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失礼して手掴みで




「……おっ、ここなんかあるな。どれかな?麻痺だといいな〜」


「ーー?」



 現在23層目。いつも通り魔物を躱して走っていたら、俺のスキルの一つが反応を見せる



「ちょっとミュラ、そこ立ってみて」


「ーーー?」



 俺が指差した場所へと、ミュラがふよふよと移動していく


 すると、ある地点を通過した瞬間、いきなり壁の一部がカコンッとスライドし、中からなにかが勢いよく飛び出してきた

 それはミュラへとまっすぐに飛んでいき、ミュラの身体に突き刺さる……



「ーーー!?!?」



 そして、そのまま貫通しすり抜けて、向こう側の壁に当たってカインッという音を立てて消滅した



「ーーーー!?ーーーーーー!!!!」


「なんだよ、別に当たんなかったからいいだろ?」


「ーーーー!!!」


「びっくりした?すまんすまん」



 俺の『罠』スキルに反応したのは、もちろんトラップだ。正面を通過したら矢が発射される、単純な矢トラップだな


 魔法付与(エンチャント)されてないから霊体のミュラには当たらなかったけど



「すまんけど、またそこに立っててもらえないか?」


「ーー…?」


「当たんないから大丈夫だって。立ってるだけでいいから」


「ーーー……」



 お願いされたミュラは、しぶしぶといった雰囲気でトラップの前へと戻る


 すると、魔力反応を感知したトラップが再度カコンッと開き、矢が射出された

 今度はミュラがびっくりして飛び退かなかったので、続けざまにパヒュッパヒュッと連続して矢が放たれ続ける

 矢はミュラの身体を通り抜け、広い通路の向こう側まで行って壁に当たって消滅するのを繰り返している


 俺はそんなトラップの射出口へと移動し、タイミングを見計らって……………



「ほっ!キャッチ成功!」



 飛び出してきた矢をパシッと掴み取った



「どれどれ、『鑑定』……あ〜、ただの毒矢だったか」



 この発射される矢、なんと矢尻に毒が塗られており、当たると毒状態になってしまうのだ


 ここより上の階層にあった普通の矢トラップに引っかかり、「そんなにダメージないんだな〜」と特に警戒せずに進んできたら、ここにきて急に毒を喰らってしまう

 矢自体のダメージは少ないが、毒がじわじわと体力を蝕んでいく。毒消しなどの対策も強いられ始めるようになってくるのだ



「まあ、毒矢もついでに集めとくか」



 ただ、俺が狙っていたのは、体力が減る[毒矢]ではなく、動きが鈍くなりスキルなどが失敗(ファンブル)しやすくなる[麻痺矢]だ

 ダメージの方は間に合ってるから、行動阻害手段を入手したいんだよね


 でも毒矢も便利だし、この機会にゲットしておこう

 さっきと同じように、いまだに射出され続けているトラップの横に片膝立ちになり……



「ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!」


「ーーー!?!?」


「あっミュラ動いちゃダメだぞ?ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!」



 パヒョッパヒョッパヒョッと規則的に射たれる毒矢を、パシッパシッパシッと連続で矢掴みしていく

 ミスったら手に矢がぶっ刺さる、危ない技だ


 高度な技術に見えるだろ?これ案外慣れたら簡単なんだ

 コツは最初に掴むタイミングと、リズム感だ。大縄跳びみたいなもんだ

 あ、現実でマネしちゃダメだぞ?ゲームのステータスがあるからできることだ


 この矢は、射出されてから1秒ほど経つと消滅してしまう。だがその前にキャッチして「入手」することで所有権がプレイヤーに移りポーチにしまえるようになる


 どこぞの孔明よろしく、トラップ前に藁人形を立てて刺さった端から抜いて入手するって方法もある

 ただそれだと矢の耐久が減っちゃうし、矢尻の毒が取れることがある

 そんなわけで、手掴みで取らせていただいてるわけだ



「ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!ほっ!」


「ーー…」



 5分ほどキャッチし続け、毒矢を500本ほど確保したので、その場を後にした








 その後、麻痺矢トラップも発見し、同じように2000本ほど回収しておいた

 毒矢系は、一度当たると矢尻の毒が取れてただの矢になっちゃうからな。量を集めておきたかった


 あと、ついでに25層まで突破。転移魔法陣に登録をしておいた

 ボス部屋を抜けてすぐにある転移魔法陣は、登録しておくとダンジョン入り口との相互ワープができるようになる、ショートカットだ



 ちなみに、20層目のボスは[ケイブスパイダー]、25層目のボスは[マーダーラット]だった。どっちも楽勝だった

 マーダーラットはマーダーベアよりちょい弱いくらいで、真正面から挑んだら瞬殺とはいかないな〜程度だった


 「マーダー」とかついてるとヤバそうなかんじがするけど、この世界じゃ人殺し(マーダー)なんて日常茶飯事だ。その辺のゴブリンやスライムですら、10匹に1匹くらいはマーダーだ


 やんちゃ小僧どもが子供だけで魔物の出る森に冒険に行き、ゴブリンにいじめられて死ぬなんてよくある話だ

 そんで街の噴水で復活し、泣きべそかきながら家に帰ったら母親に

「あんたまた死んできたの!?も〜服ボロボロにして〜はやくお風呂入ってきなさい!なにか落と(ロスト)してないでしょうね?え?家の鍵!?早く取り行ってきなさいついてってあげるから!お風呂は後よ!その後で一緒に教会行って、女神様に「死んじゃってごめんなさい、助けてくれてありがとうございます」しにいきますからね!!」

 と叱られるのが平和な日常の一幕だ



 これで、ここに来た目的は一応全部達成かな

 25層の転移登録と、麻痺矢をはじめとした各種アイテムの確保。オッケーだな


 25層から下は、また隠し通路を発見すればその先へと進めるけど、今度の隠し通路は『時空魔法』のレベル20にならないと使えないアーツを要求される

 今のレベルは14なので不可能だ。…………だいぶ上がったなぁ、10スキルなのに


 レベルが上がったらまたここへ来ようと思う

 『作製加速』を使っていたら勝手に上がってくからな

 これまで『時空魔法』に、というか『作製加速』に費やしたMPがとんでもないことになってる。このMPを他の魔法で使ってたら、六属性の魔法がそれぞれ2回ずつカンストできるレベルで溶けている

 マナ煙草様様だな




「よし、後は軽く宝箱巡りでもするかな」



 採掘はしない。だってスキルがないから非効率的だもん

 ……でもそろそろ採取系スキルに着手してもいい頃合いかもな。『解体』も取ったことだし


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