パン ✌︎ ◯ 見え
「なんなのよこの壁!道が全部塞がってるじゃない!!」
「あのねぇネゥ〜?人の話は聞けアホネゥラ」
「そうだよ〜!チ◯チ◯蹴っちゃ可哀想だよ?」
「こらっ、女の子がそゆこと言わないっ」
「なによ!あたし悪いことなんにもしてないのに、どうして怒られなきゃいけないわけ!?」
「悪いことしてないって思ってんなら逃げんなって。それ自覚あるやつの動きだよ?」
「うるさい!あたしはゲームがしたいだけなの!!!」
気が滅入りながらも後ろを振り返れば、悪魔っ子がキャンキャン喚きながら俺の出した壁をゲシゲシ蹴っているところだった
そこを友達らしき2人に嗜められている
いくら耐久力の低い『クレイウォール』といえど、俺のMNDで出した土壁を初心者ステータスで壊すのは骨が折れるだろう
しかももし壊せたとしても、その奥にも土壁を作ってある
高さ5m幅10m、一枚だけで路地裏の通路を塞ぐには十分だ
この隙に、悪魔っ子を宥めて服装を注意しよう。ちゃんと理由も添えてな
「なあ嬢ちゃん、あんたそのままだとまずいことになるぜ?」
「なにようっさいわね!あたしはあんたの話なんて聞きたくないわ!!」
「ちょっとあんたまだ逃げる気!?待ちなさいよ!!」
「……『クレイウォール』」
「あっ!?んもぉぉぉ!!!!」
俺が話しかけたら、また横を抜けて反対方向へと逃げようとする悪魔っ子
しょうがないので、そっちにも土壁を作って閉じ込めてしまうことにした
悪魔っ子はまたも目の前で通行止めを食らったことでムキーーッと地団駄踏んで怒り散らかしている
しかし逃げられないと悟ったのか、キッとこちらを振り向いてズカズカと寄ってきた
「あんたがこの壁を出したのね!消しなさいよ!!」
「あぁ、俺の話を聞いてくれたらな」
「イヤよ!!!」
「(ガン無視)嬢ちゃんは今、とんでもない過ちを犯そうとしている。犯そうと、している。この意味がわかるか?まだ引き返せる段階なんだ」
「うっさいわね!あんたの言うことなんて聞くわけないでしょ!!」
俺の目の前まで来て、ギンッと俺を睨み上げる悪魔っ子。いやぁ、照れますなぁ
でも舐められないために目を逸らさず睨み返さないと
というか、顔以外に目のやり場がない
この子露出多いんだよな………
フリッフリのミニスカの下からは、一部界隈では「ローキックしたらポキッと折れそう」と形容される、ハリガネみたいにほっそい足が伸びている
腕なんてさらに細い。ちょっと強く引いたら肩からポロッと取れるんじゃなかろうか
それに胴部分は、逆腹巻きってかんじでヘソまる出しだ
一部界隈なら「プレデターに背骨抜き取られやすそう」って言うだろう。え?言わない?
つーかこいつ………
この立ち位置、この距離感………また狙ってんな?
「問題なのは、その服のアクセだ。それも一部だけだ。それさえ直せば後はいい」
「聞かないって言ってるでしょ!!!」
「いや聞け。ほんのちょっと変えるだけで解放してやれるんだ。わかるか?」
「うるさいうるさいうるさい!!!さっさとあの壁消しなさい、よっ!!!」
どれだけ言っても全く聞く耳を持とうとしない悪魔っ子
そんな我が儘娘が唐突に半身を引き、そのほっそい足を振り上げた
そう、こいつまたもお股を蹴り上げようとしてきたのだ
ま、来るとわかってればどうとでもなる
「ふんっ!」
「んにゃっ!?」
俺の股間に細足が迫った瞬間、キュッと足を閉じてやった
太ももによる、「金的白刃取り」だ
別にヒットしたとこを挟んでもよかったけどね。当たってもダメージないし
さっき俺が項垂れてたのは、「若い女の子に股間を蹴られる」ってシチュエーションが心にダメージを与えたからだ
「なっ、はっ、離しなさいよ!!!」
「話を聞くか?」
「わっ、わかったから!!早く離して!!」
前へと90°以上開脚した状態で固定され、片足だけでケンッケンッとバランスを取るしかなくなっていた悪魔っ子
話を聞くようになったようなので、足を開いて離してやる
「ふんっ!!!」
「学ばんなぁ……」
「きゃぁぁっ!!?」
が、性懲りも無くまたまた股を狙ってきた
なので今度は、ひょいっと身をずらして避け、振り上げられた足首を掴んで逆さ吊りにしてやった
「あっ、やっ、離して!!下ろしてよヘンタイッ!!」
「下ろしたらまた暴れるだろ?」
「こんなことして許されると思ってるの!?タダじゃすまさないから!!!」
「ネゥちゃんさぁ……」
「な、なによ!!見てないで助けなさいよ!!」
片足を掴まれ、無様にもプラ〜ンと宙吊りになった悪魔っ子
殴って反撃してくるかと思ったが、どうやら捲れるスカートを押さえるので手いっぱいなようだ
そこへ悪魔っ子の友達が、ヤレヤレといった表情で近づいてきて………
「………ピンクのしましま」
「最っ低ー!!!」
友達の一言で、悪魔っ子は顔を真っ赤にしてスカートの後ろも押さえた
いったいなんのことだろう
オジサンマッタクワカラナイナー
初期設定じゃ白かベージュのはずだから、わざわざ自分で変えたんだな。見せるわけでもあるまいし
今見られちゃったけど
「くっ!見え…見え…」
「くそっ!ギリギリ見えない……!!」
「あぁ、いいもん見れた……」
「ふぅ。お前ら最低だぞ」
「あんな露出だらけの格好してんのにソコ見られんのは恥ずいんだ。ムラムラします」
「俺はプロのカメラマン(自称)いつだってカメラを構えられる。しっかりとスクショさせてもらったぜ」
「ナイスだ兄弟」
「おお、見せて見せ…………いやそれアウトじゃね?盗撮はアカンでしょ」
「あっ。消せ消せ消せ消せ」
「やっべやっべ、証拠隠滅──うわっ!?警告文きた!?ごめんなさいすぐ消します!消しました!すいません許してくださいなんでもしまむら!!!」
「おいおい気をつけろよ?(自分のスクショも消す)」
「うっ、俺にも警告きた」
「見てなくても、見ようとしただけで警告来るのか」
「そりゃそうだ。完全に「猥褻行為」だし」
「消す前に見せて欲しかったな〜」
「BANされるわアホ。……でもちょっと名残惜しかったな。ケツ肉までくっきり撮れたいい写真だったのn──うわっ!?ごめんなさい思い出すのもやめます!!だから再警告やめてぇ!?」
「んなっ!?!?ちょっと!!下ろしてよ!!下ろしてってば!!!」
「え、いや、う〜ん………」
周りで遠巻きに俺たちのことを見ていたプレイヤー達が、急に色めき立つ
見えただの見えないだのしょうもない会話が聞こえ、中には唐突に消えるやつもいた
多分ゲーム外にスクショ画像を転送保存しようとしてBANされたな。バカなやつだ
そんな他人事な俺には、警告文は一切来ていなかった
今まさに女の子の足を無許可に触り、ひっくり返して醜態を晒させているのに、だ
こりゃ多分、「正当な仕返し」として処理されたな
ないとはいえタマを蹴ろうとしてきたもんな。3回も、執拗に
金的って、か弱い女性が男に対抗できる数少ない手段って認識が多いけど、普通にセクハラだからな
でも、さすがに離した方がいいよな……こんな晒し者にするつもりはなかったし
だけど離したらまた暴れたり逃げたりして、話を聞いてくれなさそうだし………
「だめだな」
「なっ!?」
「下ろしても話聞かねぇだろ?その格好したまま外に出られるのは困るんでね」
「は、話聞く!!聞くから!!もう逃げないし蹴らないから下ろしてよ!!!」
「信じられんな」
「なっ!?なんでよ!!」
「どうせその場しのぎのウソだろ?言葉に誠意が感じられんな」
「うっ……」
「逃げられたら困るし、このまま聞いてもらうぞ」
「ぐっ…………ご……ご……ごめんなさいっ!!もう悪いことしませんっ!!下ろしてくださいお願いしますっっ!!!」
「はっ!どうだかな」
「あ〜〜………ごめんおじさん、もう下ろしてやってくんね?」
さっさと説明して服を着替えさせたいんだが、なかなか説明に入らさせてくれない
う〜ん、宙吊りのままにしてても喚き続けられたら話ができないな……
なんて思っていたら、悪魔っ子の友達から助け舟が入った
「こいつが敬語使うなんて滅多にないからね。もう下ろしても大人しくすると思うよ?」
「ネゥちゃんなにがあっても絶対謝らないもんね〜」
「……本当か?」
「ほ、本当よ!です!!大人しくします!!!」
ウサ耳少女とネコ耳少女の証言により、悪魔っ子の謝罪の信憑性が増す
……なら離してもいいかな?俺もずっとこんなことしてたいわけではないし
というかちょっと可哀想になってきたし
「そんなに言うなら、まあ許してやろう」
「あ、ぐべっ!?」
掴んでいた足をパッと離すと、悪魔っ子はその体勢のまま頭から地面に落下した
頭を押さえてうずくまってたけど、すぐにきょとんとした顔を上げた
別に痛くはないだろ?ゲーム内なんだから
だいぶビックリはしただろうけど、これくらいの仕返しは許されるだろう
悪魔っ子は立ち上がるも、両腕を2人の友達にガッチリホールドされて動けなくなっていた
ようやく、話を聞いてくれるようだ
はぁ、やっと本題に入れる……




