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ネルワルド王国

騎士が紳士だとは限らない件

作者: 北見深

続き。というか、延長線上の日常の一コマ。

奥深さ皆無ですのでさくっとお読みいただければ幸いです。


第二騎士団の騎士の結婚披露があった。


「なあ、アルフレッド団長殿。第一の方からも披露宴に出席してくれないか?」

拍づけの為、第一騎士団にまで声がかかった。

第二の団長は昔のアルフレッドの上司でもあった。

五つ上、・・・妻と三人の子供を持ち、貴族であるのに身分にとらわれぬ柔軟な思考を持つ騎士だ。

恩のある人だ。断れない。し、部下が行きたがる。


団員の方は良く知らないが、元は王都の庶民で相手の女性が末端でも貴族の御嬢さん。格差婚らしい。

嫁の実家に婿入りするそうだ。彼が侮られない様、数合わせに呼ばれた。

王家の近衛騎士。その団長が二名も列席するとなれば相手の親も一目置く。

呼ばれついでに自分の部下を数名連れて行った。独身連中を。


結婚の披露目は思ったより和やかで、借りた会場も小さく親戚筋や身内だけの温かさがあった。

第二の団長の思惑通り王家騎士団長を二名も迎えたあちらの当主は、列席の親戚に誇らしげに婿自慢していた。

ちなみに、嫁は婿に惚れ込んでいるらしく、始終いい笑顔で幸せを振りまいていた。


・・・誰か裸踊りでもして空気を台無しにすればいいのに。


甘い雰囲気のままお開きになり、消化不良の部下を引き連れ、アルフレッドは酒房を訪れた。



アイツの嫁の友達の誰が良かったとか。

そろそろ俺も彼女にプロポーズしねぇといけないかなぁ?とか。

アルフレッドの存在を忘れたように話に夢中になる部下。

連れて来た半数が恋人がいたことが判明した。

酒房の女性店員が騎士等に愛想を振りまく。

何故か酔っぱらい騎士の膝の上で酒の追加注文を叫んでいたりする。

アルフレッドは部下と少し離れた場所で座っている為か、注文を聞きに来るのは酒房の奥から出てきた老婆だったりする。・・・解せぬ。


・・・酔っぱらって浮気して恋人に振られればいいのに。




アルフレッドだって、人さまの結婚を素直に祝いたいと思っている。

だがしかし、





「今回こそは」

と、思ったのだ。

すっかり夜も更けた頃、王都の外れにて購入した家に馬で乗り付け、ひらりと降りる。

白い壁は僅かに月光に照らされて、青白く輝く。道を挟んだ向かいは商家の倉庫で庭を挟む対面にも蔵。こっちは貴族の持ち物だ。自家の背後は森林に囲まれていて王家領地で付近の住民も勝手に入れない。

ネルワルドは国境代わりの天然の森林に囲まれていて他国を阻む。

重ねて魔術師の『囲い』がかかっているから国境沿いだとて大仰な塀は無い。

特にこの地区は獣の守りもあり人家はまばらだ。

そんな所に居を構えたアルフレッドを他の騎士たちは、わざわざ人気のない地区に、国を守る為移り住んだ。国に仕える騎士の鏡だと思っている。


「ただいま。」


真っ暗な部屋に挨拶するアルフレッド。

彼の声に反応し、部屋のランプが灯る。


ただ。新居は静かな場所で、誰にも邪魔されず過ごしたいと購入しただけだ。


ため息一つ。

部屋に入ると彼の歩みと連動して点灯していく。


二番目だったか、三番目だったかの出会い?見合いだったか?の後で、先走ったアルフレッドが家を用意した。

完全に舞い上がっている兄を見て苦笑する弟の顔を思い出す。

彼はきっと解っていたのだ。

アルフレッドの結婚が失敗するのを。


可愛い。淑やかで、勤勉だと思っていた彼女の顔さえ今は思い出せない。


見合いし過ぎた所為だろう。

いつしか誰を見ても同じ令嬢の顔に見える。

色が少し違うくらいで・・・。


「彼女は違って見えたんだぞ?」


二客用意されたテーブルの椅子に腰かける。

反対側は当然無人。

屋敷に使用人の一人も置かないのは、この家が貴族の邸より規模が小さく、騎士の家としても標準の家族仕様だからだ。他の騎士も使用人を置かない者が多い。

アルフレッドの様に仕事が忙しければ、散らかりようもない。


リンネルの・・・・妻は明るく、積極的な女性だった。

庶民の出だったが、この際父も弟も何も言うまいと思った。実際そうだろう。


「『ごめんなさい』だと、最初から。」


何もない空間に呟く。我ながら情けない。

彼女との最後のやり取りを思い出す。


『え?レヴィエ様?』

酷く困惑した彼女の顔。結婚の許しをと、宿屋で働く彼女の元へ行った。

まずいという顔。

騎士隊服で、花束を抱えた俺の背を押しやるその姿も可愛かった。

恥ずかしいのかと思った。

『困ります。そのような格好で来られては、お客様が驚かれてしまいます。』

まさかの迷惑行為だったらしい。

『すまない。』

彼女に洗濯場の裏庭まで案内されて、場所が悪いがきちんと跪き花嫁に乞うた。


で、


ごめんなさい。だ。


そんな心算では、とか、貴族の奥様に相応しくないとか、遠回し過ぎて俺には解らなかった。

遠慮と思い、大丈夫だと説得していたら、増々困惑顔の彼女は覚悟したように深々と頭を下げた。

『申し訳ありません、レヴィエ様。私。・・・リンネルと結婚するんですっ!』


ああ、またか。


心の片隅で声がした。

その場は、どうにか取り繕って辞したのだと思いたい。たぶん、大丈夫だ。

何も覚えてないがな。

持ってきた花束は途中で捨てた。

上着の中に隠された妻に送る筈だった腕輪はまた質屋へ。

質屋の親爺とはもう無言でやり取りする中に。

別の客には「いらっしゃいませ」「またお越しくださいませ」といっているから、それは俺への無言の慰めだろう。


俺。妻問いの定番。宝石を散りばめた腕輪、しか持って行ってないからな!



アルフレッドは一階の簡易風呂で身体を洗って、上階の寝室に入る。

中央に鎮座する大きな天蓋付きのベッド。アルフレッドが三人寝ても余裕だ。

ヤケクソの様にそのベッドに突っ伏し、アルフレッドは寝た。



この家はアルフレッドの妄想が詰まった一軒家。

まだ見ぬ妻の為に建てたもので(購入は土地からだった)、どの部屋も彼の体格を考慮して天井も高いし、広かった


まだ、使用人も置いていないからやけにシンとしている。自然の音すら聞こえない防音式。


妻が寝相が悪くても大丈夫なベッド。もちろん夫婦生活も考えた大きさ。

天蓋が付いていれば、恥ずかしくないだろう。全体に防音を施したから、産まれた子供が騒いでも大丈夫だな。などと思った。

妻が子を授かったら実家から呼ぼうと考え使用人は実家からピックアップし、彼らには上手く行きそうになる度、報告している。

風呂も一階と二階は別仕様。循環と浄化を自然にできる魔術までかけたいい風呂なのだ。この規模の家で風呂場が二つというのも珍しい。

妻が園芸を好んだらと考えたそこそこ広い庭。今は、ただの雑草畑。

妻が料理好きだった場合を考えて。台所も、最新式の炎と光の魔術を内包し、風と水の二重構造の保冷庫も備えた。

未来の妻が料理上手でなくても使用人が使用するのだ。保存庫は今はほぼ空だが、結婚祝い用(自分で用意した)の酒だけは常備。

妻が働きたいなら通勤用の軍馬に乗せて毎日送ってもいい。


妻が(以下略)






家の真相を知る王太子と僅かな人物達は、ため息より涙をこらえたという。


短いかなと思ったり。いつかは書き直す事もあるかも。かもですが。忘れてそのままカモ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] アルフレッドの不憫さがひき立っている所(笑) [気になる点] 続きが定期的に欲しくなるところ [一言] はじめまして。とても面白かったです。 高身長ゴリゴリ真面目系が大好きなのであっという…
[一言] 彼の、ちょっとばかり先走りすぎてしまうとことも思い込みの激しいところも、全部まとめて受け入れてくれるような素敵な女性が現れることを祈ります
[良い点] アルフレッドが、不憫。。 良かったら、つづきが読みたいです。 面白かったです。
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