ヴィリアンヌの場合
元ネタ。
『平民いびりを命じたら女神と呼ばれるようになった公爵家令嬢と、計算高い腹黒王子はすれ違う』
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目が覚めたら、ヴィリアンヌは猫になっていました。
(何ですのこれは!)
訳もわからず、学園の中をうろうろします。
すると、
「何故こんなところに猫が……?」
リバシが猫となったヴィリアンヌを見つけました。
(こ、こんな時にリバシ殿下にお会いするなんて……!)
リバシはすっと手を伸ばすと、猫になったヴィリアンヌを抱き上げます。
「野良、にしては毛並みも良いし、人に慣れている……。誰かが飼っているのか?」
(あぁ! 駄目ですリバシ殿下! そんなに私の全身を撫で回さないでぇ……!)
「……瞳の色、少し鋭さがあるが気品のある顔立ち。お前は私の想い人に似ているな」
(想い人!? そ、それは一体誰なんですの!?)
「お前のように気軽に触れられたら良いのだが……」
(あああ! そんなに優しく撫でられたら、私、心まで溶けてしまいます……!)
「お前の飼い主が見つからなかったら、私が飼おう。名前は……、そうだな。想い人から取って……」
(だ、誰ですの!? あぁ、でも撫でられている感覚で、頭がぼうっとして……!)
「はっ!?」
ヴィリアンヌが目を覚ますと、そこはいつもの寝室でした。
慌てて身体を見回しますが、見慣れた自分の身体。
猫だった痕跡など微塵もありません。
「夢、だったのかしら……。そうよね。人が猫になるなんて有り得ないですわ……」
ヴィリアンヌは自分の考えのおかしさに少し笑うと、ベッドから起き出して朝の支度を始めました。
「ご機嫌よう、ヴィリアンヌ嬢」
「ご機嫌麗しゅう、リバシ殿下」
教室でリバシへの朝の挨拶を済ませたヴィリアンヌは、ふと朝の夢を思い出して、込み上げる恥ずかしさを慌てて抑え込みます。
その変化にリバシが気が付きました。
「ヴィリアンヌ嬢? どうかされましたか?」
「いえ、何でもありませんわ。それよりリバシ殿下……」
リバシに声をかけられ、混乱に拍車がかかったヴィリアンヌは、頭の中を回っていた単語が口から漏れるのを止められませんでした。
「殿下は猫、お好きですの?」
「……猫……?」
呆然とするリバシを見て、ヴィリアンヌは我に返ります。
「あ、いえ、何でもありませんの。失礼いたしました」
「……いえ、構いませんよ」
ヴィリアンヌが席に座ったのを見て、リバシも席に腰を下ろし、心の中で猛然と頭を抱えました。
(今朝は何という夢を……! 学園内に迷い込んだ猫がヴィリアンヌに似てる気がして、『ヴィー』と名付けるなんて……! しかし何故ヴィリアンヌはあんな質問を……?)
リバシは授業が始まるまで、疑問と恥ずかしさに支配されていたのでした。
読了ありがとうございます。
たまたま似た夢を見たのか、それとも同じ夢の中にいたのか……?
二人と不思議な猫のお話でした。
さて、今日はここまでにして、明日何かリクエストが来ていたらまた書くといたしましょう。
おやすみなさい。