闘技大会予選開始
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闘技大会
それはめちゃくちゃ使いまわされてるイベントだ
ルールは様々だが、基本的に相手を倒して勝ち上がる、あまりストーリーの本筋に関わることが少ないイベントである
今回は一対一、アイテムポーチの使用不可というシンプルなルールだ。これが『決闘鯖』だとポーチの制限が解放され、選択肢がとんでもなく広がる
他にも、五対五で戦う「パーティ戦」、剣のみ使用可能な「剣闘戦」、回復の使用が不可になる「電撃戦」、パーティ戦だが1パーティに人間の参加は1人のみの「テイマー戦」など、ルールは多岐にわたる
闘技大会は、ゲーム内で1ヶ月に一回以上は世界のどこかしらで開催されている。今はまだこの国だけなので頻度は少ないが
特別な準備はほとんど要らず、飛び入りで参加して勝ち上がっていけばいいだけの簡単なイベントだ
そのため、イベント上位報酬のスキルオーブを稼ぐにはうってつけのイベントとなっている
まあ、大会の規模が小さいとオーブが貰えないこともあるけど
闘技大会の報酬は、勝ち上がっていくほど豪華になっていく。「上から何番目の順位か」ではなく、「下から何番目か」で報酬が決まるのだ
つまり最下位は同じ報酬ってことだな
同じ一位でも、参加者100人の中の一位と参加者10,000人の中の一位じゃ報酬が月とスッポンだ
まあ、今回は勝ち上がってくつもりはないけど………
「お、多すぎ……」
パラシュートを作った日から2日後、大会当日
俺は『セカン』の闘技場で参加申請をし………その試合数の多さに絶句した
「予選3回に、本戦6回……!?」
6回ってことは、本戦出場者は2,4,8……64人ってことか?
で、予選3回だが………1試合で20人がバトって2人の勝者が出る。つまり予選1回で参加者が1/10になる
それが3回行われると、参加者は1/1000まで絞られて、それで本戦出場者の64人を決めるから………総参加者64,000人!?!?!?
い、いや、落ち着け。予選が全試合20人で行われるわけではない。数合わせで19人以下でやる試合もある
つまり、64,000人以下だということがわかっただけだ!
………それでも32,000人以上はいることが確定してるのか………
「すげぇなぁ、『ソロ鯖』じゃいつも予選1回の本戦4回程度だったのに」
それも俺以外はNPCだ
だが今回は、異邦人の参加者があまりにも多いため、NPC参加者はいないらしい
つまりこれ全部プレイヤーだ
「ここで頂点になったらめちゃくちゃ気持ちいいだろうなぁ……」
いや我慢我慢、既プレイの俺が無双するのはよくない
……でも、ちょっとくらいはいいかな?予選の1,2試合くらいなら………
「ちょっとだけ楽しんじゃおっ。忘れ物は……」
忘れ物っていっても特になんも用意してないけど
コオロギじゃない方のアバターで、いつも通りの装備のままだ
用意したものといえば、大金くらい?
大金をなにに使うかというと、優勝予想の賭けに使うのだ
この賭けは、チュートリアル期間中に【ギャンブラー】の転職条件を満たせる数少ない機会だ
【ギャンブラー】の条件は、「賭けで合計100万G獲得する」。負けた額のマイナスとかはなく、勝った額の合計だけでいい
いつもだったら自分に賭けてそのまま優勝する
『ソロ鯖』ではどれだけレベルを上げてNPCより強くなっても、オッズは3倍以上になるようにゲーム側が設定してくれる。だから用意する額は50万Gでよかった
勝てば150万のリターン、100万分プラスで条件が満たせる
しかし、今回俺は優勝するつもりがない
真っ当に優勝者を予想しなきゃいけないわけだ
まあ、負け額のマイナスはないから、強そうな人全員賭けるゴリ押しでクリアできるけど
ただそれには金が大量にいる。だから大金を用意した
………不慮の事故で手に入れてしまったものもあるけどね
「すんません、いつか返します」
虚空へ謝罪して、今はありがたく使わせてもらうことにする
できるだけ無駄にしたくないな……
「さてと、まだ出番まで時間もあるし、他の試合の観戦を………するのは時間がもったいないな。レベリングしてよっと」
てことで、試合時間まで『サーズ』でレベリングすることにした
冒険者ギルドと闘技場は近いから、出番が近づいたら『リターンホーム』ですぐ戻れるからな
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「そろそろか、『リターンホーム』」
約5時間後
全体アナウンスを確認しながらイベントの進行具合を把握し、俺の出番が近づいてきたので『セカン』の闘技場へと戻る
俺が出場するのは予選一回戦、第1024試合だ
………これでもまだ前半のほうだから驚きだ
並行空間も使って、30試合ぐらい同時で行っているらしい
〈あなたの出場する試合が始まります。1分後、リングへテレポートされます〉
10分ほど待っていたら通知がきた
特に準備することもないので、そのままその場で1分待つ
1分後、視界が変わり、俺は闘技場のリングの上に立っていた
周囲には俺以外にもプレイヤーが、円を描くように待機していた。皆俺と同じように、身体が動かせない状態になっている
リングの中央にはホログラムのような数字が浮かんでおり、一つずつカウントが減っていく。あれがゼロになったら試合開始だ
さて、まずは様子見かな?
とりあえず自己バフを掛けて、相手の攻撃を回避する方針でいこう
〈──3……2……1……0!!!〉
〈試合開始!!!〉
「『フレイムマシンガ──」
「『ブリッツアロー』」
「『鉄壁』!」
「『アクセル』!」
「『薬効促進』」
「『ストーンウォール』!」
合図の直後、束縛から解放されたプレイヤーたちが各々行動を開始した
範囲魔法が放たれるような魔力の起こりが発生し、そこへ高速の矢が飛来。走って一気に距離を詰め出すものもおれば、まずは防御を固めるものも
俺に向かっている攻撃は少ない。軽く対処し、その間に一瞬でバフを掛け終える
とりあえず、プレイヤーが半数以下になるまではこっちからの攻撃は控えようかな?と判断し───
────ドッッゴオオォォォォン!!!!!!!
至近距離からの爆音。抵抗する間もなく衝撃と熱風に包まれ、体力が一瞬で消し飛ぶ
爆風で吹き飛ばされる感覚を味わいながら、俺の視界は暗転した




