再会
私は薄暗く不気味な城にいた。おそらく化物達の生息地であるバルマーラ地方にある城だろう……。
少し離れたとこにあるのは謁見の間?
其処でクラヴィスが誰かと話していた。
『こちらご覧ください……ティア! おいで』
そして私が呼ばれ、私|《本体》が歩み寄りクラヴィスのとこへ向かった。
〖ほう……これは珍しい。剣人族か……〗
ゴオオォォォ……!
えっ!? 何これ?
クラヴィスはおぞましいと感じるけど、この人から物凄い圧迫感を感じる。直接対峙していないのに私にもヒシヒシ伝わり絶対に逆らうなと本能が言ってる……。
「白銀波、誰この人? 凄い圧迫感があるんだけど?」
「魔王ガディウスだ」
「魔王って200年前に大陸を震撼させた?」
「左様」
魔王ってこんな凄い圧迫感があるのね
〖……だが、果たしてそれだけで、反乱軍を止められるかな?〗
ゴオオォォォ……!
尚も続く二人の会話。この魔王が喋る度に地響きが起きていた。
『ご心配には及びません……実は更に既に最初の一手を打っておきました。此処に来る前にね。それにアルスエード一行はシャルスで終わります。アハ、アハハハハハハハハ……』
だからその笑い気持ち悪い。
それにしても反乱軍か……またホリンさんに会えるかな? 会えたら私を終わらせてくれるかな?
後から知ったけどホリンさんって今は反乱軍に所属してるのよね。
●〇●〇●〇●
ここがシャルスって場所かな? クラヴィスの転移魔法で飛ばされた私は大きなクレーターの上に立っていた。
たぶん大規模魔法が使われた跡地だろう。
「君は!?」
この人がアルスエードって人かな? 反乱軍の指揮官。
その指揮官に向かって一歩一歩私が近付く。後三歩って程で間合いってとこで私が消える。いやそう感じる速さで斬り掛かった。
ギーンッ!!
それを防いだのがホリンさん。良かったまた会えた。
「よぉ! また会ったな嬢ちゃん」
剣と剣を交差させたまま、ホリンさんが声を掛けてきた。
「………」
私は半歩下がると、躊躇いなく白い剣を横に薙ぎ払った。
「っ!!」
カーンッ!!
それを防ぐホリンさん。
「ちっ! 俺の声が届かなくなっているのか」
「ホリン!」
指揮官のアルスエードって人が剣を抜こうとする。
「此処は俺が引き受ける。先行けっ!!」
「わかった! みんな先へ進むぞ」
こんなどうでも良い世界など終わらせたい。そう思うようになってから、再びホリンさんに会うなんてなんて幸運なんだろう。
ああ…この人なら……。
それに私はホリンさんに前に生命を救われた。その上、無償で仕事が出来るようにしてくれた。この人なら……。
殺されても良い━━━。
貴方に拾われた生命、貴方になら……。
だって、生きている意味なんてないもん。ねぇ…エルク! もうそっちに行って良いよね?
カーン! キーン! カンカンギーンっ!!
流石ホリンさん。私のスピードに着いて行ってる。いや違うな。私は速いだけ。ホリンさんは一撃一撃が的確なんだ。
「やるじゃねぇか! 嬢ちゃんよーっ!!」
「………」
私は無言でホリンに斬り掛かる。噂で聞いたけどホリンさんは流石は大陸一、二を争うの剣豪と謳われている。
流石そう謳われる人だけあって会話しながら、私の剣技に着いて来ている。
カンカンカンキーンっ!!
適格に私の攻撃を防いでる。右から攻撃すれば左に剣を添えるだけ。上から攻撃すれば上に剣を構えるだけ。
全て見切られている。この人ならたぶん私でも敵わないだろうな。
カンカンカンギーンっ!!
「嬢ちゃんよー! 俺がわからないのか? ホリンだ。ダメなのか? お前さん、もう正気に戻らないのか?」
「………」
ホリンさんごめんなさい。私はもう全てを諦めているの。終わらせて欲しいの。
そして何合か打ち合うとホリンの眼付が変わった。本気で殺ってくれるの? ありがとうございますホリンさん。
そう思った瞬間には白銀波は弾き飛ばされていた。流石ホリンさん。
「終わりだ嬢ちゃん」
ホリンさん剣の切っ先を私の首元に当てる。もう良いよ……貴女も疲れたでしょう?
さあ、人思い……。
これで、これでやっとやっと……お願いします、ホリンさん。
「ちょっと待てーっ!!」
えっ!? この声……。
「てめぇ! ティアに何しやがるっ!?」
私の事を知っている。まさか……まさか……。
「エルク殿っ!!」
やっぱり。
誰が彼の名前を呼んだのかわからなかったけど、確かにエルクって。
「風よ! 力をっ」
彼が短剣を振るうと突風が巻き起こる。突風を巻き起こす特殊な短剣にようね。
「うぉぉー!!」
彼が突風でホリンさん吹き飛ばすと私の肩を鷲掴みに……。
「ティア、生きていたのか!? 俺だよ俺っ!! エルクだよ。わかるか?」
うん。勿論わかるよ。
≪エ、ル、ク≫
この声を届けるように私は強く望んだ。
「え、エ、ルくぁぁぁ~っ!!」
しかし私は彼の名を呼んだが苦しみ出す。私が私の意思に逆らったから……。
でも、エルクがいるなら、還らなきゃ……。
≪白銀波! 私、私…本体に戻りたい……力を貸してっ!!≫
私の心の世界で叫ぶ。
≪御意! では汝よ…強く望むのだっ! ≫
白銀波は応えてくれた。
強く……私は本体に還りたい……貴方がいるなら。
「おい! どうしたティア?」
私を案じてくれる声がする。
「ティア大丈夫か? 確りしろっ!」
今、貴方の元へ……。浮遊する感覚を錯覚がする。私に戻ろうとしているんのがわかる。
≪ああ…生きていたの? ……なら直ぐに戻るから……≫
「あぁぁ…エ、ル、ク……ハァハァ……生きていたの?」
私は最後まで、私の言葉を言えなかったようだ。
「なんとか生きていたぜ」
≪嬉しいよエルク≫
「嬉しい……」
涙が溢れる錯覚がした。それに私が呼応して涙を流してるようね。箱では水で視界が歪んでるように映し出されていた。
目の前に光が見える。彼処まで行けば……。ああ……後少し。
だけど後少しだというのにクラヴィスのが声が響いた。私の足が引っ張られるような錯覚。
【どうせ、戻っても苦しむだけだよ…止めておきな】
この邪悪な声に私の足が引っ張られるような錯覚がした。
≪やめてぇ……あぁぁぁ……この声を聞くだけで……うぅぅ苦しいよエルク≫
「あぁぁ……え、る、く」
「おい! ティア!!」
エルクが力強く呼んでくれる。
≪もっと強く望まねば邪悪な力を打ち破るぬぞっ!!≫
白銀波も応援してくれる。だけど……。
【どうせ戻ったって、辛くなるだけだ】
クラヴィスの声が、先程より更に邪悪に満ちて響いて来た。
光が遠ざかる。後少しだったのに……。
やっぱり私には無理なんだわ。頬に雫が流れるような錯覚がした。私も大量の涙を流してるようね。
≪エルク…ごめんね……せっかく生きていてくれたのに≫
「あぁぁ……ご、め、ん、ね……ハァハァ……せっかく生きて、いてくれたの、に……うわぁぁ……っ!!」
【もう帰っておいで! 其処にいても苦しむだけだよ。今から魔法で回収してあげるね】
ダメーっ!!
私を連れて……行かない……で。
私は、もう強く想う事ができなくなっていた……。
あの声を聞いてるだけで、吐き気がする。おぞましい。気持ち悪い。苦しい。もう私はダメなんだわと感じた。
「待て、ティアっ!!」
引き止めようとするエルクがいるのに……。
「ご、め、ん、な、さ……」
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
エルク……弱い私でごめんね。貴方だけでも強く生きて……。サ…ヨ……ナ………ラ。
●〇●〇●〇●
『やってくれましたね……まさかティアと縁深き者の生き残りがいるとは……』
クラヴィスが忌々しそうに呟く。
『これはより強固に再調整して完全に心を破壊するしかないですね……。アハ、アハハハハハハハハ……』
止めて。貴方が喋ると気持ち悪い。
『さあ脱ぎなさいティア』
暗示をかけるのに何で脱がす必要があるのよ? 意味がわからない。
私が服を脱ぐ。そしてクラヴィスが双山を鷲掴みに。
『では調整をしますよ』
えっ!?
こないだより強い。
「あぁぁぁぁ……頭が割れる。いやぁぁぁ……」
「暗黒魔導士め、より強い魔力を流して来ておる」
「きゃぁぁぁ……」
苦しい。止めて。頭がおかしくなる。心を破壊するって言っていたけどこんな苦しいの?
でも、このまま壊れても良いわね。私はもう終わらしたい。
「我がより強く塞き止める。汝よ強く意識を持て」
余計な事しないでよ
「はぁはぁ……」
終わったの? 結局白銀波のせいで私は終われなった……。