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アメリカン

作者: 西園寺歩

しほのかぞくはアメリカかぞく。とってもおもしろいぱぱとままが、がいこくごをたくさんしゃべってる。

「…みーとぱいが…」

「とぅもろーはどうだい。」

いつもたのしいアメリカかぞく。ままはいつもまふぃんをつくってくれるの。お友達がおうちにきたときもみんなもりもりたべて、にこにこえがお。みんなのままもたくさんありがといってて、しほもうれしい。

ぱぱはいつもわらってる。運動会のかけっこのときも、

「しほ、1番になるんだぞ。」って言ってくれて、

一位になったときはすごく喜んでくれた。だいすきだな。


私の家族はアメリカ家族。私の名前は米倉しほ。公立中学校に通う中学3年生。

近頃ずっと家に帰るのが苦痛だ。帰った途端、父親から「腐ったミートパイみたいな顔だな。もっと笑え。ハウドゥユウ?」と日課のウザ絡みが足取りを重くさせる。母は趣味であったマフィン作りをめっきりやめてしまい、最近は買ったウォーターサーバーをご近所さんに自慢をしている。いつからマフィン作りを辞めたのか考えてみると、しほが私立の中学受験に失敗してからだった。仲良かった友達も一緒に受験する予定だったが、お腹の風邪が流行っていたのか、当日無事に受験できたのはしほだけだった。

「絶対に合格しかありえないからな。」

そう言った父を裏切り、しほはわざと白紙の解答を提出した。この家が嫌いだ。


私の家族は米国家族。何をするにも、最高位を取らなければいけない。人生は競争だ。資本主義だ。だからどんなに頑張っても、親から褒めてもらえない。認めてもらうためには、ピラミッドの頂点に立つのみ。

「すごいなしほちゃん。何でもできるんだもん。」

違う。やらなきゃいけないのだ。

去年あった大学受験。しほと同じ大学の受験をしようとしていた子は、原因不明の腹痛により本来の力が出せなかったという。高校受験の時も同じく、しほだけが合格をもぎ取った。さすがに異常だ。全ての受験期に共通項があった。それは母の趣味の再開、そう、マフィン作りである。受験1ヶ月前ごろに、友達を家へ招待しお菓子として出されたマフィン。しほは今まで一度も口にしたことはない。これからも。私も家族みんな共犯者だから。

「しほちゃんたみたいにアメリカ式の教育だったら、私も優秀になれたのにな。」

しほは唇を噛み締め口にする。

「そうわね。なんせ1番になれるんだから。」


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