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タブー


「それで?あたしのなにが悪いのよ! っ……悪いん、ですか!」


「はぁ、ようやくか」



 立ち上がり、両腕を左右から掴まれながらも腰に手を当てて偉そうな態度のままの悪魔っ子

 だが、すかさずウサ耳少女が脇に肘鉄を喰らわせ、渋々敬語に訂正する



「嬢ちゃんが直さなきゃいけない場所、それは…………背中の、羽だ」


「………羽?それだけ?」


「ああ、それだけ外せば大丈夫だ。その角も、ドクロの胸飾りも、特に問題にはならない」


「それだけね!わかったわじゃあ行くから!!」


「はいストーップ。勝手に行こうとしない」


「そうだよ〜?なんで羽がダメなのか聞いてないじゃん」


「な、外せばいいだけでしょ!?」


「でも、なんでダメなのかわからないと、また同じようなことするかもよ?」


「そうそう、悪魔の羽だからじゃなくて、コウモリの飾りがダメとかかもしれないじゃん」


「うっ……そ、そうね」



 いや、俺としてはもう終わりでもいいんだけど

 この悪魔っ子と話してるだけで精神がすり減ってくる気がするし、早く話を切り上げたい


 でも、友達ちゃんの着眼点はナイスだ

 たしかに理由も説明しないと、「悪魔がダメなら天使!」とかやりかねない



「悪魔の羽じゃなくても、背中に羽をつけること全般がタブーだ」


「え?羽全部?」


「ああ。悪魔以外にも、天使や妖精、一部の魔物なんかのコスプレも危ない。腕を翼みたいにするのもだ。それに人間じゃなくても、ゴブリンなんかの人型魔物に羽をつけるのも危険だ」


「えぇ……妖精ダメなんだ……」


「危険危険って、なにがそんなに危険なのよ!」


「あぁ、その格好をしてると最悪───魂を持ってかれる」


「魂?」



 う〜ん、これの説明難しいな………

 手っ取り早く「キャラロスト」って言葉が使えたらスムーズに伝わるのに



「人型の姿をしたやつが背中に羽をつけていると、どこからともなくヤバいやつが来る。そいつに狙われると、魂を食われちまうのさ」


「んん??どういうこと??」


「魂?このゲームの魂ってどんなのだっけ?」


「魂が持ってかれたらどうなるの?死んでもリスポーンするんでしょ?」



 さーて、禁止ワードを脳内で整理して説明に挑む

 (コオロギ)はNPC。ゲーム用語は喋っちゃいけないんだ



「何言ってんだ?魂が消えたら、二度と生き返ることはできないんだぞ?」


「………えぇ!?現実でも死ぬってこと!?」


「いやいや、デスゲームじゃあるまいし」


「多分、リスポーンができなくなるってことだと思うよ?」



 おお、伝わった!

 なんか禁止ワードゲームやってるみたいだな



「お前たち異邦人はその魂も乗り物だろ?それが消えても、元の身体は無傷だ。また神とやらに新しい魂を用意してもらえばこの世界に戻って来れるんだろ」


「えっと……」


「キャラを作り直せばまたゲームできるよ、だって」


「でもそうなったらまた最初からやり直しだね」


「だが、この世界の住人は違う。魂がなくなったら終わりだ。お前らが度胸試しで羽をつけたいんだったら、人里離れたところでやってくれ。くれぐれも俺たちを巻き込まないでくれよ?」


「わかったわ!」


「検証するなら他所でやれ、ってことね」


「でも、今もつけてるけどいいの?」


「ああ、街中なら比較的安全だ。だができるならやめてほしい、絶対安全ってわけじゃないからな」



 頭にハテナマークが浮かびまくってる悪魔っ子の隣で、友達2人が上手いこと通訳してくれている

 すんごい助かるわ〜



「注意しろよ?この世界はお前らの世界とは違う。常識なんかも違ってくるから、知らんうちに地雷を踏み抜くこともあるからな」


「他にもあるってこと?」


「ああ。背中に羽をつけること以外にも、やってはいけないタブーがある」


「窮屈なゲームね」


「こらっ」


「それは、どんなものがあるの?」


「たとえば、空高く登ること。地中深く掘り進めること。他人の傷跡に触れること。勝手に解呪をかけること。自然を大きく変えることとかだな。とある部族では、「男は立ってはいけない」なんてのもあるぞ」


「なにそれ?へんなの」


「待ってもっかい言って?メモとるから」


「いいぞ?空高く………」



 タブーは結構ある

 よかれと思ってやったことが、大惨事を招くなんてこともしばしば。しっかり教えておかないとな






「……お前知ってた?」


「いや、一個も」


「空はなんとなく?多分ドラゴン騒動の原因だろ」


「サイトにも載ってなくね?未発見情報か?」


「この情報、売れるか?」


「いや、この人数が聞いてるしすぐ広まっちゃうから売れんだろな」


「検証もむずそうだし。キャラロストと同列に語るってことは、どれもヤバいことが起こるんだろ?」


「少なくとも一つはドラゴン呼び寄せてるからなぁ」


「まあ、コオロギが言ってるってことは信憑性あるだろ」



 少し離れた場所で聞き耳を立てていたギャラリーたちも、俺の言ったことを分析しているようだ

 これなら、プレイヤー全体に情報が広まってくれるかな?




「………コオロギ?」


「ん?」


「コオロギってたしか、重要NPCの……」


「あーーー!!ほんとだ!!黒いローブのおじさん!!コオロギじゃん!!!」


「えっとぉ〜、どういう人だっけ?」


「すごいこと教えてくれる人だよ!あとすごい強い!!」



 おや、どうやら俺がコオロギだって気づいてなかったらしい

 まあ今日入りたての初心者だししょうがない


 というか、最近会ってるプレイヤーがみんなコオロギのことを知ってただけで、別にコオロギの知名度はそんなに高くない可能性もある?

 うん、普通にそうだろうな。自惚れはよくない




「ねえコオロギ!あたしにもすごい情報教えてよ!!」


「……え?」



 こいつ、厚かまし過ぎない?



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