初めての目覚め
俺は今、暗闇の中にいるようだ。
ここがどこなのかなど全くわからない。
想像すら出来ない。
そして何より体の動かし方がわからない、あの感覚がまだ続いている。
しかし、なぜだか不快な感じはしない。
むしろ居心地がいいと感じている。
なぜだろうか。
「ん〜〜!んん〜!ふぅふぅ。ん〜!」
若い女の声がする。
そして俺の視界は光に包まれた。
先程まで暗闇の中にいたせいで光に慣れていないので、この明るさは今の俺には害でしかない。
さっきの暗闇に戻りたい!
戻してくれ!
そんな俺の葛藤を他所に俺を軽々と抱き抱えたデカイ男。
とにかくデカイ。
デカすぎて怖い。
今から俺はこの男に何をされるのだろうか。
「よく無事に出てきてくれた!立派な男の子だな!これで家は安泰だ!はははっ」
「あなた、大声出さないで。ヒルちゃんが驚いちゃうでしょ。」
「おっと、そうだな。悪かった。テンションが上がっちまってな。お疲れアリー。今日はゆっくり休んでくれ。」
何を言ってるんだ、このデカブツは。
そしてそのデカブツと話してるのが、もう一人のデカブツ。
初めに聞こえた女の声の主だと思われる。
ここで俺は1つの可能性を思いついた。
というか思い出した。
俺、ほんとに転生したんじゃね?ということだ。
いや、状況的にそれしかないと思う。
だって、この2人のデカブツ俺のこと暖かい目でみてくるんだぜ?
これはあれだ。
我が子に向ける愛情の眼差しというやつだ。
昔、母親に向けられてたのと同じ優しさがある。
「ヒルちゃーん。よく生まれてきてくれたね。これから私達の家族になるんだよ。よろしくね。」
「うん。そうだ。家族だな。大きく育つんだぞヒル!」
そう言って2人とも満面の笑みを俺に向けてきた。
この人達が俺の異世界における両親なのだろう。
目が発達してないせいかぼやけてよく見えないが、愛情だけは伝わってきた。
しかし、ヒルという名前はどうなんだろうか。
俺は人の血を吸って生きていかなくてはならないのだろうか。
しかし、人を食い物にする、という点では間違ってはいないと思う。
「さてさて、無事に出産を終えることができてよかったですな。では、私はこれで。なにかありましたらすぐに呼びに来てくださいな。」
父親であろう男の腕の中で揺られていると、しわくちゃの掠れた声が聞こえてきた。
声からして老婆のようだ。
村の医者をやっているのだろうか。
今まで、家族の初対面を邪魔しないように黙っていたのであろう。
「ありがとうございました。いろいろお世話になりました。」
男がそう言うと、老婆は深く礼をして部屋から出て行った。
それから男は心配そうに女を覗き込み、時折「調子はどうだ?」と聞き、容態を心配していた。
一方の俺は、異世界に転生できたことを実感し、年甲斐なくワクワクしていた。
ちょっと叫びたい気分だ。
ほんとに俺が赤ちゃんなのかの確認も込めて全力で泣いてみよう。
「うぎぎゃゃぁぁあああああ!」
うん、いい声だ。
思ったより大きい声が出て満足である。
声を出したからか、急にどっと疲れが襲ってきて眠くなった。
なので俺は寝ることにした。
おやすみ。
「眠そうな顔も可愛いな。これは将来に期待できそうだぞ。」
「いい子に育ってくれると嬉しいわね。」
そんな両親の声を聞きつつ俺は、異世界で初めての眠りについた。




