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東の果てのマビノギオン  作者: 秋月つかさ
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転入生たち


「……つまり、我が校の生徒にも『鬼』が混じっていると、そう考えているわけですか……」


 渡辺(わたなべ)(はるか)碓井(うすい)杜貴也(ときや)が、少なくとも片方は敵であることを知らぬままに、初めて言葉を交わし合っていた頃──────坂ノ上(さかのうえ)学院の学院長室では、今、渡辺(わたなべ)家の口利きで二日前に転校してきた「久遠寺(くおんじ)」の(せい)を持つ三人の男子生徒たちが、これから、この学院で自分達がやろうとしている事の許可を得ようと、学院長に詰め寄っていた。


 現在、坂ノ上学院の学院長職にあるのは、坂田(さかた)皐月(さつき)伯父(おじ)である坂田総司(そうじ)、54歳である。


 細身の長身、上品な口髭をたくわえた、見るからに「紳士」といった外見を持つ男で、年齢相応の白髪混じりの頭髪を撫でつけ(・・・・)、後ろに流している。


 眼光するどい剛健(ごうけん)の男だが、今は、出てもいない汗を自分でも自覚出来ず、しきりにハンカチで(ぬぐ)っている。


「あくまで、可能性としてです」


 答えたのは、三人の内でもっとも年上と思われる若者だった。


 玲瓏(れいろう)な雰囲気を纏った19歳の青年で、微笑をたたえた表情さえも、冷たく引き締まって、感情というものを感じさせない。


 凍りつくような印象を他者に与える美貌の持ち主だが、細い柳眉(りゅうび)の下の切れ長の瞳は、その雰囲気が仮初(かりそ)めのものだとでも言わんばかりに、情熱を秘めて吊り上っている。


 久遠寺(くおんじ)一樹(いつき)という名の彼は、現在、実質的な久遠寺「渡辺党(わたなべとう)」のリーダーである。


 あとの二人の内の片方、一樹が押す車椅子に身を預けている9歳の少年、久遠寺当麻(とうま)こそが、本来の意味での、家系的な「久遠寺渡辺党(わたなべとう)」の党主である。


 青白い肌、あどけない表情の、いくぶん痩せ細った少年だが、顔立ちは整っており、抜きん出ているとはいかないまでも、充分に、鬼を相手取って戦う、美貌の渡辺一族につらなる者、と呼ぶに相応しい雰囲気を備えている。


 当麻は生まれつき身体が弱かったが、自分の神力(しんりょく)も役立てて欲しいということで、無理を言って一樹に連れてきてもらったのである。


 残る三人目は久遠寺明日香(あすか)といい、他の三人と違って、(かたわ)らに、浅黒い肌の、金髪碧眼(きんぱつへきがん)の美しい少女を連れている。


 彼女は人間ではなく、鬼殺しの妖刀、「顕妙連(けんみょうれん)」が擬人化した姿だ。


 明日香(あすか)自身は色素の薄いハーフの少年で、彼のことを見鬼(けんき)が見たら、彼も「同類」かと思うほどの、中性的な美貌を有している。


 久遠寺一樹(いつき)とは腹違いの兄弟であり、「久遠寺渡辺党(わたなべとう)」の中では当麻(とうま)の次に年下であるため、他のメンバーからも常に「弟あつかい」されることに不満を持っている。そのため、()ねたような不満顔が、普段の表情として定着してしまったかのような印象だった。


健斗(けんと)聡美(さとみ)は?何でいねぇの?」


 明日香が、兄である一樹に、そっと耳打ちする。


 少し(わずら)わし気に眉をひそめたものの、一樹は、弟の質問に小声で答えた。


「二人とも、授業が終わるとこっちに来たので、(はるか)様の護衛に戻らせた」


「…………護衛とか、少し大袈裟(おおげさ)に心配しすぎじゃね?遥さまだって『鬼殺しの剣』を持つ、名門、渡辺家の見鬼(けんき)だろ?」


「だが、片方の腕を骨折中だ。念には念を入れねばな」


 坂田総司(そうじ)は落ち着かな気に室内を何歩か歩いた後、ウォーター・サーバーの中の冷えた水をコップに注いで、一気に(あお)いで、一息つけた。


「それで、明日、そのための罠をはると?」


 声と同時に理事長は、正面から一樹に向き直る。


「はい。学院長には、そのための許可をいただきたいのです」


「しかし……我が学院に、そんな…」


 次の語を()ぐまでに、学院長は、また一口、冷水をグイッと(あお)った。


「見鬼たちが『鬼追(きお)い』に失敗したのは、ほんの数日前の、たった一度きりだぞ!それも、ここから遠く離れた、(みなもと)の宗家の中でだ!」


 先程とは打って変わった、叩きつけるような口調は、学院長が実質、この学院に鬼が紛れ込んでいるわけが無いと叫び、訴えているに等しかった。


「ですから、確認をしたいのです。明日の朝、授業が始まる前に、何かしら理由を付けて全校生徒を講堂に集めて下さい。あとは見るだけで、『人』か、『鬼憑き』かを瞬時に見分ける力の持ち主が、我が久遠寺(くおんじ)一族には存在します」


「……噂に聞く、『神力(しんりょく)』とか言うやつか」


 絞り出すような学院長の声に、一樹は薄く笑って答えた。


 生徒の中に、人鬼(じんき)がいなければ、それで良し。


 だが、もし見つけてしまった場合は、どうするのだ?


 学院長は、ついにその問いを、一樹にすることが出来なかった。


「……わかった」


 と小さく答えたのは、一分近くを経過してからである。


 答えを聞くと、学院長室の扉はすぐに開いて、三人の渡辺党は、静かに退出していった。


 *   *   *   *   *   *


 一樹(いつき)に、遥の護衛に戻るよう言い渡された久遠寺(くおんじ)健斗(けんと)と久遠寺聡美(さとみ)は、言われた通り、急いで自分達の教室へと戻って来た。


 二人は遥と同クラスであり、それは当然、意図されたものである。


 終業ベルが鳴って、まだ、10分たらず。


 だが、近くを捜し回ってはみたものの、二人は遥の姿を見つけることが出来ない。すぐに、慌てて捜し回る羽目になった。


「いたか?(はるか)さま」


 久遠寺健斗は、心配で仕方ない、というふうに、声をうわずらせた。


 引き締まった、堂々たる体軀(たいく)の、線の太い容姿の持ち主である。遥とは、真逆のタイプだ。


 実直(じっちょく)そうな、太い眉の下の強い眼差しは、真剣に遥のことを心配している事を窺わせる。


「もしかして、もう帰っちゃったんじゃないの?」


 疲れたような声を出したのは、遥のもう一人の護衛役、久遠寺(くおんじ)聡美(さとみ)だ。


 大きい、あどけなさそうな瞳がキラキラしているショートカットの女の子で、その表情も、感情のままにクルクルと変わる。


「俺は靴箱も見てきたんだが、靴は、まだあるんだよなぁ……」


 この学校に転校してきた二日前、初めて会った渡辺(わたなべ)(はるか)は、自分たち「渡辺党(わたなべとう)」の存在を、決して喜んだようには見えなかった。


 むしろ迷惑そうだったが、健斗は、この、(はかな)く消え入りそうな印象の、見るからに弱々しい子供のような寂しさをたたえる自分達の主人(あるじ)を、守りたいと思った。


 守ってやらねば、と。


 そう心に決めたというのに、今日、イツキが「渡辺党」として、この学校の学院長に重大な用件で目通(めどお)りすると言うから、つい、そちらに行ってしまったのだ。


 目を、離すべきではなかったのかもしれない。


 しかし──────


「……なぁ、俺…って言うか、俺たち、そこはかとなく(・・・・・・・)、避けられてねぇかな?」


「う…実は、あたしもそれ、思った……『様』って呼び方が、良くないんじゃないかなぁ、とは思うんだけど……」


 健斗(けんと)聡美(さとみ)の二人だけに限らず、「渡辺党」は常に(はるか)に敬意を払えと、イツキに、しつこい程、そう言われている。


 それに異を唱えるように、聡美が考え込むような表情を作って、腕を組み、口を開く。


「でもさ、まだ会って二日目だけど、遥様……はさ、誰かを従えて(えつ)に入るタイプでも、そういうのが似合うタイプでもないよ。そんな気がする」


「ま、それはそうだな」


 と、健斗は、ここ二日間の、「童子切安綱(どうじきりやすつな)」を掌中としている同い年の見鬼の少年の素振りを想像しながら、頷きつつ同意した。


「とにかく、この学校は生徒の数が多過ぎるわ。それでイツキさんが、明日にでも、ここの校長に全校集会でも開いてもらって、生徒全員を一堂に集めてもらうように掛け合っているわけでしょ?そうすれば────」


「そうだな。それなら、この学校に人鬼(じんき)が紛れ込んでいるとしたら、お前なら一発でわかるな」


 そこから先は、俺や、イツキさんや明日香(あすか)の出番ってわけだ!と、健斗が、片方の(こぶし)を、もう片方の手の平に、パン!と、勢い良く打ちつける。


 だが聡美の表情は、途中から急に緊張を(はら)んで、健斗の背後の一点を見つめたまま、固まったように動かなくなった。


「どうした?」


「あ、あの人…頭に、光るツノが生えてるんだけど……」


「えっ⁉︎」


 (はじ)かれたように、健斗が振り向く。


 健斗の目には、光る(つの)なんて見えない。何故なら、有るはずの無い角を見ることによって、人の中に紛れ込んだ人鬼を見つけ出すのは、久遠寺聡美(さとみ)神力(しんりょく)だからだ。


「ど、どいつだよ!」


 ちょうど放課後の時間帯で、教室にも廊下にも、生徒は自由に行き来している。


 二人の視界に映る光景は、ちょっとした雑踏に近い。


「あいつよ!あいつ!」


 聡美が指を差すと、一人の男子生徒が、後ろ姿のまま、ビクリと反応した。


 短く刈り上げられた頭髪に、後ろ姿からでも充分にそれと分かる、武骨で体格の良い体つき。


 このような生徒は、この坂ノ上学院では、ほぼ間違いなく運動部に所属している。


 剣道部主将にして、全国個人戦3位の実力を持つ、升上(ますがみ)圭介(けいすけ)という生徒だ。


 その生徒は振り返らずに、後ろ姿のまま早歩きで何歩か移動し、すぐに走り出して、階段を駆け下り始めた。


「ヤバっ!気付かれた!健斗くん、決してアイツを視界から消さないよう気を付けて!」


 まだ転入してきて間も無い二人は「升上」という名を知る由も無かったが、二人の渡辺党も、発見した人鬼を追って駆け出す。


 追いながら、健斗はポケットからスマホを取り出し、素早く、画面を指先でスクロールさせる。彼等のリーダー格である久遠寺(くおんじ)一樹(いつき)連絡先(アドレス)をタップすると、二言、三言のやり取りの後、「やっぱり、『頭のツノ』が見えているらしい」と、事の経緯を手短に説明する。


 しかし────


「は?追跡中止?冗談だろう?」


 健斗が(いぶか)しそうに、眉間に太いシワを作った。


『俺か、明日香(あすか)抜きの状態で仕掛けてはならんと、最初に言っておいたはずだ』


「だったら、そっち(・・・)こっち(・・・)まで来てくれ」


そっち(・・・)が、何処に向かって移動しているのかがわからん」


「もっともだ。そいつは、俺にだってわからん」


『おい、健斗!』


「騒ぎにならんように処理すりゃいいんだろ?こんな機会を逃せるか!」


 通話は、健斗のほうから一方的に切られた。


「健斗くんも、神力使ってよ!そうすれば、アイツの足を止められるでしょ?」


 聡美が、声を荒げる。


「慌てること無いって。あいつ、校舎の外に出るみたいじゃないか。仕掛けるなら、なるべく人目に付きにくい方がいいだろ?早々と、俺とお前で一匹いただきだ!」


 追跡を続ける二人の予測通り、額から淡く光る角を生やした人鬼、升上(ますがみ)圭介(けいすけ)は、校舎から出て、人気(ひとけ)の無い、校舎裏へと向かっているらしかった。


 高等部の校舎裏は、あまり使われることの無い焼却炉がいくつかと、あとは、松林が広がるだけの寂しい場所だ。


 この時、追う方の二人は、自分達が、実は逆に対象に誘い込まれているのではないか?との疑惑に、等しく駆られてはいた。が、同時に、彼等「渡辺党」には、例えそうであっても敗北することは無いという絶対的な自負もある。


 それ以上に気がかりなのは、追っている人鬼に松林を抜けられ、その先にある赤レンガ造りの塀を跳び超えられ、外へと逃げられてしまうことだ。


 そうなってしまえば、当然、それ以上の追跡は断念せざるを得ない。


 人間の身体能力では、何の道具も使わずに五メートル近い塀を乗り越える事など、不可能だ。


「健斗くん、そろそろ仕掛けてってば。このままアイツに塀を飛び越えられたら、それこそ私達じゃ、もう、それ以上は追えなくなるわよ?」


「ああ、それもそうだ」


 ()れたような聡美に、済まなさそうな苦笑を返しながら、健斗が応じる。


 と同時に、健斗の両眼が、赤みを帯びた鈍い光をたたえ始める。


 その瞳に見つめられた途端、升上の体は激しく痙攣し、松林の中を二、三歩進んだと見るや、それが限界とでも言うように、ドサリとその場に倒れこんだ。


 追いついた二人は、升上のことを、覗き込むようにして見下ろす。


「よう、全く体を動かせない気分ってのは、どうだ?もっとも、喋る事さえ出来ないんだけどな」


「本当に大丈夫なの?急に起き上がってきたりしたら、私、心臓止まっちゃうよ」


「心配無いって。『鬼を金縛りにする視線』が、俺の神力だからな」


「イツキさんの話では、コイツ、今は呼吸も出来ないし、心臓だって動いてないんでしょ?金縛りどころじゃ無いって」


 久遠寺健斗は、その視線によって、鬼の全ての身体機能を停止させてしまうのである。


 この場に多々(たたら)家の渡辺党、朔夜(さくや)がいたら、健斗の神力を、さしずめ「念縛(ねんばく)」とでも称したかもしれない。


「このままコイツを見続けているだけで、その内、自然と息の根は止まる。楽でいいや」


「それにしても、高校に入学したら、途端に『俺』だもんなぁ。イツキさんの前では、変わらずに『僕』なのにさ」


「俺は、中坊の頃から『俺』だったって。イツキさんの前でだって……」


「え〜?そうだっけ?」


 初陣で、あっさりと鬼に勝利してしまった二人は、自然と口が軽くなっていった。


 が、「神力」という特殊な力抜きでは絶対に人鬼には敵わないことを知っているので、二人は、決して、横たわる升上から視線を外そうとはしない。


 そこに、風が吹いた。


 否。


 松の枝がザザッとと揺れたから、風が吹いたと思ったのかもしれない。


「ん?風が吹き出したか?」


「風?」


 視線を動かせない健斗に代わって、聡美が周囲に視線をめぐらす。


 また、ザザッと音がして、二人の一番近い所に生えている松の木の枝から、「何か」が落ちてきた。


 鬼の打った刀、妖刀「大通連(だいつうれん)」をギロチンの刃のように構えながら落ちてきたのは、碓井(うすい)杜貴也(ときや)だった。


 健斗の首が、人形か何かのように落ちる。


「え?…あ、あ……ウソでしょ、健斗くん…」


 ガクガクと震える聡美の、すぐ後ろで、神力による「念縛(ねんばく)」の呪縛から解き放たれた升上(ますがみ)圭介(けいすけ)が、大きく息を吸い込み、そして吐き出しながら、ヨロヨロと立ち上がってきた。


「うう、本当にコイツら、洒落にならん力を使いやがる…」


「油断のし過ぎだ、と言いたいところだが、これは仕方あるまい。『渡辺党』というのは、我々を倒すためだけに存在しているような奴等だからな」


 ガクガクと震え続ける聡美には、二人の人鬼の会話など、まともに耳に入ってなどいない。


 聡美からしたら、一瞬にして、状況がひっくり返ってしまったのだ。


 その上、近しい仲間の、信じられない死を目の当たりにして、ショックで完全に腰が抜けてしまっている状態だった。滲む涙で、視界さえロクに効かない。


「ところで、例の『分家(ぶんけ)の王子様』の始末は、つけたんですか?」


 「ついで」という様に、難なく聡美を羽交い締めにしながら、升上は言った。


「……そちらは、少し気が変わった」


「はい?」


「奴は、自分の『鬼退治の家柄』そのものに不信を抱いている。うまく持ってゆけば、仲間に加えることが出来るかもしれん」


 我々には無い、「見鬼」の目を持った仲間がな、と、杜貴也は付け加えた。


「見鬼の目を持つ仲間──────それって、必要ですかね?」


 言い終えた途端、杜貴也の強烈な視線の一刺しを浴びて、升上が(すく)み上がる。


 大量の冷や汗。


 升上は、ゴクリと唾を飲み込んだ。


「人の、潜在能力の全てを容易に引き出す事が出来る存在になれる──────ということで、お前は、鬼の容れ物にされることを大喜びしたな」


「共存共栄っすよ。これはこれで、悪くありません」


「……渡辺(わたなべ)(はるか)は、そう単純ではないだろう。少し、時間をかける」


「……ん?あれ?お前、震えてんのかよ?」


 升上には、渡辺党が鬼を前にして震える、という事が、自分でも首を傾げたくなるくらいに可笑(おか)しかった。


「やっぱり、貴方(あなた)達って……鬼なんですね…」


 ようやく絞り出しているようなか細い(・・・)声に、鬼の二人は顔を見合わせた。


「恐ろしいですか?」


 という杜貴也の声に、聡美は震えながら、声を絞り出す。


「せ、せっかく人間なのに、自分から人間じゃなくなったみたいだし……信じらんない…」


「そうですか。それはそれとして、あなたが升上(かれ)を急に指差した時は、私は本当に肝が冷えましたよ」


「健斗くんを殺して、私も殺して、この先、一体何人、人を殺すつもりなの?」


 声まで涙でぐしゃぐしゃ(・・・・・・)に濡れた聡美の声は、それほど明瞭に聞こえたとも思えなかったが、それに対する杜貴也の声には、温かみさえこもっていた。


貴女(あなた)も、私達を狩り出し、殺すために、この学校にやって来たのでしょう?」


「……」


「我々『人鬼』と、『渡辺党』による命をかけた真剣勝負、まずは我々に軍配が上がった。では、覚悟の方はよろしいか?あまりスマートとは言えないが、こうしなければ、逆に我々の方が狩られてしまいかねん」


 杜貴也の胸の内に、聡美から、他の渡辺党の人数と、そして、どんな神力を有しているのかを聞き出そうという考えが、無かったわけでは無い。だが、これ以上時間を費やして、他の渡辺党に、ここに来られるわけにはいかなかった。


 升上が薄笑いを浮かべて、そして、十月の松林の下に、二つの遺体が静かに転がった。




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