神との決め事 前編
今、俺の目の前には1人の少女がいる。
綺麗な黒色をした髪を長く伸ばし、真っ白なワンピースに身を包んでいる。
目は大きく、ゆるやかに垂れており、濛々と輝く紫色の瞳はその少女が計り知れない存在であることを示している。
清楚ながらミステリアスさも感じられるこの少女こそ自称神様である。
「ん〜。どれから決めよっかな〜?」
神様は小首を傾げた。
…なにそれ。
かわいい。
元から圧倒的に容姿が整っていたのだ。
そんな子がこの仕草をして、心を揺さぶられないはずがない。
これで心が揺さぶられない奴は男の風上にも置けない。
しかし、俺は知っている。
女という生き物は毒を持っているということを。
そして可愛いものほど猛毒であるということを。
つまり、俺の言いたいことは
「男諸君!見た目に騙されるな!」
「えへへ。かわいいなんて〜。照れちゃうよ〜。でも私毒なんて持ってないよ〜?」
「あ、はい。ですよね。じょ、冗談ですよ。あはは。」
危ない、こいつが心を読めることを失念していた。
もしも、心を読まれて機嫌を損ねられたら何をされるかわかったもんじゃない。
だってこいつ一応神様だし?
自称だから本当か知らんけども。
「ん〜っと。じゃあ、まずはあっちの世界であなたが生まれる家の身分を決めちゃおう!どこがいいとか希望ある〜?ないなら私が勝手に決めちゃうけど〜?」
「そんなの決めれちゃうのか…。あ、おすすめとかあります?」
「ん〜。そーだな〜。貴族とか商人とかいいと思うよ〜?村人って手もあるけど、農作業って辛そうだしやりたくないよね〜?」
貴族か。
欲望と悪意にまみれた人間が溢れてそうだな。
騙し騙される世界。
そんな世界はお断りだ。
商人はありだけど、俺はもう、物の売り込みなんてしたくない。
あんなの会社にいる時だけで充分だ。
村人はいいな。
農作業は、自分と作物だけで完結する。
それに、愛情をこめてやると美味しく育つと聞いたことがある。
やりがいがありそうだな。
「じゃあ、村人でお願いします。」
「え〜?ほんとにいいの〜?わかった〜。」
すると神様は、先程取り出した紙にふにゃふにゃしたよくわからない記号のようなものを書き始めた。
「なんです?その記号?」
「これはあなたが行く世界の文字だよ〜。あなたも覚えないと不便だからがんばって覚えてね〜!」
「はぁ、なるほど」
自力で覚えろ、とのことらしい。
気を利かせて「あなたにも理解できるようにしておくね〜!」とかやってほしいものである。
神様なんだからできるだろ絶対。
「できるけど、文字覚えるのも転生の楽しみの1つだと思うんだよ〜。それを私が奪っちゃあなたに失礼でしょ!」
「そんな楽しみいらないですから、理解できるようにしてください。」
「いやだよ〜!だって手間がかかって面倒なんだもん。」
本音を吐きやがった。
面倒だからやらないだけらしい。
1000年に1度の事なんだからやってもいいだろそんくらい。
まあいいか。
こいつのやることなんて信用できない。
己だけを信じて生きていこう。
「じゃあ次決めよっか〜。あなたの種族決めちゃおう!」
決め事はまだまだあるらしい。
いつまで続くんだろうか。
早く夢覚めないかな?
はぁ…




