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竜と追いかけっこ!


◆side:コオロギ




〈称号『愚かなる小虫よ』を獲得しました〉

〈BPを10獲得しました〉

〈スキル『上級隠密』が獲得可能になりました〉




 おっ、ラッキー!称号タダ乗りあざーす!!

 BP10うますぎー!!


 『上級隠密』は、名前の通り『隠密』の上位スキルだな。これを使ってドラゴンから逃げ隠れしろってか

 足りねぇよこんなんじゃ!もっとさらに上のスキルよこせ!!



「GAAAAU!!!!!!」


「うおおおおお!!?!?」


「きゃあぁぁぁぁ!!!?」



 ドラゴンが水を掬うように腕を振るうと、それだけで森の木々が地面ごと捲り上がり、爆発したかのように吹き飛ぶ


 2m級の[大岩]なんて小石かとおもうような巨大な地面の欠片が降り注ぐ中、俺は姫ちゃんの手を引いて潜り抜け、命からがら脱出する



「そ、そちらへ逃げてはだめです!!その方向には街が!!?」


「いいや大丈夫だ!!俺に任せろ!!」



 この惨状を生きて切り抜けるには、とにかく時間を稼ぐ必要がある

 そのために、まず避難場所へ駆け込むつもりだ


 猶予はある

 俺の予想が正しければ、このドラゴンは俺たちをすぐ殺すつもりはないはずだ!!



「GUOOOOO!!!!」


「クソっ、捕まれ!!『ウォーターウェーブ』『ウォーターウェーブ』!!」


「ひゃあぁぁぁぁ!!!??」



 ドラゴンが口を窄め、まるでロウソクの火を吹き消すかのような動作で小さな炎の吐息(ブレス)を放つ

 しかし、それは矮小な人間からしたら巨大な炎の津波が襲いかかってくるのと同義であった


 俺は姫ちゃんを掴み、水の波を起こして自分たちを押し流そうとする

 だが、ブレスとの距離を離すことはできなかった


 あーもう!勿体無いけどやるしかない!!



「『強制錬金』、『等価交換』!!」



 流されている最中、錬金釜を取り出して中に[水結晶]を一つ放り入れる

 そしてアーツを使用すると、錬金釜から勢いよく大量の水が溢れてきた



「息を止めろ!すうっ…!」


「わっ、うぶぶっ!?」



 大量の水は俺たちを包み込み、さらに押し流す

 かなりの手加減がされていた竜の息吹(ドラゴンブレス)は、森の木々を消し炭にし水を一瞬で沸騰させるほどの熱量を持っていたが、その熱が俺たちまで届くことは大量の水が遮ってくれた



「ぶはっ!よし、やっぱりあいつ俺たちを(なぶ)って遊んでやがるな!!」


「ぷはぁっ!?はぁ、はぁ」


「おい、走れるか?行くぞ!!」



 水から放出され、また走り出す

 走りながらも、今追いかけてきているドラゴンについて情報をまとめてみる




 身体の下に四肢があり、それとは別に背中から翼が生えている。亜竜とかじゃないガチモンの真竜だな

 体長約100m、翼開長約130mの超巨体。一枚一枚が分厚く大きい鱗

 皮膜型の翼で、蝙蝠(コウモリ)の翼と翼竜の翼を足して2で割らなかったような、生物オタクなフレンドから「こいつら翼の指7本以上もあるんだぜw」とツッコまれていたファンタジーな翼

 こいつは「陸竜種」のスタンダードな姿だな


 前腕と後脚の長さはほぼ同じ、地上では基本四足歩行だろう

 前腕は4本指で、握り込むのには適していない長さの爪を持っている

 翼には膜指が4本に鉤爪が3本。ここの爪は使用用途のない痕跡器官だな

 頭には湾曲の少ない長い角が2本。口には唇があり歯を覆い隠すことができるが、今は剥き出しになって嗜虐的な表情を見せている

 極め付けは鱗の色。(ワニ)を思い起こさせるような暗い緑褐色の体色をしている


 これらの特徴から、こいつは[深碧竜(グリーンドラゴン)]だと断定できる


 竜の生息地から離れ、世界中を飛び回る放浪個体だ

 問題は、こいつが「歴戦個体」なのか「はぐれ個体」なのかだが………


 さっきちらっと、尻尾や後脚に傷跡があるのが見えた。あれはいわゆる「逃げ傷」だ

 つまりやつは、「負け犬個体」で確定だな!


 強い相手を求めて自分の意思で世界を散策しているのではなく、同族間での縄張り争いに敗北し、同族との接触を恐れて生息域から逃げ出したやつだ

 このタイプは竜としてのプライドを取り戻すためか、圧倒的格下相手でも執拗に狙い続け、甚振るような狩りをする傾向がある



 つまりあいつは今、わざと攻撃を当てないようにして、死なないギリギリで踠き続ける俺たちを見て面白がっているんだ

 その油断が命取りになるとも知らずにな!



「GUORARARARARA!!!!!!!」


「んのおぉぉぉぉ!!?!?」



 ま、俺にその油断をつく力もないんだけどな!!


 しょうがないじゃん、だって俺まだ下級職半分もこなせてないんだもん

 それに対しドラゴンは、最上級職後半のレベリングで戦うような相手。勝てる試合じゃない!!


 それに、巨大モンスターってのは大体「レイドモンスター」だ

 俺の知ってる『ソロ鯖』のドラゴンとは強さが100倍くらい違うだろう。最上級職を極めても1人で倒せるような相手ではないかもしれない


 なので、とにかく逃げる!!

 もう少し走れば一息つける避難場所につけそうだしな!!



「おい嬢ちゃん!パーティ申請を承諾しな!!」


「え!?は、はい!!」


「よし!突入するぞ!!」



 避難場所に2人で逃げ込むため、一時的にパーティを組む


 ………後で思い返して気づいたのだが、この時とんでもなく危険な橋を渡っていたんだと肝を冷やした

 このパーティ申請、俺の本名(プレイヤーネーム)がガッツリ表示されていた

 それどころじゃない状況の姫ちゃんが気づかなかったからよかったけど、バレてたら大変なことになってたかもな……



「ふぅ、なんとか逃げ込めたな」


「え…?ここって……」



 とあるエリアに入ると、後ろから轟音とともに追いかけていたドラゴンの姿がパッと消える

 外では、急に俺たちの反応が消えて困惑するドラゴンがいることだろう


 そう、ここはフィールド上に存在する別空間………ボスエリアだ



「体力や魔力は減ってないか?今のうちに回復しとけ」


「あ、はい!『ライトヒール』!あなたは大丈夫ですか?」


「ああ。それよりあんた、スタミナ切れかけてたろ?念のためこれ持っとけ、[スタミナポーション]だ」


「そ、そんな受け取れませんよ!ここまで助けてもらってこれ以上なにかしてもらうなんて……」


「いいから受け取っとけ!あんたを死なせるわけにはいかないんだよ!!」


「あっ、すみません、ありがとうございます……」



 お願いします受け取ってください!!!


 今のうちにHP,MP,STを回復しておき、切れていたバフもかけ直す。姫ちゃんにもバフをかけてあげ、万全の備えをしておく



「キィィッ!!!」


「お前は大人しくしてろ!『ファイアボール』×2『ファイアスフィア』×2『ファイアアロー』×2」


「わっ!?」



 この場の主である[ウィンドマンティス]が擬態を解き降り立つという登場モーションを終え、こちらに斬撃波を放ってくる

 それを姫ちゃんの手を引いて避けさせ、反撃の魔法を放つ


 こいつはこちらの攻撃を、特に弱点となる攻撃を回避しようとする行動パターンを持っているので、『火魔法』6つを『魔力操作』で操り、鳥籠のようにグルグル囲むことで動きを封じる


 今の俺なら瞬殺できるが、こいつにはもうしばらく生きていてもらわないといけないんでね


 さてと、もうそろそろかな?





「───AAAAAAAAAAAA!!!!!!」



「キィッ!!?」


「な、なんですか!?まさか……!?」


「来るぞ…!」



 別空間にいるはずのヤツの咆哮が、空間を越えて響き渡る

 ボスエリア特有の、空間を隔てる()りガラスのような壁が、ビリビリと振動し………



「GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!」



 パキィンッ!!!と、耳障りな音を立てて砕け散ってしまった


 獲物が別空間に入り込んだことを察知したドラゴンは、思いっきり咆哮を上げた。ただそれだけで、空間の壁を破壊してしまったのだ



「GURUOOOOOOOO……!!!!」


「おっと、これはやばい」


「ま、まさか、ブレスですか!?こんな至近距離で!?」



 ここの主だった体長5m級の巨大カマキリはプチっと踏み潰される

 そして俺たちを見つけたドラゴンは、もう逃さないと言わんばかりに顎を大きく開き、その喉奥から紅蓮の炎が見え始める


 手加減なし、超広域高射程の本気ブレスで森ごと消し飛ばすつもりらしい

 これはさすがに回避できるようなものではない




 しかし、俺は勝ちを確信していた

 知ってるか?トドメを勿体ぶるのは横槍フラグなんだぜ?



「お前は「家」を荒らしすぎた。そろそろ「家主」からのきつ〜いお叱りが来るぜ?」



 ブレスのチャージが完了。発射前の僅かな静寂


 その静寂に割り込むかのように、強烈な揺れと共に地響きが近づいてきて…………




 ボッッ!!!!


 ドッッッ!!!!!


「GOAAAAA!!??!?!!?」



 100m級のドラゴンが、真横に吹っ飛ばされた


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