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カトリア戦記  作者: 山水香
王国の運命
10/21

王太子の決断

とつぜん大きな光が消え目を開けるとにそこには少女がいた。


ロングの青い髪で緋色の目をしておりさっきの変態とは似ても似つかないかわいらしい容姿をしていた。


しかし、さっきの変態と一つだけ同じところがあった。


全裸なのである。


「アウトアウトアウト!そこは一緒じゃなくていいんだよ!!」


ネロがそう言うと少女は先ほどより小さい光に包まれ、次の瞬間少女は服を着ていた。


「あーよかった。というか君ってさっきの変態?」


「そうだ。…ふむ、今ので分かったがどうやら私がこの姿になったのは君が原因らしい」


「どういうこと?」


「おそらく君はなぜか知らんがナイスボディな私よりもきれいな女性と一緒にいたいとでも考えたのではないか?」


「まあ、確かに考えたけれど。それがどう関係するの?」


「やはりな」


どういうことなのだろう?


確かに僕はあんな全裸でモラルのかけらもないような奴は嫌だと思った。


そんな男よりも気品があってかぐわかしいお嬢様の方がお似合いだと思ったのも確かである。


しかし、そんな考えただけで容姿が変わるものなのだろうか?


するとその少女は僕の考えを見透かしたかのように話し出した。


「さっき私は世界中の人間からのお前のイメージだといっただろう。


 しかし、そのイメージとお前の願いが競合した結果私のような貧相な姿になったようだ。


 その証拠に私はさっきまで服を着ていなかったが君が望んだことで今はこの通りだ」


そういうと少女はその場で一回転して見せた。


なるほどこの子が言っていることが正しいとすればあっているのかもしれない。


しかし濁流のように色々なことが起きたせいで頭の理解が追い付いていない。


とはいえさっきのような変態よりかははるかにましであるのは確かだ。


それに何かの拍子でまたあの変態になっても困るので追及するのはここまでにした方がいいのか?


そんなことを考えていたら思わず言葉として出てしまった。


「どちらにせよ僕はその姿の方がいいんだけど。


 でもあんな簡単なことで性別も変わるとはにわかには信じられないな。」


「たしかに君の言い分ももっともだ。

 

 しかし、そもそも私に性別の概念はない。


 君がさっき見たようにナイスボディだった私の姿には立派なち〇こがついていた。


 しかしそれは、そういうイメージを持たれていただけだ。


 現に私のからだに生殖機能は…」


「わー。!!!その姿でそんなこと言わないで!!!!」


「なにをそんなに恥ずかしがっているんだ?


 別にここには君と私しかいないだろう」


「たしかにそうだけど…」


でもなんだか釈然としないんだよな。


もっといろいろ聞いた方がいいな。


ネロがさらに質問しようとすると少女は話を変えた。


「そんなことより、ようやくまともに話を聞いてくれたな。


 いい加減君の名前を教えてくれないか?」


「ああ、僕の名前はネロだよ。そういえば君は?」


「私か?私に名前はない。


 何しろ数日前に誕生したばかりだからな。


 せっかくだから一緒に考えてくれるか?」


そういうと少女はキラキラした目をして僕を見た。


断ろうかと思ったがまぶしい目を向けられて断るに断れない。


ちくしょう。さっきまであんなごつい体だったはずなのにこの変わりようは何なのだろう。


しかたない。断っても執拗にねだってきそうだし考えてやるか。


それに頼られるのというは悪くないものである。


最近は僕のことを頼ってくれる人もいないからな。


僕が自分でも悲しいと思うようなことを考えていると少女は厚かましく注文を付けてきやがった。


「私としては筋肉に関係のある名前にしたいんだが」


「あんまりそんな名前ないでしょ」


こいつの筋肉への執着は何なのだろう。


頭の中筋肉で埋まってんのかな。


そもそも僕の思いが容姿を変えたのだから思考ももっと変わらないものか。


例えば僕みたいな文化人的に変わったらいいのに。


うーーん


ネロはしばらく考えて1つの名前をおもいついた。


「そうだ。僕が戦で勝ったことによって生まれたんだから・・・アテネはどう?あの戦の女神の」


「なるほど戦の神か、気に入った。ではこれから私の名前はアテネだ」


そう言うとアテネは満足げな顔を見せ、あたりを駆け回り始めた。


全く薄情な奴である。


とはいえこれでやっと僕を煩わせていたものがすべて消えた。


そういえば夢中でやってきたがグラディウス山に来たんだ。ちょっとくらいゆっくりしても罰は当たらないだろう。


今日は詩を作る気力なんてないけどたまには景色だけを楽しむのも悪くない。


あれ?なんか忘れているような・・・まあいいか。


そうしてネロもやれやれといった顔でさっき座っていた場所に戻りグラディウス山の景色を再び楽しみだしだのであった。




時を同じくして首都カトリアの城の国王の部屋にて


そこには王太子殿下以下国王の重臣らが国王のもとに集っていた。


重臣らは国王のベットを囲むように並び、宰相が国王に会議の結果を報告していた。


「……以上が十字軍との講和の内容にございます。


 また、ヨーゼフ伯爵改め辺境伯殿から宜しくお伝えくださいとのことでした」


「うむ、ご苦労であった。余は講和の内容に異論はない。報告は以上か?」


「いえ、それともう一つ。これはオラニエ共和国からの提案なのですが。


 我々の一存では決めがたく、陛下に裁可を仰ごうとお願いしたく存じます」


「なるほど、道理でこんなにも重臣共がやってきているわけだ。


 内容はどういったものだ?」


「はいそれが共和国からの同盟の打診でして・・」


さかのぼること数時間前


「わかりました。今日の仲介のお礼とは言ってもなんですが聞きましょう」


「ありがとうございます。


 まあ知っているとは思うんですけど、


 うちは東方の都市国家とロンバルキア同盟というのを組んどりますねん。」


モーデンベルクはそこで一度間を置き、もったいつけたように再び話始めた。


「でまあここからが本題なんですけど、


 この前の会議で王国に加盟を打診しようかっていう話になりましてね。」


あまりに予想だにしなかった事に、王太子以下重臣たちは驚きを隠せなかった。


「もちろん今ここで返事はできませんでしょうから二日くらい返事は待ちます。


 それまでわいはこの国におるんで」





「・・とのことでした」


「なるほど。具体的な内容は何か言っておったのか?」


「はい。モーデンベルク殿王国が同盟の打診を受諾した暁には同盟国としての優遇のほか、


 今後高騰が予想される穀物を今までの価格で王国に販売すること、


 王国の産業基盤への支援などを約束してくださいました」


「聞けば聞くほど良い提案ではないか。


 何か気がかりなことが?」


「はい。おっしゃる通りです。


 モーデンベルク殿は王国との同盟が相成ったとき、王国との関係を強化したいとのことでした。


 そのためにお互いに大使を派遣したいとのことです。


 それも向こうはモーデンベルク殿の次男を派遣するとのことで。


 もし同盟を受諾すればこちらもそれ相応の者を派遣しなければいけません。」


「・・・ネロか」


「さようで」


共和国というのは都市国家という商人などが政治を行う国家が大きくなったものである。


そしてモーデンベルクは共和国の指導部のリーダ。共和国内での立場は王様と変わらないものであった。


ざっくり行ってしまえば、向こうが偉い人を大使にするからこちらも身分が高い人を派遣しなければいけないのである。


「余にはあれと王太子以外子供がおらん。


 必然的にそうなってしまう。


 ・・・あやつに務まるか?」


「たしかにそれもございますがネロ殿下はこの前の戦争での噂が国内外やけに広まっております。


 共和国側に何かたくらみがあるとしてもおかしくはないと思われます。」


国王は少し考えると静かに言い放った。


「王太子。お前が決めよ」


突然指名された王太子は驚きながらも国王に反論した。


「しっしかし陛下。これはこの国の運命を左右する案件です。


 それを、若輩者の私が決めるなどできません」


「なにを言うか。


 私はもう事実上隠居したようなものだ。


 それに私はいつ死んでもおかしくないのだぞ。


 そんなことで私の後を継げるのか」


それを言われた王太子は何も言い返すことができなかった。


そしてしばらく部屋が静寂に包まれたあと王太子はひねり出すように言葉を出した。


「……どちらにせよ我が国は貿易のほとんどを共和国に頼っております。


 もし断ればあらゆる方法で報復を行ってくるでしょう。


 …共和国の提案を受諾します」


王太子は唇をかみしめながら答えた。


「うむ。余もそれしかないと思う。報告ご苦労であった。後の手続きは宰相に一任する」


「「「「「「「は!!」」」」」」」


かくしてネロは自分の知らぬ間に歴史の表舞台に立たされることになった。



英雄が歴史を作るのではない。歴史が英雄を作るのだ。   ヨシフ・スターリン


今日はこれで投稿はおしまいです。次回は土曜日になると思われます。

キリのいいところまで書いたらこんなにも長文になりましたが許してください。

また、モーデンベルクのエセ関西弁がおかしいと思った方はコメントなどで教えてくれるとありがたいです。

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