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カトリア戦記  作者: 山水香
共和国へ
14/21

分かれ道

翌日


昨日の豪華な食事会とは打って変わって僕らは郊外の小麦畑に来ていた。


「この黄金色を出すために我が国は建国当初から改良を続けていたのです。たとえば・・・」


僕の目の前ではでかくて長い鼻をしたおっさんが聞いてもいないことをべらべらしゃべっていた。


彼の言っていることは全く聞いていないが確かにこんなに広大な小麦畑は見たことがない。


なんともきれいな黄金色だ。


まるで昨日のラシャの髪のようにきれいだし、ふわっとした感じも彼女を思い起こさせる。


この小麦畑をラシャと例えたら、王国の小麦畑なんか大して洗ってもいない不衛生な男の髪の毛である。


ちょうど目の前でお経みたいに何かを唱えるこの男の髪の毛などまさにその通りだな。


いたたっ!


突然背中につねられた痛みを感じて振り返ってみると、セドリックの仏頂面がそこにあった。


目がちゃんと話を聞けと言っている。


しかたないじゃないか。だって話が脱線しまくっていて全然面白くないんだから。


王国の農業発展のためならまだ責任感はあるけどこんなどうでもいい話はまっぴらごめんだ。むしろさっさと終わってほしいくらいだ。



結局目の前の男の話は脱線に脱線を繰り返し。始まったのは早朝なのにもかかわらず、終わったのはお昼を越えていた。


今僕はセドリックやアテネ、その他さっきの男らと一緒に郊外から街に戻ろうとしている途中である。


しかし、ラシャとのデートの約束を夜にしておいてよかった。


珍しくセドリックがこの後用事があると言ってくれなければ間に合わなかったかもしれない。


さて、とりあえず街に繰り出してラシャのためのお土産を買いに行こう。


できる男はデートの時には何かプレゼントを持っていくべきだ。


といっても僕もデートなんて初めてなんだけど。


昨日は柄にもなく緊張してしまった。デートの誘いも本当に心臓が飛び出るかと思ったくらいだ。


とはいえ承諾してもらえたのだ。後は完璧なエスコートをすればラシャも僕に惹かれるに違いない。楽しみだn・・・


「おい気持ち悪い顔をしながらどこに行っている?お前はこっちだろ。」


ふいにセドリックが僕を妄想の世界から現実世界に引き戻してきた。


「何言ってるの?街に戻るんだからこっちに決まってるじゃん。」


セドリックが行こうとしているのは街から少し離れた山への道だった。


セドリックは何も言わずにこちらにやってきて僕の頭をつかんだ。


「すいません。ちょっとあの山の上に大使の親類がいるらしいのでそちらに挨拶してから帰りたいと思います。


ああ、護衛は大丈夫です。


何分浮世を嫌う人なので大人数で行くのは気が引けるので。」


彼は先ほどの男や護衛の人たちにそういうと僕を引っ張りながら山への道を進みだした。


「痛い痛い。」


「うるさい。おまえが昨日の話を忘れていたのが悪いだろ。」


「ああ。そういえばそんな話してたね。」


実は昨日の食事会の後、セドリックが僕の部屋を訪ねて来たのだ。


彼はアテネを指さしてこう言った。


「そこの女の子は何者だ?」


彼はそれから今日食事会で起こったことを話された。お守りのことも。


そして僕も彼がアテネを見えることがわかると今まであったこと全てを話した。


「イメージが人間として具現化するなんておとぎ話でしか聞いたことがないぞ」


セドリックは動揺こそしていないものの、理解に苦しんでいるようだった。


「でも私は確かにここにいるぞ」


アテネは胸を張りながらそういった。


「追い出せ。こんなわけのわからない存在を置いておくのは危なすぎる」


「えっ?」


おそらくアテネはそんなこと言われると思ってなかったのだろう。


しかし、この男はこういったことに関しては昔からとことん無慈悲だ。


僕が昔みんなに内緒で飼っていた小鳥もうるさいという理由によってこいつによって森に返された。


確かによく考えればそのとおりなんだが僕はもうすでにアテネに対して情が移っていた。


まあ別に今の体ならそんなに気持ち悪くはないしいいんだけどね。


「別にいいじゃん。そんなに害になるようなことはしてないし」


「だめだ。お前の身にもし何かあったらそれはお前だけの問題じゃないんだぞ」


「でも僕はこの子といるの最近は楽しいし。なんか妹みたいな感じがしてさ」


「そんなのは関係ない」


「へー。セドリック君は僕が楽しみにしていたピラミッドが壊れていることを黙っていただけじゃあ飽き足らず僕の癒しまで削ぎたいんだ」


「なっ…ちがう!」


セドリックは明らかに動揺していた。


セドリックのせいではないし、もう怒ってはいないけどこの際だし利用しようか。


「ネロ・・・ありがとう」


隣でプルプル震えてたアテネは目を潤ませていた。


不覚にもキュンとしてしまう。かわいいなおい。


しかし、こいつにとったら生命の危機だから僕に感謝するのも当たり前か。


「・・・わかった。とりあえず明日その寺に行くことにしよう。そこで何か情報が得られたらこいつをここにおいてもいい。お前もついてこいよ」


「えっ僕明日デートの約束があるんだけど」


「そんなもん後回しだ」


「えーー」



・・・・・とまあそんなことがあった。


で、現在僕らは問題の寺に前にやってきたわけだ。


見たこともない木造の門の向こうにこれまた見たことない形の木造建築が門の向こうに見える。


しかしなんだろうか。いたるところから視線を感じる気がする。


気のせいであってほしい。


僕らが行こうかどうか迷っているところにセドリックがつぶやいた。


「そういえば、もう一つ気になったことがある。


お守りを渡してきた人はアテネのことが見えていなさそうだったんだ。」


セドリックの声は、どちらかというと気が進まないような感じに聞こえた。


しかし、アテネは違った。


「とにもかくにもここの人間に聞いてみないとわからないだろう。行くぞ」


そういうとアテネが率先して進みだし、僕らもそれにつられてアテネについていくのだった。


敷地に入ると、異様な気配はなくなっていた。


石畳になっている道を少し歩いていると不意に建物から誰かが出てきた。


「おや。平日に誰か来るとは珍しい。なんの要件ですかな・・・」


中から出てきたのは頭をきれいに剃っていて、変な服を着ている優しそうな顔の男性だった。


しかし、アテネを見るや否やたちまち鬼のような形相になり服の袖からお札のようなものをとしだしてこう言った。


「貴様、性懲りもなくやってきたのか。何回来ようとも、どんなに姿を変えようとも、私の目はごまかせんぞ。」


男が腕を振り上げるとお札からまばゆい閃光がアテネに向かって放たれた。


土曜日ぶりの投稿です。話を重ねるごとに雑になっている気がしたので改稿作業をがんばっております。

次は木曜日になると思われます。

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