フォロウと夢美の場合
元ネタ
冒険者仲間から追放された幻術師は、異世界転移者に新たな可能性を見出される 〜え、エイガって何ですか!? 僕に何をしろって言うんですか!?〜
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「フォロウ! 次の新作は、動物もので行こう!」
「ど、動物もの?」
また夢美は不思議な事を言い出した。
『ニホン』という世界から不思議な力で転移してきた夢美は、僕の幻術で『映画』というものを再現して、今や娯楽の代表格のようにしてしまった。
そんな夢美の言う事だ。
きっとまた何か意味があるのだろう。
「短くて良いんだけど、可愛い動物の仕草をただひたすらに流すの! 大人気コンテンツだから、絶対当たる!」
「えっと、こん、てんつ? よくわからないけど、どんな動物を出すの?」
「そりゃあ猫でしょ!」
「ね、猫!?」
僕は驚いて聞き返した。
猫なんて、可愛いと思う人いるのかな?
野良猫は、隙あらば人の食べ物を盗んでいく生き物だし、飼われている猫はほとんどが倉庫の鼠避けだ。
疎まれたり頼りにされたりはあっても、可愛いっていうのは……。
「あれ? この世界だと、猫って人気ない?」
「うん……。どちらかと言うと、食べ物を盗む泥棒か、倉庫を荒らす鼠を退治する衛兵みたいなものだから、可愛いって言葉はあまり合わないかな……」
「そっか。ペットとして飼う文化はまだないのかな」
「ぺっと?」
「愛玩動物。可愛がるためだけに飼うの」
「うーん、そういうのは貴族だけかなぁ……」
自分達の暮らしで手一杯の庶民には、余分な生き物を養う余裕はない。
そんな余裕が当たり前の夢美の暮らしていた『ニホン』は豊かな世界なのではないだろうか。
前に『ニホン』の話を聞いた時、夢美は、
「絶っっっ対に戻らない! 日本自体はいい国だと思うけど、あのブラックな職場を見たくもないから! 見たら火を点けるぐらいじゃ収まりそうにない!」
と怒れるオーガのような恐ろしい顔をしたかと思ったら、
「……それに今はフォロウがいるし、夫婦にもなったんだから、私はこの世界に骨を埋めるよ……」
と真っ赤になりながら言ってくれたっけ。
嬉しかったなぁ。
そこまで言ってくれる夢美のやりたい事はできるだけ応援してあげたい。
「ねぇ、『ニホン』での猫はどんな様子なのか教えてくれる? 僕の幻術なら再現できるかもしれない」
「ありがと! うーん、そうねぇ……。こうやって頭をこすりつけたり」
ゆ、夢美!?
教えるって、夢美が僕に実際にするの!?
「こうやって頬をすりすりしたり」
あああ!
上着越しにもわかる頬の柔らかさ!
「膝に乗ったり」
僕の膝の上に、夢美が寝そべる!
「流石に全身では乗れないけど、感じわかる?」
それどころじゃない!
夢美の胸とお腹が膝に押し付けられて……!
「ん? どうしたの?」
身体を起こして、きょとんと僕を見つめる夢美……。
無自覚に誘惑するのはやめてほしい……。
妻にこんな事されて、冷静でいられる夫がどれだけいるだろう……!
「夢美……」
「え、あ……! ご、ごめん……!」
僕は相当物欲しげな顔をしていたのだろう。
流石の夢美も気が付き、顔を赤く染める。
「……ごめん、映画の話は明日にして、さ……」
「……う、うん……」
僕は全てを察してくれた愛しい妻の手を取って、寝室へと向かった……。
読了ありがとうございます。
この後は存分にお楽しみした事でしょうねぇ。
これは……! 血の涙……? 泣いているのは、私……(笑)?
次は『突撃女子高生vsつれない先生』シリーズよりお送りいたします。
次話もよろしくお願いいたします。