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騙されヒルるん  作者: 鷹零
第1章 乳幼児期
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初めての目覚め

 俺は今、暗闇の中にいるようだ。

 ここがどこなのかなど全くわからない。

 想像すら出来ない。

 そして何より体の動かし方がわからない、あの感覚がまだ続いている。

 しかし、なぜだか不快な感じはしない。

 むしろ居心地がいいと感じている。

 なぜだろうか。


「ん〜〜!んん〜!ふぅふぅ。ん〜!」


 若い女の声がする。

 そして俺の視界は光に包まれた。

 先程まで暗闇の中にいたせいで光に慣れていないので、この明るさは今の俺には害でしかない。

 さっきの暗闇に戻りたい!

 戻してくれ!


 そんな俺の葛藤を他所に俺を軽々と抱き抱えたデカイ男。

 とにかくデカイ。

 デカすぎて怖い。

 今から俺はこの男に何をされるのだろうか。


「よく無事に出てきてくれた!立派な男の子だな!これで家は安泰だ!はははっ」


「あなた、大声出さないで。ヒルちゃんが驚いちゃうでしょ。」


「おっと、そうだな。悪かった。テンションが上がっちまってな。お疲れアリー。今日はゆっくり休んでくれ。」


 何を言ってるんだ、このデカブツは。

 そしてそのデカブツと話してるのが、もう一人のデカブツ。

 初めに聞こえた女の声の主だと思われる。

 ここで俺は1つの可能性を思いついた。

 というか思い出した。

 俺、ほんとに転生したんじゃね?ということだ。

 いや、状況的にそれしかないと思う。

 だって、この2人のデカブツ俺のこと暖かい目でみてくるんだぜ?

 これはあれだ。

 我が子に向ける愛情の眼差しというやつだ。

 昔、母親に向けられてたのと同じ優しさがある。


「ヒルちゃーん。よく生まれてきてくれたね。これから私達の家族になるんだよ。よろしくね。」


「うん。そうだ。家族だな。大きく育つんだぞヒル!」


 そう言って2人とも満面の笑みを俺に向けてきた。

 この人達が俺の異世界における両親なのだろう。

 目が発達してないせいかぼやけてよく見えないが、愛情だけは伝わってきた。

 しかし、ヒルという名前はどうなんだろうか。

 俺は人の血を吸って生きていかなくてはならないのだろうか。

 しかし、人を食い物にする、という点では間違ってはいないと思う。


「さてさて、無事に出産を終えることができてよかったですな。では、私はこれで。なにかありましたらすぐに呼びに来てくださいな。」


 父親であろう男の腕の中で揺られていると、しわくちゃの掠れた声が聞こえてきた。

 声からして老婆のようだ。

 村の医者をやっているのだろうか。

 今まで、家族の初対面を邪魔しないように黙っていたのであろう。


「ありがとうございました。いろいろお世話になりました。」


 男がそう言うと、老婆は深く礼をして部屋から出て行った。

 それから男は心配そうに女を覗き込み、時折「調子はどうだ?」と聞き、容態を心配していた。

 一方の俺は、異世界に転生できたことを実感し、年甲斐なくワクワクしていた。

 ちょっと叫びたい気分だ。

 ほんとに俺が赤ちゃんなのかの確認も込めて全力で泣いてみよう。


「うぎぎゃゃぁぁあああああ!」


 うん、いい声だ。

 思ったより大きい声が出て満足である。

 声を出したからか、急にどっと疲れが襲ってきて眠くなった。

 なので俺は寝ることにした。

 おやすみ。


「眠そうな顔も可愛いな。これは将来に期待できそうだぞ。」


「いい子に育ってくれると嬉しいわね。」


 そんな両親の声を聞きつつ俺は、異世界で初めての眠りについた。

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