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クソゴミ最低行為




「金策の時間だぁぁぁ!!!」


「ーーー!………?」



 夜になり、ミュラのレベリングを開始する

 が、少し予定変更。レベリング自体はするが、経験値重視ではなく金策重視にする


 できれば今日中に買っておきたいものがある。そのために金が必要だ

 あといくらいるんだろう?調合と錬金と裁縫はあるから、残りは……4つか。400万くらいあれば足りるな


 今朝会ったフィルってプレイヤーがあのクエストをクリアしたら、しばらく買えなくなっちゃうからな

 中級生産施設を全部、欲を言えばプラスでいくつか欲しいものもある



「さてミュラ、お前の『ポルターガイスト』のレベリングは、生産経験値で稼いでいくぞ」


「ーー?」


「俺のクラフトを手伝って、それで経験値を得る。最初は簡単な作業からやってもらうぞ」


「ーー!」



 あんまわかってなさそうな様子のミュラが元気よくお返事をする


 『ポルターガイスト』に求められるのは同時操作と精密性。生産作業ならそれをクリアできる

 これだと品質が落ちてしまうが、これは金策も兼ねている。一個一個丁寧に作るよりも、たくさん作ってたくさん売る。自分で使うもんじゃないからそれでいいのだ



「じゃあまずは糸車だ」


「ーー?」


「まずはここを動かしててくれ、他は俺がやる。そんで、俺の動きを見て覚えて、()()するんだ」


「ーー……」



 うせやろ…?かなり簡潔に説明したはずなのに、もう頭がパンクしてる

 AIレベルがぁ……まだ多くを求めるべきじゃないな



「まず、ここを回す。まずはそれだけでいいから」


「ーー?ーーー!!」



 とりあえず一つずつ覚えさせてくことにした

 ミュラの知能教育も兼ねて、ゆっくりと教えていく


 その後も、一つ覚えたら一つ抜けるミュラの脳みそに悪戦苦闘しながら、なんとか糸車を1人で動かせるようにまでなった



「はぁ…はぁ…もう今日はこれでいいかな。金策しないとだし」


「ーー…?」



 とりあえずミュラの教育を切り上げ、本格的に量産に入っていく


 今回売っていくものは、[綿雲の布]だ。これをマーケットでプレイヤー相手に売り捌く

 [暗雲花]を織って冒険者ギルドに売るってプランは一旦なしになった。あのクエストに挑戦してるとなったら、今冒険者ギルドに闇属性のアイテムを売るのはよくないからな


 [暗雲花]をプレイヤーに売るって選択肢もあるけど、俺のアドバンテージを捨ててまで金が欲しいわけでもないし

 [雷雲花]なんて論外だ



「さあ、馬車馬ならぬ馬車輪のごとく働いてくれ〜?ヤニスパー、ポーショングビー」


「ーーー!」



 ミュラの担当は糸紡ぎ。そして俺の担当は、できた糸を布にするのと、材料の量産だ

 魔力を回復しながら、[綿雲花]に『作製加速』をかけまくる。ついでに品種改良も進めておく。一石二鳥だ


 あーすごいすごい、昼にマッドワーム相手にあんだけ魔法をぶっ放しても底を突かなかったMPが一瞬で空になった

 燃費悪すぎんよ〜『時空魔法』


 『作製加速』をかけてる時間よりも魔力回復を待ってる時間のが長いので、その隙に機織りとミュラの監督もする

 おい、飽きるな!



「よし、ある程度数が揃ったな。そろそろ売ってくか」



 20枚ほどできた[綿雲の布]を商業ギルドのマーケットシステムに入れる

 時間のかかるオークション式ではなく、最初にポチった人がすぐ買える即売式の方だ。こっちは出品者が値段設定するので、高すぎたら誰も買ってくれないけど


 どのくらいの値段にすればいいかなぁ…?

 NPC相手の売値と買値の間を取ると、大体の適正価格がわかる。[綿雲の布]は大体3万G弱だから、4〜5万くらいで売れれば……ボりすぎか?3.5万くらいにしとくか


 持ってきた布の、半分は3.5万Gで出品。残りを、4万、4.5万、5万、5.5万……とどんどん上げていき、どの値段まで買ってくれるか探る

 一枚だけ10万Gにしてみた。まあ買ってくれないだろうけど、値段設定し直して再出品すればいいし



「30分くらい待ってれば売れるかな?さて、生産の続きを…………うん?」



 布の量産を再開しようと出品画面から目を離そうとしたら、一瞬「SOLD OUT」の表示が見えた気がした


 まさかもう一枚売れたのかと、もう一度見てみたら───なんと、一枚どころか既に半数以上は買われていた



「………はぇ??」



 呆然と眺めていたら、残りの布もすごい勢いで売れていき、またたく間に完売してしまった

 10万Gで出品したものも、だ


 いやなんで?定価の3倍以上のクソ価格だぞ?

 見間違いか…?でも、俺の手元にはちゃんと金が入ってきてる……


 わからん、こんな大金出してまで欲しがるようなものか?性能もそんなすげーつえーってほどじゃないし、なんなら品質低いし

 それにレアってわけでもない…し……?


 あ、レアなのか。そうだそうだ思い出したわ。布で悩んでるやつとちょっと前に会ったな

 多分[綿雲花]にたどり着いてるプレイヤーがまだいないか、いたとしても情報を秘匿してるんだろう


 つまり現状、俺からしか供給源がない。欲しがる人なら、どんな値段にしても買うしかないってわけだ

 なんだっけ、「需要と供給」?「独占商売」?なんかそんなかんじのアレだ



「もしかして、全部10万Gにしても売れちゃったりする…?」



 少し好奇心が湧く

 急いで布を織り、できた5枚の布を出品してみる

 値段は全部10万Gで……いや、一つだけ15万Gにしてみようかな?


 すぐ売れた。一瞬で売れた。出品した瞬間に買い手がついたレベルで早かった

 これ値段見てるのか…?でも、誤タップ用に確認画面が出るから、値段自体は見てるはず

 確認画面を出してる間は他の人に買われないから、まずポチって確保しゆっくり考えるって手法もあるけど……

 出品してから入金されるまでがあまりにも早かった。値段を見た上で即決してるってことか……?



「これ、まだまだ吊り上げられるんじゃね…?」



 なんか面白くなってきた

 どこまで上げたら買い渋るようになるんだろ?


 まずは15万Gから。じわじわと上げていって20万Gに。これでもまだ即決で買われるので、30万Gまで上げてみる

 さすがに即決されることは少なくなったが、それでもまだ買い手がつく


 一枚だけ[暗雲の布]も紛れさせてみる。値段は100万Gだ

 ……売れた。5分くらいかかったけど、購入者が現れた


 すげぇ、じゃんじゃん売れる!ちょっと布を作るだけで金がすごい勢いで貯まってく!!

 既に目標金額を突破して、1000万に突入しかねないほど稼げてしまってる!


 これはいい金策法を発見してしまった

 プレイヤー相手なら、いくらでも値段を吊り上げて金を毟り取れる!『公式鯖』最高!!!







「……………毟り……取る………?」



 フィーバー状態の脳みそが、一瞬でクールダウンする

 クールダウンどころか、体温が極低温に下がるような錯覚まで起こる。寒いと錯覚してるはずなのに、身体からは汗がブワッと吹き出る


 これ、今俺がやってること………初心者を騙して、ぼったくりで金を毟り取ってるってことに………


 や、やばい、完全にやらかした

 初心者カモって金を吸い取るとかいう、新規を減らしかねないクソゴミ最低行為をかましてしまった


 どどどどうしよう!?どう償えば……

 稼がせてもらった分だけ、布を二束三文で売り払えば………

 いや、それだと大金払ってまで買ってくれた今までの購入者への謝罪どころか、追い討ちになってしまう


 返金したい!返金させてくれぇ…!!

 購入者は名乗り出てくれ!全額返したい…!!


 初心者狩りのPK相手にぼったくったときでも少し良心が痛んだ俺の心優しき(小心者な)メンタルが、なんの罪もない多数のプレイヤー相手にぼったくりまくったことでゴリッゴリに削れていく


 うぐぅ、お腹痛くなってきた……

 もうゲーム引退しちゃいたい。でもそんな無責任なこともできないし……



「ーーー?」


「そうだな、今は出来ることをやろう」


「ーーー?」



 とりあえず布の量産は続けながら、弁償方法を考え続ける。たくさん作っておいたら、購入者になにかできる機会があるかもしれないし



 しかしその後、効果的な案が浮かぶことはなかった


 1日ほど悩んだ結果、「高値でも買うのは俺からしか供給がないから」ということを思い出し、自分たちで量産できるように[綿雲花の苗]を捨て値で売って拡散することにした

 それも、購入者への直接の償いにはなっていないが………


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