パリィと煽りはセット
「ギュゥゥ!!!?」
攻撃を逸らされたウサ公は、その勢いのまま地面へダイブした
「『瞑想』。頭からイッたけど大丈夫そ〜?」
「ギュゥゥゥゥ!!!」
俺はウサ公にもわかるようにクネクネと動いて煽る
それに怒ったらしいウサ公は体勢を整え、今度は蹴りをお見舞いしてきた
「ほい『インパクト』、『瞑想』」
「ギュゥッ!!?」
もちろん弾く。怒りで動きが単調になってパリィしやすいなぁ
さっきから俺がやってるのはいわゆるジャストパリィ。シビアなタイミングと一定以上のSTR、DEXが必要な技能だ
『身体強化』でステータスを全面的に上げ、タイミングを合わせて掌底で角の横をぶん殴る。それでもSTRが心許ないので、『無魔法』Lv.1アーツの『インパクト』もオマケだ
『インパクト』は少しのノックバックを発生させる魔法だ。手のひらからしか出せないため、こんなパリィ方法になってしまった
「ギュゥゥゥゥ!!!」
「ほらほらどうした?当たってないぞ〜」
「ギュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
パリィの後はしっかりと煽る。これはただのバッドマナーではない、戦略的バッドマナーだ
パリィを受けた相手は一瞬「無」になる。そこにすかさず煽りを入れることで、効率よくブチギレさせることができる。冷静な判断ができなくなった相手は、さっき対処されたはずの攻撃をまた使ってしまうのだ
パリィと煽りは相性バツグン。『AWR』プレイヤーはこれをアクアエイプ先生に嫌でも教わることになるぞぉ?
「『インパクト』、『瞑想』。そろそろ反撃しちゃうけどいいか〜?」
「ギュゥゥ!!!」
さっきから弾くだけで追撃を入れないのは、スタミナがまだ回復してないからだ
『瞑想』を使うと、その場でじっとしている間自然回復量が上昇する。この時に他のスキルを使うと効果が切れる
『瞑想』使用前に『身体強化』などの自己バフ系を使っても効果が継続する。『連射』などの途中で解除できるスキルはNGだ
そして、ついにスタミナが全回復した
「ギュゥゥゥッ!!!」
「待たせたな!そして終わりだ!『インパクト』からの『ダークボール』『ライトボール』!!そして『強射』ァ!」
「ギュゥゥッッ!!!?」
パリィを受けて体勢を崩したところに攻撃が次々と直撃する
盛大にすっ転んで、頭の上に星が回るエフェクトが見える。〈ダウン〉状態だな?体格が小さいと狙いやすくて助かるぜ!
「『溜射』……2、1、おらっ!そして『狙撃』!『連射』ァッ!」
「ギュゥゥゥゥゥゥ────」
俺は頭に矢を突きつけ、最大溜めの『溜射』を放つ。〈ダウン〉中は被ダメージ1.5倍なので、ガッツリ削れた
そのままアーツを連打してフィニッシュ。ウサ公はポリゴンへと散った
〈称号『激怒返し』を獲得しました〉
〈BP3を獲得しました〉
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その後も次々とレベルアップのログが流れるが、それを確認してる暇はない
俺は身を低くして[黒大蛇の外套]についている『隠密』を起動。森側にすばやく移動する
「倒しやがった!すげぇ!!」
「俺、今からキャラクリし直して弓やろうかな…」
「てかあれ魔法じゃね?もう魔法使えるやついるの?」
「あれ?あの黒ローブどこいった!?居ねぇぞ!!」
「あれNPCだったんじゃないの?ほら、徘徊型ボスにプレイヤーが殺されすぎた時に出る救済措置みたいな」
「ああ、たしかに。この段階でプレイヤーが魔法使えるのおかしいもんな」
「あの黒いの闇魔法?あのNPCに教わったら闇魔法使えるかも!?」
「……結局探すことになるのかよ!!まだこの辺にいるかもしれん!探すぞ!!」
後ろから何人かの話し声が聞こえてくるが、何を言ってるかまでは聞き取れなかった
ドロップアイテムの回収は[黒大蛇のポーチ]に任せてある。回収が終わったら謎原理でプレイヤーに追いついてくるので便利だ
森まで着いたら木の影に隠れ、外套をしまう。念の為、ヘビポーチと弓もしまっておこう──いや、手ぶらだったら逆に怪しまれるか?弓は装備して、ポーチは初期のに戻しておこう
『索敵』や『追跡』を使われていたら面倒だが、この外套の『隠密』を見破れるほど高レベルに育ってないことを祈ろう
何事もなかったかのように木の影から出て、採取を再開する
空がだんだん暗くなっている。かなりの時間プレイしてたみたいだな
俺は青い葉脈の草を合計400本になるまで採取し、街に戻ってログアウトした。ちょっと欲張ったのはナイショだ




