第2話 Title
現在、私は様子を見に来た侍女の足にしがみついていた。
侍女はあの後すぐに両親に報告に行ったみたいで、両親から何故目を離したのかと責められているようだった。
私が隙を見てやったので侍女に責任は無く、彼女を庇う事でこの罪悪感を払拭したかった。
私が足にしがみついた状態で「やだ!」とか「ダメ!」とか言っていたら両親が折れてくれて、侍女は厳重注意で済んだ。
逆に侍女が泣いて抱き付いて来たので、更に罪悪感が増してしまった……
因みに額の傷は母の魔法であっという間に治して貰った。
私も大きくなったら魔法を使えるようになるのかな?
それから私には常に監視の目がつく事になり、行動を起こし辛くなった。
だが、私は諦めなかった!
両親や侍女達の一瞬の隙を見て硬い物に頭をぶつけに行った。
「どうしましょう……。神官様に見て貰った方が良いかしら?」
「私達が側から離れなければきっと大丈夫だろう。その内飽きてしなくなるさ」
両親がそんなニュアンスの会話をしていた。
完全に変わった子供だと思われてしまったようだ。
そして、私と両親の根比べが始まった……
3年後……
私と両親は教会に来ていた。
この世界の子供は5歳になると神様からの洗礼があり、称号と言うものを与えられるらしい。
周りの大人はその称号によってその子の進むべき道や将来何に向いているかを判断するらしいのだ。
……完全な余計なお世話である。
これにより、私の神様への不信感がより一層強まってしまった。
「ティアの奇行もこれで落ち着くと良いが……」
「私達はティアがどんな称号でも受け入れるから奇行だけは止めて頂戴ね」
両親からも最早奇行扱いである。
正しく奇行ではあるのだが……
そう、私達の根比べは3年間ずっと続いていた。
その間、神官様には悪魔憑きに認定されたり、高級な万能薬なんかを飲まされたりもしたが、勿論私の意思で行っているので意味は無かった。
逆にこれまで私を見捨てないでくれている両親に感謝しなければいけないだろう。
そして私の番になった。
実は私には兄と姉が居るのだが、彼等はそれぞれ『統治者』と『旋律を紡ぐ者』と言う称号だった。
両親はその結果に大いに喜び、兄は勿論父親の後を継いで次期当主になる予定で、姉は歌を唄う才能がずば抜けているため、今から歌姫としての将来が期待されていた。
次期当主の話をしたが、私の父親は国から与えられた領地を収める領主だった。
所謂、侯爵と言う身分らしい。
中世時代の知識なんて碌に無かったので両親の会話から得た内容である。
まあ、屋敷の大きさや庭の広さからして一般家庭では無いのは気付いていたけど。
そして、次女の私は兄や姉ほど期待はされていないため、気楽にこの洗礼の儀式に臨んでいた。
「ティア・ラウル・ハーベストの称号は『癒しの女神』ですな」
「まあ!凄いわ♪」
「きっと歴史に名を残す回復術士になれるぞ!」
「…………」
何で人間が女神なのよ……
この瞬間、神様が適当な性格である事が判明した。
それから私には家庭教師が付く事になった。
洗礼の結果的に回復魔法を覚えさせた方が将来が安定するとの考えだろう。
回復魔法と言えば母親が使ってくれている不思議な治癒の力だ。
あれを私が使える?
やった!頭ぶつけ放題じゃない♪
私の奇行は毎日のルーチンと化しており、当初の目的を見失っていた……