魔王様の場合
元ネタ。
『魔王様はクソザコナメクジ』
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「今日も平和やなぁ」
「そうですね」
ナメクジ然たる魔王と、側近の吸血鬼ラーミカは、城内をのんびり見回る。
会議や来訪の予定もなく、平和に過ぎると思われた日常。
そんな日に限って、
「またお前かラズタイ!」
「あっはっはー! ゆかいゆかーい!」
廊下の奥から上がった叫び声と笑い声に、魔王とラーミカが頭を押さえる。
「……とりあえず捕まえたって」
「承りました」
「あ! 穏便にやぞ! 穏便に!」
「……承りました」
若干不満そうなラーミカは、黒い霧の中に消えると、
「ら、ラーミカ様ー……。お早いお着きでー……」
「捕らえてまいりました」
悪戯妖精ピクシーのラズタイを掴んだ姿で戻ってきた。
「またかいなラズタイ。悪戯するなら事前に話したってほしいんやけど……」
「でもね! さっき厨房に材料運んできた人間の商人が、昨日は人間の街では猫の祭りで、至る所で猫耳を付けたり猫の仮装をした人間がいたんだって!」
「そないな祭りがあるんやなぁ」
「そんな面白そうなのを知らなかったなんて、ピクシーの恥だよ! だから今からでも取り返そうって思ったら、相談を忘れちゃってた! ごめんなさい!」
素直に事情を説明して謝るラズタイに、魔王は諦めに似た溜息をつく。
「まぁ次から気ぃつけてーや」
「魔王様!?」
「ありがとー! 次から相談するー!」
「まったく……」
主の言葉には逆らえず、ラーミカはラズタイの拘束を解いた。
「にしても猫の祭りかぁ。どないな事をするんや?」
「猫の仮装をしたり、猫の絵を飾ったりするんだってー! だから私もこんな風にー」
「えっ」
「あっ」
ラズタイの魔法が魔王にかかり、
「え、ワシ、どうなったん……?」
猫耳魔王が爆誕した。
「ぶふっ! ……ね、猫耳クソザコナメクジ様……!」
「そこに生えるんだ! おもしろーい! きゃはははは!」
「え!? ちょ、どないなってるの!? 自分では見られんのや! 鏡どこー!? 誰か鏡見せてェー!」
この叫び声をあげてしまったせいで、集まった者達の腹筋相手に無双してしまう事を、魔王はまだ知らない……。
読了ありがとうございます。
最近使い始めたタブレットに『スケッチ』という機能があるので、それで猫耳魔王を描いてみました。
そのせいで当日は過ぎてしまいましたが、後夜祭と思えばセーフセーフ(震え声)。
後一話か二話書いて、幕を下ろしたいと思います。
よろしければお付き合いください。