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こんな装備で大丈夫なのか?



◆side:ザッパ



 一時間後、コオロギが『恐鉄鉱山』とか呼んでたあの山の前に俺たちはいた



「リーダー、本当にこんなんでいけるんっすかね…?」

「あのコオロギが言ったんなら確かっぽいけど」

「なりすましに騙された可能性とかはないのか?」

「リーダー結構抜けてるとこあるし」


「よーしてめーら一列に並べ。一発ずつブン殴るから」



 コオロギからの情報を実践すべくクラメンに声をかけたら、今いるメンツがほぼ全員集まってきやがった

 おかげで準備に時間がかかっちまった


 できれば他クランにバレないようこっそり行きたかったんだがな。秘匿情報にしたかったがこの大所帯じゃ無理そうだ

 ま、ここを何度も登り降りしてたらいつかはバレてただろうさ。そんながっつり情報規制したいってわけでもねぇからワイワイやろうや



「んじゃ行くぞ!おまえら、金属製のもんはつけてないだろうな?」


「大丈夫だぜ〜リーダー」


「で、次が……あー、低めの崖っぽいとこは近くにねぇか?ないんなら……」


「あそことかいいんじゃねぇの?」


「おー、よく見つけたな。そんじゃそこで各自アレを装備すんぞ!」



 コオロギから教えて貰った、登山用の専用装備。それを装備するにはある程度の高さが必要だ

 手頃な地形があるんならそこを使えばいいが、ないんだったら、持ってきた木箱を積み上げて台座にすりゃいいんだとよ


 崖の縁まで行き、ポーチから各々専用装備を取り出していく

 この専用装備はオーダーメイドだ。生産クランに注文し、人数分作ってもらった

 つっても、一瞬で作り終わったらしい。受け取ったとき「こんなん何に使うんだ?」って顔してたな。わかるぞ、俺もまだ少し疑ってる


 取り出した装備。めちゃくちゃ長く、まっすぐな木材に、上部に足を乗っけるための足台がある

 そう、こいつは言わば、木製の[竹馬]だ。ただし、地面から足裏までの距離が3mはある特別製だがな



「危なっ……くはないな。思ったより安定性あんじゃん」


「あー、補助足つけてもらったからな」



 こんなん不安定で使えたもんじゃないだろ、って思ってたら、「器用さ(D E X)ないんだったら補助足をつければいい」ってコオロギに言われた

 下の方にもう一本、支えが「h」みたいな形で生えてて、設置面を増やしてくれている



「全員歩けるか?行くぞ!!」


「「「「「おう!!!」」」」」

「待ってー俺高所恐怖症ー」



 特に問題はなさそうなんで、竹馬に乗ってカツーンカツーンと歩き始める



 進んでいくと、この山にいる魔物……プレイヤー間では「メタルカタツムリ」って呼ばれてる、名称不明の魔物が現れる

 『鑑定』持ちが見たらしいが、鑑定結果がバグったようになるらしい。レベル不足なんかで鑑定不能になったのとはまた違う表示って言ってたな


 こいつがとにかく厄介で、まずなんといっても体力がバカ多い。1匹だけ釣り出してフルボッコにしてみたが、何十分も殴ってもピンピンしてやがった

 しかも途中から殻に入って出てこなくなる。多分防御モードなんだろうな

 しかも、こいつの攻撃には防具破壊までついてやがる。胴体を持ち上げてのしかかってきたと思ったら、ギャリギャリと音を立てて鎧の耐久をゴリゴリ削ってくれやがる

 さらに厄介なのが、こいつらリンク範囲がめちゃくちゃ広い。1匹に気づかれたら、視界に入る範囲にいるカタツムリ全てが反応しやがる

 あの見た目で結構速く、走らないタイプのゾンビ映画みたいな気分を味わえる


 倒していくのも無理、無視して通り抜けるのも難しい面倒な魔物

 そんな魔物を今……………俺は真上を跨いだ



「すげぇ、本当に敵対されねぇんだな」



 コオロギは言っていた。あいつらは金属を食い、金属に反応する。だから金属を身につけていなければ敵対されにくい

 それでも、人間の身体に含まれる微小の金属にも反応する。が、それを探知するにはかなり近づかなきゃいけない


 つまり、近づかなきゃ気づかれない

 だから竹馬に乗るんだ。やつらから1m以上離れた、やつの体高を考慮して2m、余裕を持って3mはある竹馬をな


 近づかなきゃいいってからくり(ギミック)なら、わざわざ竹馬なんか必要なくねぇか?そうコオロギに言ってやったんだが………



「やっべ、踏んづけちまった」



 やつらは、岩に擬態して休眠する


 休眠中でも、人間が近づいたら起きてくるらしい

 コオロギが言うには、こいつらは普通の魔物とは違う特殊な存在らしく、『索敵』が通用しにくいんだとさ


 んで、そんなやつを迂闊にも竹馬で踏んづけたやつが現れた。怒ったカタツムリが目を覚まし、触覚を出してきた

 ただ、こういう時の対処法も教えてもらってる



「おら、足貸すぞ」


「助かるリーダー。あーあもったいないなー」


「元から消耗品だ、そんなに制作費もかかってない。安心して捨てろ」



 俺の竹馬を掴ませてやり、踏んづけてた竹馬をそっと捨てる

 そして踏んだやつは新しい竹馬を取り出し、それを装備した


 怒っていたカタツムリは、よくわかってないまま捨てられた竹馬へと攻撃しに行った

 ………本当に、上に乗ってる人間には気づかないんだな。こりゃすげえ



「足元には気をつけろ!つーか足元以外は気をつけなくていいから足元しっかり見ろ!」


「「「「「おう!!」」」」」

「待ってー」



 全員の気を引き締めさせ、再出発する

 上に進むにつれ、カタツムリ共の密度が上がっていき、踏んづけることも多くなってきたが、全て難なく対処ができた


 ほどなくして、頂上に到着した

 あのカタツムリ地獄からは一変して、ここには何の気配もない



「よし!全員揃ってんな!!」


「「「「「おう!!」」」」」

「はひぃ」


「こっからはボス戦だ!5人パーティで行くぞ!!」



 例の[魔鉄]をドロップする魔物、そいつはこの山の頂上にいるボスらしい

 竹馬から降り、しまっていた金属の武器や防具を取り出し装備し直す


 道中の難易度からして、相当な強さをしてるに違いねぇ

 だがもう新素材が目の前まで来てんだ。どんだけ強かろうと何度も挑んでブッ倒してやる…!!








〈〈お知らせします。フィールドボス[ストーンゴーレム]が初討伐されました  討伐者 「ザッパ」…………… 〉〉



「………なんつーか、あっけなかったな」



 ボスは、ところどころに鉱石を引っ付けたデカいゴーレムだった

 重い身体から繰り出される強力な攻撃、結構速い転がり突進、小分体の生成、巨岩の投擲などなど、楽しませてくれるやつだった

 ……が、いかんせん俺らとの相性がすこぶる悪かった


 どうやらこいつ、打撃攻撃が弱点らしく、一発当てるだけで気持ちいいくらいブッ壊れてくれる

 そんでもって、俺らのクランはどういうわけか鈍器持ちがめちゃくちゃ多い。俺も最近バトルアックスからバトルハンマーに武器チェンしたし


 攻撃はかなり痛かったが、物理一辺倒だったおかげで俺らの防御でもどうにかなった

 結構消耗させられたが、それは初見だったからだ。モーションは大体覚えたし、ここは周回しやすいんじゃねぇか…!?



「初見の鉱石が落ちてるな。これが例の[魔鉄]ってやつか?」


「おお!持って帰って鑑定してもらおうぜ!」


「リーダー!やっぱりここ採掘ポイントだった!」


「まじか、ボスエリアに採取スポットがあるなんて初じゃねーか?」



 途中、おそらくボスの体力が半分になったとき、ゴーレムがとある場所に手を当てて何かを吸い取って回復をしていた

 そこがまさかの採掘ができる場所で、ツルハシを振り下ろしたら推定[魔鉄]が取れた


 幸いなことに、俺らの『採掘』レベルはマックスだ

 基本的に装備の素材は自己採集だからな。納品待ちするより自分で取りに行ったほうが早いし安上がりだ

 …………何時間もツルハシを振り続ける苦行が待っているがな



「こいつはすげぇ、こいつはすげぇぞ!!」



 だが今回はそれをする必要がなくなった

 もちろん採掘もする予定だが、魔物から鉱石がドロップするならそっちの方がいい


 味気ない採掘作業じゃない、身体を動かしてハンマーをぶん回す爽快なバトル

 経験値も入り、レベリングも両立できる理想の環境

 そしてなにより………あのゴーレムブン殴るの、めっちゃ気持ちいい。面白いくらいブッ壊れてくれるからむちゃくちゃスッキリする



「うしっ!しばらくここ周回すんぞ!!」


「「「「賛成!!!」」」」



 そういや、最後にコオロギに念を押されたな。「魔法攻撃は身体で受けるもんじゃない」って

 鎧や盾作ってもそこまで意味はないんだろうな


 まあ、解決法はうっすらと考えてある

 防御できないんなら、撃ち落とせばいいのさ


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