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急所一蹴



「ああもうっ!しつこいわね!!そこの裏道使って撒くわよ!!」


「ねぇ!!みんなバラバラの方に逃げたらいいんじゃない?!」


「でも多分追われてる理由ネゥちゃんだし、バラバラになったらネゥちゃんだけ追いかけられない?」


「なによ!!あたしを見捨てる気!?」


「ち、違うよ!?」


「見捨てられるのがイヤならその服着替えてよ!絶対それのせいで追われてるんだから!!」


「なんでよ!!あたしの服のどこが悪いわけ!?」


「全部だよ全部!!こんな典型的ナーロッパな世界観で悪魔のかっこは異端審問待ったなしだよ!!」


「悪魔じゃないし!!ナーロッパってなによ!!」


「喧嘩やめて〜〜!!」




 (かど)を曲がってこちらに向かってくる、3人の少女

 3人ともなかなかに奇抜な格好をしている


 特に一際声のでかい、気の強そうな子の格好は特徴的だ


 黒や紫を基調としたミニ丈ゴスロリとでも言えばいいのか、そんな服の腰回り(ウエスト)には布がほとんどない

 足には黒と紫の太い縞柄ニーソックスに、絶対走りにくい厚底パンプスを履いている

 頭にはカチューシャでもつけているのか、赤い小さな(つの)が2本生えているように見える

 それに服の背中部分にも、赤い小さなコウモリの羽のようなものが付いている


 総評すると、悪魔コス………というより、小悪魔系コーデ?といったかんじだな


 うん、ありゃ問題視されるわ


 というか、あんな服どこで手に入れたんだ?

 オーダーメイドか?なんのために?

 まさか、ただのオシャレ?

 ……ありうる。ゲームアバターってリアルの自分をアニメ美化したのが出来上がりやすいし、着飾りたくなる気持ちもわかる


 さて、そんなコスプレガールを止めにゃいかんのだが………俺にできる?


 ナンパと思われたりしない?俺の方が通報されるかも?というかどうやって止める?バッと前に出て立ち塞がって……その後は?どう注意する?不審がられずに会話できるか?キョドっちゃわないか?


 やべぇ、緊張してきた……

 でもあれは、早いとこ注意しとかないとまずいことになりかねないし………





「あ、あれ?走れな〜い」


「ちょっとなにやってんの!?置いてくわよ!!」


「アッキーそれスタミナ切れじゃない?」


「あっほんとだ!スタミナな〜い!どうやって回復するの〜?」


「なによだらしないわね!!」


「いやゲームのステータスだからどうしようもないよ!!」




 そんなコスプレ少女の1人が、いきなりヘロヘロとした走り方になった

 どうやらスタミナの枯渇による〈息切れ〉状態になったらしい


 動き続けてたら〈息切れ〉終わるの長引くぞ?ゲーム知識がだいぶ浅いようだな

 まあ多分、この最初の街にいることからも十中八九、第二陣の初心者プレイヤーなんだろうな


 とか思っている間に、だいぶ近いところまで迫ってきていた

 そろそろ俺が止めるタイミングになる


 ど、どうやって止めよう?

 バッと飛び出て、「よう嬢ちゃん、急ぎの用事か?」ってセリフで………いや、軽薄だとナンパみたいかも?「そこまでだ、観念しろ」ってかんじで………初心者に説教っぽくなるのはやだな………


 あぁもうわからん!!出たとこ勝負だ!!!




「おっと、待ちな嬢ちゃん」


「ぅわっ!?」


「なっ!?どっから出てきたのよ!!」



 俺は『隠密』を解いて飛び出し、少女たちの前に立ち塞がる

 ひとまず止めることに集中し、なんとか無難に成功した。……と、思う!



「その格好で外を出歩くのは危ないな。服を直してから……」


「いやよ!」


「え?」



 止めることに成功したので、次は優しく注意するぞ!

 ………と、意気込んでいたのだが


 悪魔っ子はなんと、話も聞かずに俺の脇をすり抜けて走り去ろうとしていた!



「ちょいちょい待て待て!!逃げるとやましいことがあるように見えちまうぞ?」


「あんたらに構ってる時間がもったいないだけよ!邪魔!!」


「待てってば!!話だけでも聞けって!!」


「うざ!!キモいんだけどおっさんが話しかけないでよ!!!」


「おぐふぅっ!?」



 初心者プレイヤーのステータス相手じゃ簡単に追いつけるので、再度目の前で立ち塞がる

 しかしそれでも逃げようとするので、もう一度大の字に立ち塞がるが………


 再三の警告への返答は、心ない言葉と細い足による金的(キ◯タマストライク)だった


 うん、物理ダメージは一切ない

 初心者ステータスだし、このゲームアバターにはタマは付属してないので、クラッシュするボールも存在しない


 でも心的、精神的ダメージが………

 キモいおっさん………



「ふんっ!」


「はあ…………『クレイウォール』×2」


「きゃあっ!!?」



 項垂れる俺の横を悠々と通り過ぎていく悪魔っ子の目の前へ、後ろも見ずに土壁を建てて道を塞ぐ


 ………最初っからこうすりゃよかったな

 いきなり壁を出現させて、あたふたしてるとこへゆっくりと登場するコオロギ………うん、その方が絵になってかっこよかった



「なによこれ!通れないじゃない!!」


「ちょっとネゥ〜?さすがにおいたが過ぎるよ〜?」


「ネゥちゃん待ってよ〜〜!スタミナどうやって回復するの〜?」



 そこへ、置いてかれていたウサ耳少女と、まだヘロヘロ歩きなネコ耳少女が追いついてきた

 この2人はつけ耳じゃなくて、多分種族が獣人だな



「はあっ、はあっ、た、助かりました!その娘を止めてくださって……」


「ああ、あんたもお疲れさん」



 その後ろから、同じくヘロヘロ歩きのNPC聖職者が肩で息をしながらやってきた



「あの少女、あんな姿をするなんて、なんて非常識な……!!」


「あ〜…………あの子らは異邦人、別の世界からやってきたやつらだ。向こうの世界には、ヤツらが存在しないんじゃないか?」


「なんと?!道理で、あのようなことをしでかしてもなんの危機感も持っていないのですね」



 納得し、しきりに頷くNPC聖職者



「まっ、ここは俺に任せてくれ。あんたも仕事があんだろ?」


「は、はぁ、わかりましたが……しっかりと言い含めておいてくださいよ?彼女の理解が浅く、耳に届かなかったら────“怪物”を、呼び寄せてしまいます」


「わかってるって」



 ここまで追いかけてきてもらったとこ悪いが、聖職者くんには帰ってもらう

 教会関係NPCの説教って、長くてくどくてわかりにくいからなぁ〜。そんなの聞かされても耳の中を右から左へ素通りだろう


 というわけで、俺が簡潔に、手短に、わかりやすく教えてやらなきゃいかん

 ………あの金的小娘に


 はぁ、やりたくねー

 

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