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ただ口を開けて待つ


 俺の掌の上に転がる、フェニックスの雛

 バスケットボール大の卵から出てきたのに、テニスボール大くらいしかないおチビさんだ

 こいつには、「アカハネ」という名前を付けた


 名前の由来は、羽が赤いからだ

 え?名前が安直すぎるって?いや、これには訳があって……


 フェニックスは進化先によって、羽の色が青や白に変わることがあるんだ

 それで、俺自身がどの育成方針にしたか忘れないように、わかりやすい名前をつけてるって事情がある

 火力特化のエリートアタッカーなら「アオハネ」。支援回復特化のウルトラヒーラーなら「シロハネ」。『決闘鯖』用の蘇生特化[イモータルフェニックス]なら「クロハネ」ってな

 「アカハネ」は正統進化、どこも特化させず全部伸ばす万能型だ。レイドを安定させるならこれが1番いい


 え?だとしても安直すぎるだろって?

 それは、その……はい、すんません



「ピィ!ピィ!チィ!チィ!チィ!」


「はいはい、餌な」



 産まれて最初に見たものを親と思い込む習性を利用して刷り込みを〜〜なんて言ったが、アカハネはまだ目が見えていない

 ニワトリやカモの雛みたいな、産まれてすぐ自立して歩けるヒヨコタイプではなく、巣の中で親鳥から餌をもらい続けるタイプの雛鳥なのだ


 目も開かず、羽も生えておらず、真っ赤な地肌を晒しているアカハネは、種族名を[フェニックス・チック]という

 口を上に開けて元気に餌をねだるしかできないので、戦闘に参加させることも生産を補助させることもできない


 パーティを組んでいても戦闘に参加しなければ経験値を分けてやることはできない

 ならどうやってレベルを上げればいいのか?



「ひとまずこれだな」


「ピィッ!」



 俺は爆散し部屋中に散らばった卵の殻を蛇ポーチで回収し、アカハネに食べさせる

 殻はアカハネの口の中に入った瞬間炎になり、喉の奥へ消えていった


 そう、フェニックスの雛鳥時代は餌を食わせてレベリングするのだ

 そのチュートリアルとして、元々フェニックスの一部であった殻を食べさせられるぞ

 もしわからずに放置していても、足元にある殻を勝手に食べだしてヒントを与えてくれるぞ



「ほれ、どんどん食え」


「ピィッ!」



 集めた殻を次々アカハネの口に放り込む

 卵の殻……いや、()()()()()()()は、アカハネの口に入った瞬間元の姿に変わり、吸収されていく


 そうして全ての殻を食べさせ終わったときには、アカハネのレベルは3つ上がっていた



「さてと、好物が見つかるといいんだが……」


「ピィ!チィ!ピィ!」



 チュートリアルの殻を食べさせ終わったら、あとは自分で餌を調達しないといけない

 俺はアカハネの餌を用意するため、アカハネを手に乗せたまま調理場へ向かう


 調理場といっても台所(キッチン)……[中級調理施設]じゃないぞ?

 向かう場所は[中級鍛治施設]……精錬炉のある部屋だ


 フェニックスの主食、というか食事可能なものは、「火・炎・熱」だけである

 普通の食材も食べることはできるが、それは口の中で燃やし、その炎を食べることで味を堪能しているのだ。もしくは口に入れる前から火をつけて食べることもある

 しかし雛鳥のときはうまく火をつけることができないので、親がかわりに調理してやらないといけない



「よし、可能性の高いミスリルからいくか」



 鍛冶場についた俺は、あらかじめ用意してあったフェニックスの好物候補を広げる

 その中から、現在の手持ちの中で一番好物の可能性が高い[ミスリル鉱石の小塊]を手に取り、炉に入れる


 フェニックスは個体によってランダムに好物となるものが定まっており、それを食べさせると入手経験値にボーナスがかかる

 もし好物が見つかってそれを大量に食べさせることができれば、一日で[フェニックス・チック]から進化させることも可能だろう



「これじゃありませんよーに」


「ピィッ!」



 だが、もしミスリルみたいな高レアアイテムが好物だったときは地獄だ。それを大量に用意して食わせ続けなきゃいけなくなるからな


 1000℃を超える高温の炉で熱してドロドロになったミスリルを、俺の親指も入るか微妙なほど小さなアカハネの口に、ゆっくりと流し込む

 さて、反応やいかに



「ピィピィッ!!ピィ!!」


「………ハズレ、だよな?よしっ」



 アカハネは、まだ産毛も生えていないちっちゃな手羽先をピコピコと動かし、たいへんご満悦な反応を示した

 が、これは好物じゃないな。ミスリルのレア度相当の反応だ。好物だったらもっとわかりやすい変化がある


 まあとりあえずミスリルが好物じゃないことがわかったのは僥倖だ。次のものを試そう

 炉の温度をさらに上げて[魔鉄]を燃やし、同じように食べさせる



「これもハズレか」


「ピィッ!ピィッ!」



 魔鉄ならわりかし簡単にゲットできるから、これが好物でもいいんだけどな〜と思っていたが、残念ながらハズレだった

 気を取り直し、用意したものを次々燃やしてアカハネに食べさせていく


 鉄に銅、各属性結晶やボス級魔石、野菜や果物なんかも試していく。あ、もちろん野菜とかは炉で溶かすんじゃなくて火をつけただけだぞ?

 だが、なかなか好物が見つからない。だんだんと焦ってくる。こりゃあ、オオハズレか…?


 フェニックスの好物候補の中には、現状では入手不可能なものも結構ある。俺が用意してきたものの中に好物がない可能性が出てきているのだ

 そうなったらもうレアアイテムの物量でなんとかするしかない。やっぱり大量にミスリルが必要になりました、ってなる可能性が出てきているのだ


 やだな〜〜、好物あってくれないかな〜〜

 でも正直、もう半分諦めてたりする。てか鉱石系が全部ハズレだった辺りから薄々悟ってはいた。残りの好物候補のものは確率が3%とか2%とかしかないからなぁ〜……

 んで、今入手できないものの確率の合計が、大体25%ぐらい。うん、結構当たりやすいよなぁ……


 はぁ、大変だけど、ミスリル集め頑張りますかぁ……





「ピィッ!!ピィッ!!ピィィィ!!!!」


「お?おおおおお!!?そうか!!これ好きか!!!」



 今までのレベリング周回に採掘時間を効率よく組み込んだとして、何十日で進化まで行けるかな〜〜

 なんて、頭の中で概算しつつもダメ元で残りの食べ物も食べさせていたら、アカハネに今までにない変化があった


 とある食べ物を燃やした()()()()を食べさせた瞬間、アカハネのつるっぱげな全身からポッポッと炎の産毛が点いたり消えたりしていた

 間違いない、これは好物反応だ…!!



「マジか……!!たしかこれの確率1.5%とかだったぞ……!?」


「ピィッ!ピィッ!ピィッ!ピィッ!」



 食べ終わったアカハネが今のをもっと寄越せと喚きたてるので、俺はダッシュで倉庫から在庫を取ってきて、火をつけて食べさせていく


 今回の「アカハネ」の好物だったもの

 火をつけたら黄色の炎を出す炎色反応を示すもの

 その正体は───



  [岩塩]



 採掘でたまに出るハズレ枠を、美味しそうに食べていた

 な、なんて安上がりでいい子なんだ…!!!


 俺はその日一日、市場やマーケットで塩を買い占めてはアカハネに与え続けるのだった

 そして、その日中に進化させることができたのだ



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腎臓やられそうw
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