ピラミッド
一行がカトリアをたってから数時間、共和国への道のりは順調であった。
「そういえばなんで共和国へ行くのに聖地に寄るの?」
「お前、一週間くらい前に言っただろ。なんで忘れてるんだ」
「あれそうだっけ?ごめんもう一回教えて。」
相変わらずのネロにセドリックは諦めたような顔をしていた。
「全く。
いいか共和国と王国の間には山脈があるだろ。
共和国が騎士団を派遣してくれている。
とはいえ、こんな大人数で峠を越えるのは危険なんだよ。
それにもし山賊なんかに襲われたら対処できないだろ。
だから迂回するために聖地に行くんだよ」
「なるほどー。まあ僕としてはピラミッドが見えるからそれでいいんだけどね。
ほんと楽しみだなー」
相変わらずネロはマイペースなままであった。
セドリックもそんなネロを受け入れてしまったようだった。
そして、セドリックはある疑問をネロに投げかけた。
「たしかピラミッドって英雄カエサルの墓なんだっけ?
今更だがそんなのに興味あるんだな」
途端にネロはとてもうれしそうな顔をした。
「実は昔から本や人から絶景だって聞いてたからね。
そんなに絶景ならいい詩が書けそうじゃん」
「やっぱりそれが目的か。たまにお前があの英雄の血を引いてるのか疑問な時があるんだよな。
確かにカエサルもお前みたいな黒い髪だったらしいが共通点それくらいじゃないのか?」
「失礼な。
僕のこのイケメンな顔、これもカエサルに似ているらしいぞ。
これでも昔は周りからカエサルの再来って言われてたんだ」
「自分からイケメンと言うとは、君はよっぽどの自信家なんだな。
そうでもなければ私もこんな姿にはならんか」
「自分からイケメンっていうとかナルシストだろ」
ネロはセドリックだけでなく話を聞いていたアテネに同じことを言われてしまった。
「うるさい。だって事実だろ」
「その自信家なところは間違いなくカエサル譲りだな」
「よかったな。似ているところがさらにあって」
「俺がお前だったらそんなところは似たくないがな」
二人から馬鹿にされたネロは心の中で叫んだ。
うるせー!!
俺の顔に自信持っても別にいいだろ!!
大体セドリックの野郎アテネの声は聞こえてないはずなのになんでこんなにかみ合ってるんだよ。
◇
そんなこんなで二日後、大使団一行は聖地まであと少しというところまで来ていた。
「あの丘を越えたあたりに聖地があるんじゃないか?」
「やっと到着か。いい加減馬の上にいるのも疲れたよ」
そういうとネロは馬の上で大きく伸びをした。
「一生見れないと思ってたからほんとに楽しみだよ。
やっぱりでかいのかなピラミッド」
「・・・・・・」
一行が丘を登ると確かに少し先に聖地アナトリコンがあった。
聖地に宿泊する準備ができた後ネロがピラミッドを見に行こうとするとアテネだけでなくセドリックもついてきた。
「なんでついてきたんだ。
さてはお前もピラミッドを見に行きたいんだろ」
「・・・ああ」
いつものように言い返さないセドリックに違和感を覚えながらもネロはピラミッドへの道を進んでいた。
「あれ?たしかここら辺にあるはずなんだけどな」
ネロは道中聞いたピラミッドまでの道を進んでいたが言われたところにあったのはがれきの山だった。
だれも言葉を発さない中、アテネがふとつぶやいた。
「・・・もしかして、このがれきの山がピラミッドだったんじゃないか。」
「え?これがピラミッドの?そんなわけないでしょ。」
ネロが驚いていると突然セドリックが土手座した。
「すまん。
実は同行した騎士団の人に聞いたんだがピラミッドはネルファ軍がやってきたときに破壊されていたらしい。」
「そんな…僕にはそんなこと言ってなかったよ。」
「俺が口止めしていたんだ。本当にすまん。俺も彼らに聞くまで知らなかったんだ。」
「てことは・・・僕はあの壊れてないピラミッドを見ることは…」
「不可能だ。・・・ネロ?」
セドリックが顔を上げると、ネロはショックのあまり立ったまま気絶していた。
騎士団・・・物語においてたぶん二度と出てこないので説明しておきます。現実世界において、特に聖地に向かう人たちの護衛を仕事の一つにしていました。間違ってたらすみません。物語に出てきた騎士団はそれを参考にしており、モーデンベルクが雇って王国に派遣していたという設定です。