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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死より導き者 〜生と死の神の物語〜

作者: 雨傘と日傘

 


 地上は明るく、命の喜びを感じられて好きだ。それに、今日は久しぶりの休みだ。



 のんびりと釣りを楽しむ、やはり釣りはいい。いつもならば大鎌を持ち、天界と地上、地獄を行き来しなければならない。



 僕の仕事は死神。顔立ちは平凡で二重目蓋にダークブルーの瞳、黒髪を短く切り揃えて首元から足首まである黒マントを羽織っている。死に行く魂を閻魔様の元へ案内し、審判が下された魂を天界又は地獄へと連れていくのが仕事だ。



 僕には向いていない仕事。




「ハァ……。」




 最近はため息が多くなった。兄の方が死神に向いている。お調子者でおとなしくしていられない双子の兄は、太陽神として天界にいる。よく兄は、天界・地上・地獄を行き来できる僕が羨ましいと会うたびに言ってくる。




 僕は兄の仕事の方が羨ましい。僕が連れてきた魂に新たな道筋を示し、生命を与えるのが兄の仕事。




 僕たち兄弟、天界の星屑から生まれ落ち無の神として10年閻魔様の助手を勤め上げた。10歳になる年、兄は生命の秘宝「新たな光」に選ばれた。僕は死神の宝石「永遠の闇」に選ばれ、その宝石は僕たちの体それぞれに宿っている。逃げる事や辞める事はできない。その体が滅ぶまで永遠にその役割は続く。



 兄は光輝く天界に住み、自由気ままに過ごしている。そして、魂達を導き、感謝・尊敬される。だが、太陽神の制約として天界から離れることはできない。



 反面僕は、自由に天界・地上・地獄を行き来できるが、嫌がる魂を無理矢理連れていく仕事が殆どでつらい思いをしている。感謝なんかされない。まして尊敬なんて夢のまた夢だ。



 そんな鬱々とした日々の中で、初めて閻魔様からお休みを貰えた。




 それは、昨日の天界での事だった。




「えっ、今なんとおっしゃったんですか?」




 僕は、閻魔様の前で首を傾げた。閻魔様は鬼の姿をしては居るが、とても優しげで顔も整っていて格好良い。性格も冷静沈着で大人っぽい。僕も見習わないといけない。



「翔、明日は休め。明日は天使達におまえの仕事をさせるから。」



 こんな事はこの7年間一度もなかった、長くつらい仕事続きで、僕の心は折れそうだった。ちなみに、僕たちには名前なんてものない。僕は周りから死神様、兄は太陽神様と呼ばれていた。天使達は兄を尊敬の眼差しで見ていたけど、僕の事は見下していた。閻魔様や兄の前では死神様と呼ぶが、居ない所では呼び捨てされひどい扱いを受けていた。それを知っていたのか知らないでいたのかはわかないが、ある日突然閻魔様が「私は、今日からおまえを翔と呼ぶぞ。いいな。」言われた。なぜか理由を聞いたが教えては貰えなかった。



「閻魔様でも……。天使達は嫌がるのではないでしょうか。僕……。仕事をします。」




 休みたいのはやまやまだが、天使達にまたひどい事をされるのではないかと怯え、僕は断りを入れようとした。だが、閻魔様は頑なに僕の断りをはねのけた。




「いや、翔は頑張りすぎだ。少し休め、これは命令だ。明日は天界に来てはならん。わかったな。」




 有無は言わせぬぞと、閻魔様の表情が険しいものに変わった。




「わかりました。明日は休ませていただきます。それでは、失礼します。」




 そう、僕が答えるといつもの優しい表情に戻る。




「よろしい。翔、何か困っている事はないか?」




 いつも、最後に聞いてくる言葉。僕はいつも「ないです。」としか答えた事がない。本当は天使達の事や仕事の事でつらい思いをしている事を話したかった。話してしまえば、心が少しでも楽になれるかもしれない。だが、そんな話忙しい閻魔様に話せる事ではない。



 僕はいつも通りの作り笑顔で「ないです。ご心配かけてしまって申し訳ありません。」と答え、少しワクワクとした気持ちを抱え休日をどう過ごすか考えながら、自分に割与えられた宮へ向かった。




 そう、僕の後ろ姿を閻魔様が心配そうに見ていたことを知らずに。




 宮に向かう前に兄の元へ向かう。兄と過ごしたくなった。寂しく辛いとき、元気すぎる兄の姿を見ると慰められる。兄の宮は天界の最深部にある。豪華な宮の中に兄はいた。丁度、魂に新たな道を与え、地上へと送っている最中だった。兄は地上への道を魂が通っていく姿を見送り、振り向いて僕見ると、まじめな顔が一気に明るく無邪気な表情に変わった。




「弟よ~、会いに来てくれたのか。兄はうれしいぞ~。」


 

 兄は大きすぎる声を出して僕に飛びついてきた。顔も身長も体型も一緒、違いは髪型と毛の色と瞳の色、後性格だ。兄の肩まである髪色も瞳の色も金色。僕たちはまるで光と闇。




 抱きついてきた兄の肩に手を置き、軽く押して離し目を合わせる。



「太陽神様、明日は一緒に……。」



 どこか行きませんか。と僕が言い終わる前に兄はムッと怒った表情で僕の顔を見つめて言葉を遮った。




「太陽神様だと!お前と私は兄弟だろ、誰も居ない時くらい、兄ちゃんと呼んでくれよ。」




 そんな兄を見て僕は唖然とし、笑った。




「ごめん、兄ちゃん。癖でつい……。」




 やっぱり、兄は面白い。こんなちょっとした事でムキになる。



「うん、それで良い。所で何か用事?」




 僕に椅子へ座るよう導きながら、言ってきた。




「明日、兄ちゃんは忙しいかな?一緒にどこか遊びに行かない?」




「ごめん、明日は天使達に湯浴みに誘われていて。あっ、でも……。」




 僕は、兄の言葉を最後まで聞かずに遮った。



「そっか。ごめん、いいんだ。又今度行こう。あっ、僕用事があったんだ。もう行くね。」



「えっ、もう……。わかった。またな。」



 僕は、兄に呼び止められる前に急いで宮を後にした。なんだか胸が苦しい。弟より、天使達の方が大事なのかな。黒い気持ちが心を支配する。

 自分の宮に戻り、地上へと行く準備をした。





 地上に降り立つ。川の流れが緩やかに流れ清々しい。やはり、森の中での川釣りはいい。川のそばで釣り糸を垂らしながら、仰向けに寝転がる。目を瞑り川音を聞くと落ち着いき段々と眠気が襲ってきて、僕は眠ってしまった。




「痛っ!」




 腹部に痛みが走り飛び起きようとしたが、起きあがれなかった。お腹の上に足が乗せられており、そこには僕をバカにした表情で天使達が見下ろしていた。




「し~に~が~み~、仕事さぼってなにしているだ。おまえの仕事がこっちに回されたんだぞ。閻魔様に媚び売ったんだろ。」




「違う!僕は……。うっ……。」




 ぐっと、お腹を踏みつけられ言葉に詰まった。



「今日は、逃がさないぞ。おまえの力を封じる魔方陣を展開したからな。どうあがいても、鎌はでないぞ。」



「やめっ……。うわぁぁ。うっ……。」




 5人の天使達に囲まれて、叩かれ蹴られた。暴力を受け、抵抗虚しく僕は意識を手放した。




 目が覚め気づいた時、手足に枷がつけられており、身動きがとれない状態だった。




 それにここはどう見ても地上ではない。暗く、ごつごつした岩に鬼達と以前僕が連れてきた魂達がいた。地獄だ。




 どうやら、天使達は意識を失った僕の手足に枷をつけ地獄に置き去りにしたみたいだ。こんな事今までされた事はなかった。


 


 どうしよう、試しに鎌を出してみようかな。鎌さえ出せれば枷を外すことができるし、地獄からも出れる。両手を合わせ合掌し、心を穏やかに静める。そのままの状態で上に勢い良く開くと鎌が出てくるはずだったが、両手の上にはなにも無かった。




「やっぱり、駄目か。」




 どうやら、力はまだ封じ込められているようだ。枷には蛇が這ったような紋様が施されていた。この枷で力が封じ込められているらしい。下を向き気持ちを落ち着かせ、これからどうしたら良いか考えようとした。




「あれ、死神様じゃないすか。」




 声がした方を振り向くとそこには、地獄の民の一角鬼がいた。



 いつも連れてきた魂達を引き渡す相手だった。助かった。枷を外して貰える。





「ああ、良かった。すみませんが、枷を解いて頂けませんか?」




「鎌はどうしたのですか?死神様。」




「ちょっと、都合が悪いのか出せないんです。だから……。」




「そうですか、なら丁度良かった。いつあなたを攫おうかと思っていたんですよ。」




「ふぇ?」




「やっと、この時がきた!死神の宝石があれば私が死神になれる。さぁ、私の元へ」




「なっ!やだっ!やめろ!!」




 鬼の右手が伸び、僕の首元をつかみ持ち上げられる。突然左手で、僕の胸を貫く。



「くぅ……。痛……い。」



 胸を貫かれた痛みではなく、魂を探られる痛みに涙がこぼれる。



「あったぞ。」



 その一言の後、鬼の左手が僕の胸から引き抜かれる。その左手の中には、黒く怪しげな光を放つ球体が握られていた。




「おお、これが永遠の闇。なんて美しい。」




 首元を掴まれていた右手を離され、地面に座り込む。その際、僕の黒髪とダークブルーの瞳が消え金色に変わった。死神としての力を失った。



 ハァ、ハァと荒く呼吸をし整えようとした。魂が……心が……、虚無に感じる。いつも鬱陶しく思っていた力がなくなったなのに、それなのに。



「さぁ、この宝石は宿い主を選ぶ。次はあなたの体を貰いましょうか。神様。」




 絶望していた僕は油断し、仰向けに突き飛ばされた。



「くっ。」




 背中を地面に打ちつけ、痛みに息が詰まる。首に鬼の両手が掛かり、締めあげられる。




「魂はいりません。その体から離れて貰いましょう。あなたの身体は私の物だ。」




「あっ……。や……苦しい。」




 肺が酸素を求める。目元がチカチカし、頭がぼーっとしてくる。もう駄目だと思った時、ふっと首に掛かっていた圧力が消え肺に酸素が入る。助かったと思った瞬間、鬼の右手が僕の胸を貫く。




「うわぁー!!」




 今度は魂を探られる痛みを通り越し、鷲掴みされる痛みに苦しむ。次の瞬間、僕の魂は体から引き抜かれた。そしてそのまま、鬼の体に取り込まれ、気を失った。



 気づくと、僕が立っていて見下ろしていた。




「神様の体って広いですね。ありがたく頂戴します。」



「うそだ。こんなのって酷い。くっ……。」



 僕の魂は鬼の体に閉じこめられていた。体の許容範囲が小さすぎて、魂が締め付けられる。苦しい。




「それじゃ、後少しの命、地獄の生活を楽しんでくださいね。ばいばい~。」




 そう言うと、合掌し開くと鎌が現れた。鎌で枷を外し、空間を切り裂いた。裂けた部分が広がり別の世界への入口が開いた。僕の体を奪った鬼が空間に入り、閉じられる。




「待って、うっ……。」






 僕は、地獄に閉じこめられた。







 あてもなく、地獄をさまよい歩いた。鬼の体は思うように動いてくれず、魂を締め付け痛みと苦しみを与えてくる。



「ハァ、ハァ」浅い呼吸を繰り返し、痛みと苦しみに耐えてきたがもう限界だった。足の力が抜け、体がうつ伏せに地面へと崩れ落ちる。




 苦しい。もう、駄目だ。魂の消滅はもうすぐやってくる。最初は閻魔様か兄が助けにきてくれると信じていた。だが、何時まで待っても誰も来なかった。来るはずが無い、僕ではない僕が天界に居るはずだから心配なんてされるはずがない。寂しい、魂が消える前に兄と閻魔様に会いたかった。僕はひとりぼっちでこのまま消えてなくなるんだ。なにも考えたくなくなり、目を閉じ消滅の時を待った。




 ふと、顔に息が吹きかかる様な感じがし、目を開けみるとそこには見た事もない大きく真っ白な竜が僕を見下ろしていた。




 逃げようにも、憔悴しきっていて体を動かす事ができない。




 竜の頭部が近づき僕の首元に鼻先が当たる。痛いのや苦しいのは嫌だった。もう楽にして欲しい。




「ひと……思いに……。殺……して。」




 そう呟き、意識を手放そうとした。その時、低音で響きの良い声が魂に響いた。




「友人の子を殺すなんて、出来るはずがない。かわいそうに体が魂を殺そうとしているんだな。今楽にしてやろう。」




 そう言われたような気がしたが、良く分からず僕は気を失った。




「し……ょう。しょ……う。翔……。」




 誰だろう。遠くで僕を呼んでいる。



 目をうっすらとあける。そこには僕が最後に逢いたいと願った兄と閻魔様の顔があった。僕はあぐらをかいて座っている閻魔様の膝の上で抱えられていた。




「目を覚ました。良かった!」




 勢いよく僕に飛びつこうとした兄を閻魔様が片手で防ぐ。



「こら!翔の魂が霧散してしまったら、どうするんだ。」




 その言葉を聞きながら、自分の両手を見ると透けていた。僕の体はなく、魂だけだった。



 天界や地獄では神々は、魂だけでは生きられない。魂を捕まえておける者の近くにいなければ霧散し、世界の一部になってしまう。そう、今閻魔様から離れれば、体ない僕の魂は霧散してしまう。



「翔、地獄で倒れていたおまえを精霊王が救って下さったのだ。」



「精霊王様?あの大きく真っ白な竜ですか?」




「そう、私の友人だ。精霊王がいつもの礼だと言っておった。」



「いつもの礼ですか?」



「ああ、そうだ。」



 閻魔様によると、僕が天界や地上界を出入りする時に精霊達も一緒に出入りをしているとのとの事だった。本当であれば天使達と共に行き来するらしいけど、サボってばかりいる天使達を待つより頻繁に行き来する僕を待っていた方が効率が良いらしい。




「それにしてもなにがあった。」




 僕は今までに起きた事を全て話した。思い出しながら話すことは悲しく辛かった。




「天使達が……。そんなことがあったのか。」




「閻魔様、何で……。」




(嫌われ恨まれているの?)と聞きたかった。僕が何をしたの。どうしたらいいの。もう、分からなかった。



 顔を伏せる僕の頬を閻魔様の右手が触れる。



「翔。おまえのせいではない。私がきちんと見ていなかったせいだ。翔が辛い思いをしているのには気づいていた。でも、どうしても翔から、話して欲しかったのだ。天使達は、私の前では尻尾を見せない。だから、罰することが出来なかった。許して欲しい。」




「閻魔様、天使達は私が何とかします。」そう言ったのはあのお調子者の明るい兄ではなく、今まで見たこともない真面目な表情をした兄だった。




「弟を守ることも出来ない者に兄を名乗る事なんて出来ません。どうかお許しを……。」



「無茶はするな。私が何とかしよう。それでも、駄目だったときは任せよう。」




「兄ちゃん。僕……。」 




 そう言った時、黒い光が天窓をすり抜け僕をめがけて飛んでくる。それは、死神の宝石「永遠の闇」だった。


「きたか。」



 永遠の闇が僕に届く前に閻魔様が、掴み止めた。




「永遠の闇よ。今、おまえの宿い主は魂だけの存在だ。体が無いままおまえが入れば、消滅してしまうぞ。」



 そう呟いたと、永遠の闇は閻魔様の手の中でおとなしくなった。




「持っていなさい。大丈夫、宿い主を失いたくはないから無理に、翔の中に入ろうとはしない。」



 閻魔様の手から、僕の手の中に移っても永遠の闇に変化はなく手の中に収まっていた。なんだか、ほっとした。自分の一部が帰ってきたような気がした。




「離せー!!」




 怒鳴り声とどたばたとした足音が聞こえてきた。その怒鳴り声が僕の声だった。まさか、僕の体を奪った鬼がくる。手が震え始め止めようにも止まらなかった。その時、僕の視界が真っ黒になった。閻魔様のローブが僕にかけられていた。



「翔、隠れていなさい。いいね。」



 閻魔様はそう言うと、入り口をまっすぐ見つめていた。兄も閻魔様にならい、隣で立っている。



 そうこうしていると、天使達に連れられて僕の体を奪った鬼が入ってきた。閻魔様の前に連れてこられる。



「あの子はどこだ。」


 

 ドスの利いた声が聞こえる。閻魔様だ。



 僕はローブの隙間から様子を見た。金髪の瞳と髪をした僕が青ざめた顔で閻魔様前に立っていた。




「何を言っているんですか、閻魔様。僕はここにいるではないですか。」と震える声で言っている。




「おまえはあの子ではない。正直に申せ。でないと、おまえに処罰を与えるぞ。」




 鬼の顔がただでさえ青ざめていたのにもっと青く変わった。閻魔様はどうしてこんな事言っているんだろうか。僕は閻魔様の膝の上にいるのに。




 鬼は観念したように項垂れ正直に事実を話し始めた。



「なるほどな。おまえは死神の体を奪い、魂を殺したんだな。残念だが、あの子は私の元にある。私の大事な一つの命だ。」



 そう言うと閻魔様はローブの上から僕の頭をなでた。



 そんな、閻魔様の言葉と行動に僕の心はうれしさとちょっとした恥ずかしさで一杯になった。



 その後、閻魔様によって鬼の魂は鬼の体へ、僕の魂は僕の体へと戻された。しばらくの間、僕は閻魔様の宮で療養する事となった。体と魂が無理矢理離された為、なじむのに時間がかかる事と万が一魂が体を離れてしまった場合、閻魔様が作った結界の中にいないと霧散してしまう恐れがあるとのことであった。



 天使達については、兄が言った一言で変わったのだ。「今度翔をいじめて見ろ。いじめた奴は、天界に居られない様にしてやる。」この言葉で今まであったいじめはなくなった。



 兄は僕にこう言った。「私は、駄目な兄だった。これからは立派に翔が誇れる兄なれるよう頑張るよ。」

 頼もしいけど、兄の性格を知っている僕としては、無理はして欲しくない。又、兄は僕のことを翔と呼ぶと言い出した。天使達の事を気にしていた僕への配慮なのかもしれない。

 天使達から復讐されないか少し心配だが、兄を頼るとしよう。




 療養中は閻魔様のベットの上で何もすることがなく、眠ってばかりいた。今は兄も閻魔様も仕事中だ。何もしなくていいのかなって考えてしまう。死神の秘宝もおとなしく、玉座に収まっている。たぶん閻魔様の脅しが利いているのだろう。僕の体と魂が一つになった時、永遠の闇はすぐに僕の中に入ろうとした。その時、閻魔様が永遠の闇を鷲掴みにし「今の翔に入ろうもんなら、魂が消えてなくなってしまうぞ。」の言葉でおとなしくなった。




 なにかすることはないか周りを見ていた時、閻魔様が扉を開けやってきた。そして僕が横になっているベットの上に腰掛けた。




「翔、どうだ気分は。」



「はい、もう大丈夫だと思います。」



「そうか、後3日経てば定着するだろう。そうすればここを出てもいいぞ。」



「はい。閻魔様今までありがとうございました。」



「礼はいらん。おまえが無事で良かった。後、あの一角鬼は私の方で対処した。もう気にしなくても良い。」



「どう対処されたんです?余り酷い事はしなで下さい。」



「心配はいらん。彼奴は天使の仕事をさせている。さぞ、忙しくしているだろう。」



 何か裏がありそうな含み笑いをしている閻魔様を見て、背筋がゾッとし、少しだけ一角鬼に同情してしまう。



「翔、変な心配はいらん。もう少し休みなさい。」



 閻魔様は、僕の頭をひと撫ですると扉を開け出ていった。もう少し休もう。目をつむると眠りに落ちていった。



 3日後、僕は永遠の闇を持ち、閻魔様の前に立っていた。



「翔。いいのだな。」



「はい、僕は死神に戻ります。」



 以前はあれほど、いやだった死神の仕事。だが、永遠の闇と離された時、僕の虚無に感じた。永遠の闇は僕の一部、離れて生きることはできない。ともに生きて行く。



 永遠の闇が僕の胸の中に入った瞬間、髪色が黒色に瞳がダークブルーに変わる。




「死神、ただいま戻りました。」



「すまない。つらい仕事だが又、頼んだぞ。」



「はい!任せてください。」




 僕は、死神。仕事はつらいけど、今は誇りを持っている。相変わらず、魂たちは僕をみると怖がってしまったり、罵倒したり、逃げようとする。でも、次があるんだ。これからの時を大事に生きて行ってほしい。その命その命に色々な時間があったと思う。その時間を精算し新たな命として生まれる。



 命を無駄にしないで生きて行く。命が尽きるまで生きていく事が生き物たちの最大の仕事。



 その命たちの終わりを迎え、次へと送り出すのが僕たち、神の仕事。



 僕は次の仕事へ歩いていった。







 後日、閻魔様に呼ばれ宮に行き入り口の扉を開けると、中には沢山の天使達が集まっていた。僕は、条件反射で出て行こうした。



「あ!死神様!お待ち下さい!!」



 二人の天使達がすぐさま近づいてきて、両脇に抱えられて連行されてしまった。



「は、離してください!!話し合いましょう!」



 手足をばたつかせ抵抗したが、虚しく沢山いる天使達のど真ん中に連行され立たされてしまった。天使達の視線が集まり、気まずい。



 僕は殺されるのでしょうか。とりあえず、謝ろう!それで、許してもらおう!



 頭を下げようとした時、天使達が動き出したのを見て固まってしまう。殴られると恐れ、構えた。



「「「すみませんでした!」」」




「ふぇ?」




 間抜けな声が出てしまった。天使達が頭を下げている。何が起こったのかわからないまま、固まっていると、閻魔様様が近づいてくるのが見えた。




「翔。彼等は君の仕事をして、大変さや君の存在の大切さを学んだようだよ。」



「はぁ?へぇ?どう言う事ですか?」




 閻魔様の話では、僕が魂と体を馴染ませる為に療養していた期間。その全てを天使達にフルの死神の仕事をさせていたようで、天使達にとってはとても辛かったみたいだ。後、天使達は僕が楽な仕事をして怠惰していると思っていたようで、その為僕は嫌われていたとの事。




「今までのご無礼すみませんでした!これからは、なんなりとこき使ってください!」




 まるでどこぞの組長になったみたいで気が縮む。




「いや、その……。出来れば仲良くしてくれたら……嬉しいです。」



「「「任せて下さい!」」」



「ひぃぃぃ!」



 そんな訳で僕には友達と言う名の舎弟ができました。



 終。


初めての作品である為、至らぬ所が沢山あったかと思いますが、最後読んで頂きありがとうございました。感謝感激です。

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