魔王城は迷路か何か?
3話目です。おー!
全くもって愚かだったと言わざるを得ない。ああ、なんて私はバカだったのだろう。これでは魔族のみんなをバカにすることなど出来ないではないか。
まさか……まさか……。
「……ここ、どこ?」
まさかこの私が、魔王城の中で迷子になってしまうとは。なんて恐ろしい場所なんだろう。
私が迷子になったのには勿論理由がある。決して、決して書庫に引きこもり過ぎて魔王城の構造を忘れてしまい、迷子になっているのではない。そこは絶対に勘違いしてはいけない。いけないのだ。
私が迷子になった理由、それは魔王城の構造が魔王の代替わりと共に変化するというものだ。……迷子が恥ずかしくて適当な言い訳をしているわけではないぞ。
ちょっと分かりにくかったかもしれないので詳しく説明すると、魔王城は魔王が代替わりすると、そのタイミングで魔王の好きな様に自由に創り変えることができるのだ。
その自由度は凄まじく、階段の位置から部屋の配置、内装や外装に至るまで全てだ。最も、創り変えることのできない例外はあるのだけど……まぁ、そこは別に良いか。
とにかく、帰り道は覚えているとはいえこのまま「迷子になったので諦めます〜」なんておめおめと帰る訳にはいかない。私の読書生活の為にも、そして私のプライド的にも。
……え? 人に聞けば良いのではないかって? 勿論私だってそんなことは思いついていた。プライドが邪魔して人に聞けなかったなんてことはない。ないったらない。
ただ単純に人が居なかったのだ。私が迷子になっている間に見つけた人は、脅威のゼロ人である。なんて恐ろしい。
この城にバイオハザードでも起きて生きている者がもう私しかいないという状況でもなければ、この城には巡回の兵士などがまったく居ないということになる。魔族のみんなに警備という概念は無いのか。
こうなったら、もうがむしゃらに歩いて歩いて歩きまくるしかないのかもしれない。既に書庫を出たことをちょっぴり後悔しているけれど、もう引き返せない。行くぞー!!
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。つ、着いた〜」
あれからどれくらいの時間が経っただろうか。とんでもなく経った様な気もするし、そこまで経ってない様な気もする。
とにかく、私は辿り着いたのだ。うるさいの権化、文句を言うべき魔王の所へ。結局、ここに辿り着くまで誰にも会うことはできなかったけれども、私の気合いの勝ちだ。
しかし兵士を置くのを止めるくらい脳筋なのなら、何故ここまで迷路の様な構造にしたのか。これが分からない。まさか今代の魔王と魔族たちはそれぞれ野生の勘で道が分かるとでも言うのだろうか。でもそれなら……っと、思考が逸ってしまった。私の悪い癖だ。
書庫に居た時は魔王なのだから玉座の間で偉そうにふんぞりかえってるんじゃないかなと思っていたけれど、たどり着いた今ならわかる、そんなことはなかった。
広いグラウンドに高い天井、そしてどこか臭う汗臭さ。書庫で麗しき読書生活を行っている私には程遠い場所。ここは訓練場だ。まぁ、頑張る姿は嫌いじゃないけどね。
「グバハハハハハハ! もっとだ! もっと来い! その程度じゃ俺様を超えて次なる魔王になることなんぞできんぞ!!!!」
ドカーン!!!!
訓練場には魔族が沢山いた。お城の警備に魔族がガチでゼロ人だったのはここに全員集まっていたからのようだ。みんなマジで頭の中まで筋肉でできているのかも。
そしてその中から魔王を見つけるのは非常に容易だった。元々身体の大きい者が多い魔族の中でもとびきり大きな魔族が訓練場の奥に佇んでいた。
というか、音の原因がハッキリした。『ドカーン!!!!』という音の正体は、訓練の中で魔王が襲い掛かってきた他の魔族を殴り飛ばした時の音だったようだ。……こわっ! 死んでないか不安になるレベルなんだけど。もはや訓練じゃなくてクーデターでしょこれは。魔族は頑丈だから大丈夫なんだろうけどね?
「グバハハハハハハ!! 楽しいなぁ! 俺様もますます強くなるぅぅぅぅ!!!」
ドカーン!!!!
うぅ、あれだけ苛立ちを抱えていた私も、迷子になったうえでこの迫力のある訓練の様子を見てしまったら怖気付いてしまう。怖過ぎでしょ。これに何も考えず文句を言えるとしたら勇者かバカしかいない。
でも、勇気を持って一歩踏み出す。そもそも落ち着いて本を読む為になんでこんなことしなくちゃいけないんだろう、と頭の中で考えながら。
「あの……」
「グバハハハハハハ!!」
「ねぇ……」
「筋肉は裏切らねぇ!!!」
「ちょっとお願い事があるんだけど……」
「まだまだ夜は終わらんぞ!!! もっと訓練だぁぁぁ!!! まだ昼だけどな!!!」
……全然反応してくれない。魔王が大き過ぎて私が見えていないのと、声がデカ過ぎて私の声が届いていないようだ。テンション上がり過ぎて周りが見えないなんて迷惑過ぎる。
こうなったら、私も彼らの流儀に従って黄金の右腕を披露するしかないのかもしれない。強力な一撃を喰らわせて、意識をこっちに向かわせる!
スーハースーハー。私、行きます! 唸れ私の必殺パンチ!
ペチン!!!!
小さな乾いた音が、何故かよく聞こえた気がした。
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