アイムソーリー -崩壊したJAPANー
ある日、賭博罪が無くなり、日本は崩壊した。
道を歩けば耳に嫌でも突き刺さる。黒く黒く染まった言葉が。
「俺は3000円」
「10000円で勝負どう?」
公園で遊ぶ少年たち。蹴っているのはサッカーボールではなく、人。
「払えないなら混ざってくんなよ、この貧乏」
「もうこいつとは絶交しようぜ」
金が日本を破滅に導く。
「賭け」により人生を狂わし、死を選ぶ者、犯罪を犯す者をこれまで何人、何十人と見てきた。
メディアは裏側の人間に圧力をかけられ、こういった地獄ともいえる事実を報道できずにいる。
インターネットは完全に規制され、ネットに接続した瞬間から電源を落とすまで終始監視される。
こういった現状を掲示板等に書き込もうとした瞬間シャットダウンされ、数日後、闇に葬られる。
権力を持たない人間は、何も打つ手が無い状態である。
「ありがとうございましたー」
コンビニエンスストアで買った菓子パンを食べながら友人の家へと向かった。
その間にも賭博は行われている。
「あの鳥が10秒以内に木から離れたら1000円な」
「『斜め前のおっさんはカツラ』に5000円」
汚い汚い汚れた言葉が、右から左へ、いつものように流れてゆく。
汚い汚い汚れた金が、右から左へ、居場所を求め彷徨う。
30分ほど歩いてようやく着くと、玄関でそいつは待っていてくれた。
「久しぶりだな。ま、あがれよ」
居間に案内されると古びた木で出来た椅子があった。
「そこに座って休んでろ。酒とつまみ、用意してくるから」
そう言われてその椅子に着席すると一瞬、「何か」が終わる感じがした。
だが、疲れていたので気には留めなかった。
これから日本はどうなるのだろうか。不安しかなかった。
「おう、お待たせ」
そんなことを考えていると一升瓶とピーナッツを手に友人はやってきた。
「さーて、今夜は飲むか」
「おう」
その時、そいつはどこか悲しげな表情をしていた。
それから、飲んで飲んで、飲みまくった。
崩壊した日本に対して愚痴を言い合った。
しばらくして友人はタバコを口にくわえ、言い放った。
「日本はもう終わりだな」
古びたライターでそれに火を灯し、続けてこう言った。
「お前のせいで」
その瞬間、座っていた椅子の肘掛けの下から手錠が見えたと思うと、私の手をガッチリと、捕まえた。
そして、私の体に2000ボルトの電圧が走った。
「うわあああ、ああ、ああああ」
私は、心の中で日本国民に謝罪しながら自らの死を待った。
子供の頃から総理大臣に憧れていた私。
とにかく支持を集めたかった。
導き出した答えは、賭博法を無くすということ。
日本は先進国の一つであるが、ギャンブルに対して厳しく取り締まっており
国民から不満の声があがっていたためだ。
それを利用するとみるみる支持を集め、夢を実現した。
「賭博法を無くします!」
それも、実現した。
END
あ、文才がない?ソーリー