大きな勘違い
ネロが味方とはぐれてから少しして
セドリックがふと目をやると、さっきまで隣で馬を走らせていたはずのネロがいなかった。
彼はすぐには理解できなかったが、ほどなくして一つの結論に至った。
「隊長、ネロの馬鹿がはぐれました」
「は?・・・・・・・作戦の遂行が最優先だ、このまま行く」
ベテランの軍人にとっても初めての出来事だったのだろう。
しかしすぐにいつもの調子に戻り、ネロの救出を諦めたのだった。
一方、損切りをされたことなど知る由もない当人は呑気に王国へ帰ろうとしていた。
「いや~。来た道を覚えておいてほんとによかった。敵も来ていないみたいだし思ったより安全に帰れそうだな。」
彼がそんな独り言を言いながら進んでいると、曲がり角から、音もなく武装した男が現れた。
「おお…びっくりした。お前、一人でいるということはもしかして隊からはぐれたやつか?」
「うんそうだよ。ふと目を離したらみんなどこか行ってしまったんだ」
「はっはっは。はぐれたやつはみんなそう言うよ。
しかし、豪胆な奴だな。森の中はいたるところにネルファ人がいるというのに、よくもまあそんなのんびり歩こうと思ったものだ。」
「えっあのよくわからない奴らってネルファ人だったの?」
「なんだ、そんなことも知らないとはどれだけ前からはぐれてたんだ。
まあいい、そこの湖のほとりに拠点がある。もしかしたらお前の部隊もそこにいるかもしれないぞ。」
「そこの湖に?わかったありがとう。」
ネロはそれなりの違和感を感じながらも男に言われた通り湖の拠点までやってきた。
「おかしいな。僕らゲリラ戦していたはずだからこんなところに拠点なんか作らないはずなんだけど。
まあでもみんな僕と同じような格好してるし旗も見たことある感じだもんな。」
疑念を感じながらもネロは自分の部隊を探すため、近くにいた階級の高そうな男に近づいた。
「あの、すみません。僕、部隊からはぐれたんですけど仲間がどこにいるかわかりますかね?」
「うん?ああなるほど、大丈夫だよ。最近は落伍者が多くてね、気にすることはないよ。
さて、では貴殿の部隊の隊長を教えてほしい。」
「はい…。あれっ?隊長の名前なんだっけ。」
「隊長の名前が思い出せないかね?であれば主人の名前を教えてほしい。
さすがにこちらはわかるだろう?」
「主人?そんなものいませんけど?」
「…だとすると教会の騎士団か?しかし、君のなりは全くそうは見えないが。」
「あ、えっと?」
あせるネロに対して、男はますます疑うような目でネロを見た。
「十字軍の証であるペンダントはどこだ?全軍に支給されたはずだ。」
「そんなのもらってませんけど。」
「貴様、どこの国から来た?」
「え…。王国から来ました。」
少しの沈黙の後、男は息を大きく吸い叫んだ。
「敵だ!!!!ネルファ人のスパイがいるぞぉぉぉぉ!!!」
説明不足な部分があったので二話の内容を少し変えました。
主人公が戦っている戦場は山の中です。