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カトリア戦記  作者: 山水香
共和国へ
16/21

お祭り

九話、十話についてかなり内容を変更しました。申し訳ありません。

ネロ達三人が寺から帰ってきてから数時間後


ネロは夜のレーベルランドの中を歩いていた。



何とかラシャとの約束に間に合いそうだ。


お寺に連れていかれたときはどうなるかと思ったけど結果的に行ってよかった。


しかし、先ほどから街が賑やなんだよね。


別に喧嘩とかではなさそうだ。


もしかしてまだ僕たちの到着を祝っているとかかな?


そんなことを考えていたらラシャの家までやってきた。


ドアをたたいてすいませーんと言うと家の中からがたがたという音が聞こえてきた。


そして、ほどなくしてドアがゆっくり開くと中からラシャが現れた。


昨日の豪華なドレスとは違って今日は白を基調としたラフなスカート姿でやってきた。


昨日の彼女は高嶺の花といった感じの雰囲気を醸し出していたが今日の元気があふれているような姿も本当にきれいだ。


もしかして彼女は天使なんじゃないだろうか。


正直、今までであったどんな女性も彼女とは比べ物にならない。


あっ笑った。彼女の些細な動きですごく幸せな気分になる。


僕、明日死んだりしないよね?


「ネロ君どうしたの?早く行こうよ」


いけないいけない。自分の世界に入り込みすぎたみたいだ。


「ごめんごめん。そうだね行こうか」


僕たちはさっきの賑やかな方に向かって歩き出した。


「そういえば行き先は決めさせてって言っていたけど、どこに行くの?」


僕がそう言うと彼女は昨日の楽しみで待ちきれないといった笑みを浮かべた。


「実はね、今日から共和国は二日間お祭りがあるの」


「そうなんだ」


「そうなの。それで今日は屋台巡りをしようと思います!」


ラシャは昨日よりも元気はつらつという感じだった。


おそらくこっちが自然体何だろうな。


「なるほど、わかったよ。じゃあ早速行こうか。どんな屋台があるの?」


「うふふ。行ってからのお楽しみよ」


そしてラシャは思い出したように言った。


「そういえば、裏道は行かないようにね。この街の治安はいい方だけどやっぱり危ないところはあるから」


「わかった。あっあの屋台何が売ってるの?」





「・・・なんだか気持ち悪いな。昨日私を助けてくれた男とは思えないぞ」


ネロとラシャを後ろから見るものがいた。


アテネである。手にはさっきセドリックからもらったお金を握っている。


アテネは二人の後をネロに気付かれないように尾行していた。


「もっとも面白そうなものが見えそうであるがな。セドリックも来ればよかったのに」


セドリックはまだ仕事が残っているらしく一緒には来ていなかった。


「しかし、私に気づくそぶりすらみせないな。どうしてあんなに腑抜けてるんだ?」


実際ネロはアテネがついてきていることなど全く気付いていなかった。


「もし何かあっても気づきそうにないな。しょうがない、私が守って・・・なんだあのお菓子は?」


アテネは屋台で売られていたりんご飴が目に入った。


「さっきセドリックからもらったお金もあるし買ってみるか・・・」


アテネは適当にお金を机に置いた後、勝手にりんご飴をとって食べた。


そして、精一杯口を開けてかぶりついた。


ガリッといういい音が聞こえた後、アテネは目をキラキラさせた。


「なんだこれは?なんて甘いんだ!」


りんご飴は彼女にとって初めての物だったがかなり気に入ったようだ。


「なかなか面白いものを売っているな」


そう言いながらアテネはりんご飴を食べていたがふと前を向くとほかにもおいしそうなものがあることに気付いた。


「よく見るとほかにも面白そうなものが売っているじゃないか。ネロのことは・・・まあ大丈夫だろう。腐っても私のイメージ元だ。ちょっとくらい大丈夫大丈夫」


そういいながらアテネはルンルンで屋台を巡り始めたのである。


彼女の頭の中にはネロのことなど完全になくなっていた。





「本当に金魚すくい初めてなのですか?とてもうまいですね」


「昔から天才肌だったからね。まあこれくらいは朝飯前だよ」


アテネが屋台の食べ物に夢中になっているころ、ネロとラシャは金魚すくいをしていた。


確かに僕は初めてにしては金魚すくいがうまかったが、そんなことはどうでもいい。


僕はいまだかつてないほど女性との距離が近いんだ。


どうしよう、心臓がバクバク鼓動するのがわかる。


そのうち口から出てくるんじゃないかっていう勢いだ。


おそらく今僕よりも幸せな人間はいないだろう。


「おい、ラシャじゃないか。俺の誘いは断ったのになんでこんなところにいるんだ?」


そんな僕らのデートに水を差してくるやつがいた。


「別に私が誰とお祭りを楽しもうと勝手でしょ。用がないのなら私たちはもう行くわよ」


僕が振り返るとそこにはいかにもゴロツキという容姿をした奴らが僕らのすぐ後ろにいた。


「うーん?なんだそのちっこいひょろがりは?まさかこんな奴と回るために俺の誘いを断ったのか?」


そう言うとゴロツキたちのリーダーであろう男は僕に一歩近づいた。


ゴロツキたちはいかにもチンピラといった感じであるがこの男だけはちょっと違った。


言葉遣いは乱暴なんだが身なりはなかなかきれいであるし、なにより節々から育ちの良さがにじみ出ている。


「おまえ、名前はなんて言うんだ?」


「僕はネロだよ。おっさんは?」


あっやば。無意識にあおってしまった。


男は平静を装うとしているが明らかにキレていた。


「坊や。俺のことを知らないとはいったいどこから来たんだ?


俺の名前はマイケル・フーシェだ」


するとラシャがそばに近づいてきて耳打ちした。


「この人は共和国のNo.2の息子なの。悪いことは言わないから騒ぎは起こさない方がいいわよ」


「おいラシャ。なに俺についてあることないこと言ってるんだ。どうせ俺の親父の事だろうけどあいにく俺はそんな卑怯者じゃない。」


マイケルは僕の方を見て指をさした。


「明日港の近くの浜辺で大会があるんだ。お前は見所がある。どうだ参加しないか?」


ラシャがまた僕に向かってささやいた。


「承諾してはだめよ。あの人のことだからみんなの前であなたのことをいたぶるつもりよ」


確かにそのとおりである。いくら僕でも危険なことくらいは分かる。


しかし、虎穴に入らずんば虎子を得ずということもある。


「わかった。お前の言う大会とかいうのに参加するよ」


「確かに聞いたぞ。では、せいぜい明日を楽しみにしておけ」


そう言うとマイケルとゴロツキたちはどこかに消えていった。


「どうしてあんなこと言ったの。あの人は直接的なことはしないけど必ずあなたをコテンパンにしようとしてくるわよ」


「大丈夫。それに君といる限りあいつとはいつか戦うことになるだろうし、早いに越したことはないよ。僕は君と離れたくなんかないからさ」


ラシャはそれでもまだ心配そうな顔をしていたが、やがて僕を見据えてこういった。


「たしかにあなたとあの人はいつかはそう言ったことになると思ってたわ。でも、こうなったら私はあなたを応援する。幸運を祈るわ」


そう言うと僕らは明日に備えて休憩するということになりラシャと別れて帰路についた。


気付くと横にアテネがいた。


「なんでそんなに険しい顔をしているんだ?それより、この焼きそばというのはとてもおいしいぞ、食べてみろ」


アテネは満面の笑みで僕に焼きそばを渡してきた。


「お前は変わんないな」


僕はなんだか安心した。






時間は戻って昼、ネロがまだ小麦畑にいた頃


半島からはるか東のある都市にある国からの使者がやってきていた。


この都市にはネラル教の総本山があった。


そして、その教会の一室にて一人の男がグリゴリー3世他、教会の司教たちの視線を集めていた。


「では神聖アナトリコン皇帝オルドーからの親書を提出いたします」


そして、男の持っていた顔四つ分ほどありそうな分厚い本が教皇に渡された。


「そのうえで、我が皇帝陛下より提案を読み上げます」



地獄の窯の蓋が開かれようとしていた。


次回は火曜日の予定です。気分がよければ明日投稿します。

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