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カトリア戦記  作者: 山水香
共和国へ
11/21

出発の日

「まったく…。行くなと言っても行く。何回目だ?」


「すいません」


カトリアの城、ネロの一室にて僕は目の前の男によって正座させられていた。


「俺は確かに明日から仕事があるからグラディウス山に行くなと言ったよな?」


「グラディウス山じゃなくて麓なんだけど」


「どっちも大して変わらん」


僕が言葉の揚げ足をとると、セドリックは怒ったようなあきれたような顔をした。


まちがいなく言うべきことではなかったけど謝ろうとは思わなかった。


僕の天邪鬼な部分が出ていることを感じてセドリックは諦めたようだ。


「まあ…今日はこれくらいにしておこう」


セドリックはそういうと改まって僕に話し出した。


「話は変わるが今日お前が共和国に行くことが決まった」


あまりに突然の話だったので僕は目が点になってしまった。


どういうことなんだろう?考えるより前に言葉が出ていた。


「え…。もしかして追放?」


「だったらいいがな。残念ながら違う」


よかった。考えうる最悪の未来は訪れなかったようだ。


というか残念ながらってどういうことだよ。お前には人の心がないのか。


僕というこんなにもかわいい存在をそんな目にあわせてもいいということなのか。


僕がそんなしょうもないことを考えているとセドリックはさらに続けた。


「お前は大使として共和国に向かうことになった。安心しろ俺も一緒だ」


「嫌なんだけど。というかまず大使ってなんなの」


本当になんなんだ?大使なんて職業聞いたことないぞ。


まさか体のいい厄介払いなんじゃないだろうか。


「俺もよくは知らんがその国で働く王国民の支援や共和国との外交をする機関らしい。


 とはいえ大体の仕事はお前の部下がするからお前は一日中遊んでいてもいいくらいだ」


「それって僕行く必要ある?」


あれ?これ本当に厄介払いというやつなのでは?


話の前半はまともなことを言っていると思ったが後半で台無しだ。


僕がそんな不安を抱いているとセドリックは言った。


「王国のメンツというやつだ。お前以外いないんだおとなしく行け」


「嫌だよ。共和国に行ったらグラディウス山に行けなくなるじゃん」


「つべこべ言うな。というか共和国に行ったら面白いものがいっぱいあるぞ。


 なんてったって世界中のありとあらゆる珍しいものがそこに集まるって話だしな」


セドリックの野郎、もしかして父さんに何か命令されたんじゃないのか?


いつもはこんなに僕に執拗に強制はしてこないぞ。


セドリックは僕が疑いを深めるのもお構いなしになおも僕を説得しようとしてきた。


「なにも一生共和国に居ろなんて言ってないんだ。


 それに、王族のお前が外国に行く機会なんかそうそうないぞ。


 これを逃したら一生いけないかもしれないぞ」


嫌そうな顔をしていたネロだったがセドリックのその言葉には惹かれるものがあったようだ。


外国に行く機会か。確かに王族なんてのは大体一生城での生活を強制されるのがほとんどだ。


正直言っていきたい気持ちはかなり膨らんできているのがわかった。


「第一、一年に何回かは帰ってこれるはずだ。


 そうだ、道中お前がずっと行きたがっていた聖地アナトリコンのピラミッドも見に行けるぞ」


そこでネロはとうとう顔を明るくした。


「えっ!ピラミッド見に行けるの?」


「ああ、共和国へはアナトリコンに寄らなければいけないからな」


「だったら全然行くよ!あ~ピラミッド楽しみだな。一度行ってみたかったんだよ」


「よしわかった。じゃあ俺は仕事があるから。あと出発は二週間後だ用意しておけよ」


さっきまでの嫌がり方が嘘のようにウキウキになったネロ。


 その様子を見たセドリックはやれやれといった顔で部屋を後にした。




そしてその二週間後


とうとうネロが大使として共和国に行く日がやってきた。


たくさんの王国民と国王、王太子、宰相以下の国王家臣たちが参列し、ネロら大使団のの出発を祝おうと駆けつけてきた。


ネロとセドリックは出発の時間まで馬から降りて休んでいた。


「あれから二週間毎日グラディウス山に行きやがって。少しはじっとできないのか」


ネロは出発までの二週間、アテネと一緒に毎日グラディウス山に登っていた。


「だってしばらく帰ってこれないんだもん」


「……お前らしいよ」


「ネロ。お前にこんな役目を任してすまない。


 だが変なことだけはするなよ。


 セドリック、弟をよろしく頼む」


二人が話していると王太子が近くにやってきてネロとセドリックにこう話しかけてきた。


「兄さんおれってそんなに信用ない?」


さすがに僕も少しは心が痛んだ。


僕ってそんな信用なかったのか。たしかにないのは知ってたけどこれほどとは思わなかった。


「王太子殿下お任せください。私の目の黒いうちはこの馬鹿にへまはやらせません」


「頼んだぞセドリックお前に王国の命運は託された」


「ねえ、そんなに僕ってダメ人間って思われてるの?」


ネロとセドリック、王太子がそんな会話をしていると国王が三人に近づいてきた。


「セドリック。余のバカ息子のこと、よろしく頼む」


「お父さんまで僕のこと信用してないの」


さすがに温厚な僕でも腹が立ってきそうになる。


いいんだぞ僕が行くのをやめても。たとえ史上まれにみる親不孝者になっても僕は構わない。


そんな僕の考えていることを知って知らずか父さんが僕に諭してきた。


「ネロ、お前を信用していないわけではない。しかし、人生とはいろいろなことが起こる。


もしお前にとって不幸なことが起こったとき、おそらくお前のそばにいるのはセドリックだろう。


なら、その時のためにセドリックによろしく頼むのは間違いではないだろう?」


「それはそうだけど…」


なんだかうまく丸め込まれた気がする。


「もしそうなったときは、こんな馬鹿にしてくるやつじゃなくてきれいな女の子がいいな」


「・・・そういうところだぞ馬鹿」


「ふっふっふ。ネロらしいではないか。


 これなら大使の役目も全うしてくれるだろう。せいぜい励め」


 そろそろ出発だ二人とも騎乗せよ」


「は!王国への一層の貢献をしてまいります」


そういうとセドリックは馬にまたがった。


ネロも何か言いたげだったが同じく騎乗した。


それを見届けると国王は二人から離れ、王太子もそれに続いた。


そして、壇上に立ち言い放った。


「では、大使団諸君。


 晴れの日も雨の日も嵐の日も挫けることのない諸君らの王国への一層の貢献を期待する。


 出発せよ!」


それを合図に大使団は進みだし、集まった民衆も彼らに祝福を送った。


「がんばれー英雄様!」


「風邪ひくんじゃないそ英雄様!」


「たまにはかえって来いよ英雄様!」



「ここ二週間毎日言われておるな英雄様。」


ネロの前に座っているアテネがネロにそう話しかけてきた。


「周りに人がいるときは話さないって約束だろ?頼むからそんな茶化さないでよ。


 僕だって嫌なんだから」


「まあまあ。共和国とやらに行けばそれもなくなるだろうよ。楽しみだな共和国」


「うん、それもそうだね」


こうして一行は共和国に向かって出発したのであった。


どうも木曜日ぶりの投稿です。ストックを作れる人ってすごいですよね。私は一生できそうにないです。

今日はあと二話は投稿したいと思っております。

定期的に誤字脱字、文のおかしなところを直していますが、気づいていないところもあると思うので報告してくれると本当にありがたいです。また句読点の使い方がよくわかっていないのでおかしなところがあればそれも指摘してくださるとありがたいです。


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