赤須璦と洲縁善哉の場合
『後輩ちゃんの恋愛講座』
https://ncode.syosetu.com/n4647gv/
より。
「先輩」
「何だい赤須後輩」
「むぅ、先輩意地悪です」
赤須と付き合う事になり、名前呼びにしたいと言ったのは赤須からだったが、呼ぶたびにめちゃくちゃ照れていたので、先輩呼びを復活させたのだった。
俺も正直助かってるけど、それを言うと間違いなくからかってくるだろう。
これまでも散々からかわれているんだから、このチャンスを逃す手はない。
「それはさておき、今日何の日だか知ってます?」
「二月二十二日……? わからん。何だ?」
「猫の日です」
「猫の日……? あぁ、にゃんにゃんにゃんってことか」
「そうです」
全然知らなかった。
というか、先週もらった赤須の手作りチョコに見合うお返しを考えていて、それどころじゃないんだ。
「という訳で、こんなのを用意しました。じゃじゃん」
「……ネコミミ?」
赤須が取り出したのは百均で売ってそうなネコミミだった。
……何だろう。嫌な予感しかしない……。
「最初は私がこれを着けて先輩をからかおうと思っていたのですが……」
ぐえ! 地獄!
「おちょくられて腹が立ったので、先輩に着けてもらいます」
ぎゃあ! もっと地獄!
「一枚写真を撮るだけですから。さぁ覚悟を決めて」
「嫌だ!」
「嫌なら構いませんよ? この素敵な涙写真が部活のメンバーに共有されるだけですから」
「まだ消してなかったのかよそれぇ!」
右手にネコミミ、左手に携帯を持つ赤須が、悪魔に見える……!
「ヒゲは油性ペンで描きましょうねー」
「やめて! 俺が悪かったから許して!」
まったく先輩ったら。
乙女心を全然わかっていないんだから。
……本当は猫耳着けて、冗談っぽくくっつきたかっただけなのに……。
先輩がそのつもりなら、思いっきりからかっちゃおう。
そんなに急いで恋人っぽくいちゃいちゃしなくてもいいもんね。
読了ありがとうございます。
初手から甘くてすみません。
ちなみにこの二人、キスどころかまだ手も繋いでいません。
璦が奇策に出たのも無理ない事……。
次は『悪魔の力で極悪無双 〜契約者がこんな性悪なんて聞いてない!〜』でお送りいたします。
よろしくお願いいたします。