目の時は何してたっけ?…………やべーやつに襲われてたわあんちくしょう
いや、「浄化の儀」のせいで1日ぶっ飛んだから実質3日目か?俺が3日目の時は………覚えてないや
お、あれプレイヤーかぁ!NPCのフリが上手いなぁ!……あ、俺もか
NPCとプレイヤーの見分け方は結構簡単。街中でも装備をしてたら大体プレイヤーだ
冒険者NPCとかは装備してることもあるけど、武器は携帯せずインベントリにしまってることが多い。邪魔だからな
なので装備をしてないと一瞬見分けがつかない。まあ俺はこのゲームを何十回とやってるので、NPCっぽいのに見覚えがないやつは多分プレイヤー、って判断できちゃったりする
みんなだいぶ尖ったステータスしてんなぁ。まあ、仲間と連携する前提ならオールラウンダーより特化型のほうが期待値デカいよな
でもパーティが崩れたときは万能型がいたほうがリカバリーしやすいけど。安定させられるのならいらないか…?MMO経験ほぼないからわからん
スキルはどうなってんだろ?『鑑定』じゃスキルまでは見えないからなぁ〜気になるなぁ〜〜
「………(お、来た来た)」
ステータス覗き見で時間を潰しながらハムサンド一つで粘ること1時間、目的の人物が来店した
その人物は、ブラウンのワンピースを着たどこにでもいる女性住人NPCの風貌をしていた
目立たない格好。しかし、僅かに気を惹かれる雰囲気がある
なぜか?目に映る風景の中で、他よりもほんの少しくっきりと映っているように見えるせいだろうか?
毛先や指先、肌の質感まで……なんというか、他のNPCよりも凝っている。ディティールが違うのだ
メタいこと言っちゃうと、モブNPCと重要NPCの差、というやつがうっすらわかっちゃうのだ
その女性NPCが来店したのを見て、俺は『上級隠密』を発動する
いきなりスイッチをカチッと押すように発動するのではなく、徐々に徐々にじわぁ〜〜っと隠密力を上げていくイメージでスキルを調整する
いきなり存在感がパッと消えたら警戒されるかもなので、アハ体験みたいに気づいたら消えてるようにする
『上級隠密』を発動しきったら、『変装』を解いてコオロギの姿に…………いや、「コオロギ」でも「クロート」でもない別人の姿に『変装』しようかな
普段使いの姿で行って、後々変に関連づけられたらめんどそうだし
と、いうのは後付けの理由
ほんとは特に意味はない。その場のノリだ
「こうしたほうが面白いんじゃね?」となんとなく思っただけだ
「ーーー」
「(1人だけ、それも「ジア」か。好都合だ)」
カウンターで簡単な軽食を注文するNPCを観察する
よし、ちゃんと一番確率の高いパターンだな。なら何回かやったことあるし、スムーズにクリアできるだろう
低確率パターンが出たときの攻略手順も頭に入ってるけど、本番でミスするかもしれないし、やったことのあるパターンでよかったよかった
注文を終えたNPCは、俺の後ろ……窓際の一番奥の二人席に、俺と背中合わせになる座席に座った
予定通りだな
ここでえ〜っと、ターゲットが着席してから15〜30秒ほど待ってから………
「──探し物は見つかったかい?」
「っ!?」
『上級隠密』をゆっくりと解除し、唐突に後ろの女性へ話しかける
驚いたような反応があった後、こちらを探るように魔力が絡み付いてきた
うむ、順調順調
「ヤツはもうここにはいねぇぜ」
「……なんのことですか?わかりません」
「探しても意味ないぜ?痕跡は巧妙に隠されてる。見つけたときにはもう場所を移してるだろうさ」
「いきなりなんですか?誰かと間違えていませんか?」
女性は住人のフリを続けてとぼけようとするが、これも予定通り
俺は相手のセリフが台本通りなことを確認しつつ、タイムリープ前の攻略サイトに元々載っていた台本を丸暗記したものを読み上げる
念のためド忘れした時用にカンペも書いてきたからな。準備はばっちしだ
「だが、それはあんたらが探した場合だ。あんたらはここじゃ自由に動けない。だからあいつのことはこっちに任せてくれ」
「……アルコールでも入っているんですか?酔っ払いの戯事のようですね」
「それよりも、あんたはもっとやるべきことがある」
「もういいです。さようなら」
「まぁ待ちなって」
椅子を引き、あくまで「変なやつに絡まれたからその場を退散する」という体を維持して離れようとする女性NPC
俺は振り向き、その椅子を引いた手を掴んで引き止める
「……離してください」
「これを聞いても無視するかい?」
「……なんですか?」
「あんたの探してるやつの名だよ。そいつの名前は…………」
「ちょっとちょっとおにーさん!その人嫌がってるでしょ?」
「えっ?」
台本の7割進行、大詰めだ!ミスせずやり切るぞー!
と、内心意気込んでいたんだが……
俺のセリフは突然割り込まれ、女性の腕を掴む俺の腕がさらに掴まれた
え、あの、邪魔しないでほしいんだけど…?
「なんだ?俺はこいつに用があるだけなんだが」
「こっちの人は用なんてなさそうだけど?とりあえずその手を離そっか」
「いや、あの……」
口調は優しげだが、有無を言わさない強さで俺の手は引き剥がされる
その男性プレイヤーが俺の気を引いてる隙に、別の女性プレイヤーがすかさず女性NPCを保護した
も、もしかして、俺不審者だと思われてる……?
ちょ、今大事なイベント中なんですけど……!?
「……助けてください!おかしな人に絡まれているんです!」
「お前っ!?」
「ほら、彼女怖がってるじゃん?いい年して迷惑かけるのは良くないよ?」
「いや違っ!?」
こんのクソ悪魔!!渡りに船とこのプレイヤー達の誤解に乗っかりやがった!!
あーもぉーー!!面倒なことになったじゃんか!!




