表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カトリア戦記  作者: 山水香
王国の運命
7/21

屈辱

目の前には前には黒光りでスキンヘッドのマッチョが仁王立ちでこちらを見ていた。


しかも全裸で。


「いや、ほんとに誰ですか?」


ぼんやりとした頭が徐々に覚醒するなか、ネロは目の前の不審者に問いかけた。


男は少し考えた後、言葉を選ぶように話し出した。


「おそらくお前が私の正体を聞いても信じることはないだろう。

 

 しかしこれは本当のことだ。

 

 簡単に言ってしまうと私は世間一般のお前のイメージだ。」


ネロは一瞬わけがわからなかったがすぐに我に返り叫んだ。


「嘘だ!!僕はお前とは違って肌も白いし髪もそんな色してない。

 

 なにより僕はゆるふわ系で売ってるんだ!!」


否定するネロであったが不審者は話を続けた。


「嘘じゃない。


 お前はこの前たった一人で敵軍を壊滅させただろ?


 それを聞いた世界中の民衆はお前を俺みたいなムキムキのナイスボディだと思ってるんだ。

 

 その結果俺が生まれたというわけだ。」


「なんでそうなるんだよ。


 第一お前の言ってることが正しいとして、そんな話今まで一度も聞いたことがないぞ。」


その時、誰かが部屋の前の廊下を歩く音が聞こえた。



誰かこっちに来る。まずい、いやむしろ好機だ。


こんな不審者さっさと追い出して二度寝しよう。



ガチャとドアが開き、入ってきたのはセドリックだった。


「起きたかネロ。


 用事の途中で寄ったがあんなに騒いでどうした?

 

 マッチョとかなんとか言ってたが廊下まで聞こえてたぞ。

 

 おまえマッチョになりたいのか?」


「ち…違う。俺はゆるふわ系で売ってるんだー!!というかそこの不審者を追い出してくれ。」


「わかったわかった。で?その不審者というのはどこにいるんだ?」


「お前の目の前にいるじゃないか。」


「……お前、まだ寝ぼけてんのか。」


ネロは不審者を指さしたがセドリックには何も見えていないようだった。


挙句ため息をつかれる始末である。


「はあ。まあお前が疲れているのは理解できる。

 

 今日はゆっくりしていろ。

 

 だが明日からはまた仕事があるぞ。


 言っておくがグラディウス山に登ろうだなんて馬鹿なことはするなよ。

 

 じゃあまた明日な。」


ネロが何か言う前にセドリックはネロと不審者を残してさっさと帰ってしまった。


「これで分かっただろ。お前以外には俺のことが見えないんだ。それに、俺みたいなのは本当にまれなんだ。どうだ、理解できたか?」


「……とめない。」


「なんだって?」


「こんな不審者俺は認めないーーーーーーー!!!」




時間は少しすすんで同じ城の玉座の間にて


「今回、このような場を設けていただき誠にありがとうございます。ヨーゼフ皇帝代理殿。」


「いえいえ。今回のことは両者の勘違いから生まれたこと。お互いここで立ち止まれたことを喜びましょう。」


……ニコリともしないな。

 

さすがに東方のレコンキスタにおいて鋼鉄の男と呼ばれるだけはある。


まったく、あの馬鹿を呼ばなくて正解だったな。


何をしでかすかわかったもんじゃない。


今日も不審者がいるだの言っていたが最近ますますおかしくなってるんじゃないか?


しかしまあ元気になっただけよしとしよう。


なぜか知らんが向こうはネロのことをやけに恐れているらしい。


おそらくあいつがいなかったら講和なんてなかっただろう。



「つきましてはお互いの国境は先日提出したものとし、主要な街道にはお互いに兵を置くことでよろしいですね。」


「こちらとしてもそれでよいと結論が出ました。皇帝陛下の寛大な配慮に感謝します。」


茶番だな。


民衆がこれを見たらどう思うだろうか。


それでも結ぶしかないだろう。


父…宰相もそうだが、王太子殿下もよくあの仕打ちに耐えられるものだ。


「ではこれで今回は終わりということにいたしましょう。


 あ、そういえば我々の領土についてなのですが。

 

 このたびわたくしが東方のレコンキスタと十字軍の戦功として拝領いたしました。」


「それは…まことにおめでとうございます。

 

 王国を代表してヨーゼフ伯爵殿にお祝い申し上げます。」


「ありがとうございます。

 

 しかし伯爵ではございません。先日辺境伯に叙爵されましたので。

 

 今度からは辺境伯とお呼びください。」


心なしか王太子の顔は引きつっていた。


「では私たちはお暇いたします。


 王太子殿、国王陛下にもよろしくお伝えください。

 

 それとモーデンベルク殿、この度の仲介ありがとうございました。」


伯爵改め辺境伯は去っていき、たちまち玉座の間の空気が緩んだ。


「では我々も解散ということにいたしましょう。


 モーデンベルク殿本当にありがとうございました。」


「いやいや、わいとしても半島の平和を第一に考えておるんで当たり前のことですよ。


 そんでまあ、お疲れのとこ申し訳ないんですけど少し時間をいただけませんかね。


 うちから王国に提案があるんですよ。」



モーデンベルクの提案は半島の運命を大きく変えるものだったと、この時は思いもしなかった。

とりあえず、これで第一章は終わりです。

次は説明不足だった国家の紹介や設定の補足をしたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ