エントリー
「いいよ」
桜のつぼみが綻び始めた人気のない公園で、その少女は屈託のない笑顔で答えた。
「ちょっと待って。そんな簡単に返事をしちゃっていいのかい?」
「うん」
「まだ説明の途中なんだけど」
「魔法少女は憧れだったから」
いやいや。それにしたって二つ返事はないだろう。
僕の名前はクライン。高次元宇宙から派遣された魔法少女のスカウトマンだ。自分で言うのもなんだけど、このネコともイヌとも知れない日本語を喋る未確認生物に対して警戒心なさ過ぎ。少し心配になってきた。
「君は自分自身が置かれた状況を、正しく認識できているのかな?」
「魔法少女になって厄災と戦う」
「その厄災がなにか気にならないの? もの凄く怖いモノかも知れないよ」
「魔法でやっつけるから大丈夫」
そりゃそうなんだけど。
「一応規約と就業条件を話しておくね」
「シュウギョウジョウケン?」
「最近の小中学生は色々とうるさくて。あとからクレーム付けてくる子が多いんだよ」
「ふーん」
「十三週を一期として四期一年を勤めて貰う。登録は一期ごとに当人の意思を再確認してから更新する。全四期勤め上げれば、ボーナスとして願い事を一つだけ叶えてあげよう」
「願い事って? なんでも良いの?」
「さすがになんでもと言うわけには行かない。世界に影響が及ばない範囲のものに限る。第三希望ぐらいまで考えておいてくれ。一つぐらいは叶うはずだ」
「ふーん」
「原則二十四時間勤務。けど二十四時間四六時中事件が起きる訳じゃない。厄災が現れたとき、学業や私生活を犠牲にして貰うという意味だ」
「どのぐらい事件は起きるの?」
「起きないときは全然起きない。四期の間、全くなにも起きない時もある」
「それでも願い事が叶うの?」
「そういうことだね」
「なぁんだ。ちょっと拍子抜け」
「しかし一度事が起きれば、命が危険に晒されることもあるんだ」
「え? 死んだりはしないよね?」
「はっきり言っておこう。過去半世紀で二十九人の魔法少女が亡くなっている」
「二十九人も? 何人中?」
「魔法少女は全世界に常時六百六十六人存在する。それ掛ける五十だね。大雑把に言うと」
「えーっと、六百六十六かける五十? 百かけて二で割って……三万三千三百人? 一杯いるんだね! 三万三千三百分の二十九ってことは千分の一くらいか。ビミョウ……」
「厄災は弱いものから強いものまで様々。どれに当たるかは運次第。近年は状況に応じてチームを組んで戦うから、死亡事例はめっきり減った。ここ二十年は誰も死んでいない。どうだい、これでも登録できるかい? 一度登録すると最低一期十三週を勤めなければならない。その間の登録解除はいかなる事情があろうと不可能だ。本人の死を除いてはね」
魔法少女の資質は学力や運動能力の高さに関係しない。ただ一途である心、「シングルマインド」の高さによる。シングルマインドとは「何事にひたむきで、時として小事に大局を見失う幼さを残した感性」を言う。必ずしも長所とは言えないこの性質が魔法少女には不可欠だ。思い込みの激しい女の子でなければ魔法は使えないのだ。この条件に合致する女の子は数百人に一人。その中で実際に魔法少女になってくれる女の子はさらに限られる。当然ではあるが年齢制限があることも付け加えておこう。登録時において十一歳の誕生日から十四才の誕生日前日までと限られている。
マツナガ・ルイ。来月中学進学予定の十二才。この少女はシングルマインドの数値が抜きに出ている。魔法少女の選考も今年で半世紀を迎えるが、歴代最高値を検出したのだ。色白で儚げ、清楚で物静かな佇まいも申し分ない。死という言葉を耳にしても恐れる様子を一切見せなかった。彼女こそ魔法少女に相応しい資質なのだ。
一通りの説明を終えたあと、ルイが再び笑顔で答えた。
「わたしの気持ちは変わらないよ。魔法少女になる」
「わかった。それでは登録を行おう」
ルイの固有波動数を計測し、その情報を高次元へ送り登録を完了する。いまこの瞬間彼女は魔法少女となり、魔方陣を構成する六百六十六のピースの一つとなったのだ。
「高次元エネルギー供給回路が繋がった。それでは君専用の魔法のペンダント(ID)を渡そう。今から君は魔法少女だ」
位相空間から五芒星型のペンダント(ID)を取り出し彼女に渡す。
「どうやって使うの?」
「好きな言葉を呪文とする。ペンダント(ID)を手に呪文を唱えるのだ。変身とともにペンダント(ID)も変化し、魔法アイテムとなる」
「メタモルフォーゼ!」
「ん?」
「変身の呪文。メタモルフォーゼが良い!」
「わかった。メタモルフォーゼ。ワードを送信、登録完了。これでいつでも変身できるよ」
「やりい」
「おい、ルイ。なにやってるんだよ」
振り向くと男の子がいた。グレーのパーカーにオリーブドライブのアーミーパンツ。
「あ、ナオちゃん」
「なんだ、その変なネコ」
「えっと。これって内緒にしなきゃいけないのかな?」とルイが僕の耳もとで囁く。
「世間に正体が知れると活動に支障が出る。漏洩に対する罰則はないが、プライベートを平穏に過ごしたいのなら秘密にすることだね。周囲に吹聴したことにより、頭のおかしな女の子として病院送りになったケースも過去にある」
しかしこれはあくまで原則だ。一年という長期間、ひとりで秘密を守り通す精神的負担は大きい。信頼できる友人に打ち明け、活動支援を受ける魔法少女も少なからず存在する。
「おいおい、ネコと内緒話か? あまり目立ったことするなよな。ただでさえ俺たちヘンタイ扱いされちまうんだから」
「よく言うよ。ナオちゃんなんか隠すつもりもないくせに」
ヘンタイ? なんの話だ。
「で、なんだよこの変なの」
ナオと呼ばれた男の子が僕の両脇を掴んで持ち上げた。
ユウキ・ナオ。ルイと同じ中学に進学予定の同級生。世間一般で言うところの美少年だ。周囲に秘密にしているようだが、ルイはこの男の子と交際している。一応断っておくが、今日日ボーイフレンドの存在は魔法少女の否定的要素にならない。むしろシングルマインドが高まる傾向にある。好きな男の子のため、女の子はより一途となるのだ。ただしプラトニックであることが前提となる。非処女に魔法は使えない。
「あれ? ネコじゃないぞ。フェレット? キツネ? 見たことがないな、こんなの」
「だろうね」
ルイが白い歯を見せた。
「ひょっとして新種? どこに電話したら良いんだろ。動物園? テレビ?」
冗談じゃない! 正体をばらしたくはないが、保健所にでも連れて行かれては面倒だ。それにこの少年ならルイの支えになってくれるかも知れない。
「ナオ。僕を降ろしてくれないかな」
「うわっ!」と叫んでナオが僕を放り投げた。
空中で身体を捻り、辛うじて着地する。
ああ、だから男の子は嫌いなんだ。がさつで乱暴、デリカシーのカケラもない。やはりこの少年にルイの支援は無理か。最悪の場合、記憶操作する必要があるな。
「キショ! 喋ったぞ! なんだこれ!」
「キショとは失礼だな、まったく。僕は三次元宇宙の安定を目的に派遣された、高次元生命体の端末だ」
「また喋った! おい、ルイ。これなんだ!」
「あれだよ、ほら。魔法少女モノに出てくるマスコット的なアレ(・・)」
「魔法少女? 魔法少女ってアニメでステッキ振り回すヤツ?」
「うん」
「変身するとき裸になって『イヤーン』ってするヤツ?」
「……『イヤーン』かどうかは知らないけど、うん」
「そんなものがどうしてここにいる?」
「今、わたし、魔法少女になった」
「まさかその手にしている星形のものは……」
「魔法のペンダント(ID)」
「……嘘だろ、マジありえねえ」
まぁ、これが魔法少女と聞いて、一般人が示す反応の正しいあり方だろう。魔法少女に対する若干の偏見が見受けられるようだが。
「ナオちゃんもならない? 魔法少女。願い事が一つ叶うんだよ」
「願い事?」
「うん。大抵のことは叶うって」
「けどフリフリのスカートや服、着なきゃいけないんだろ?」
「あ、その辺どうなの? えっと、名前なんだっけ」
「僕の名前はクライン。あのね君たち。魔法少女は女の子しかなれないんだよ」
ルイが笑顔で答えた。
「ナオちゃんは女の子だよ」
え?
「うっせえ! ルイ、お前だって男だろうが」
ええっ?
「き、君たち! ちょっと待ってくれたまえ。もう一度言ってくれないかな」
血の気が引いていくのがわかった。
まさか。まさか。まさか!
ルイが言った。
「ナオちゃんは女の子だよ。幼馴染みなんだ」
そしてナオが言った。
「んで、ルイは男だ。こんなナリして生意気にチンコが生えている」
「ナオちゃん、生意気は酷いなぁ」
僕は急激な負荷に対応しきれず機能停止した。
魔法少女は全世界に常時六百六十六人存在する。これら魔法少女は存在そのものが世界を厄災から守る魔方陣を構成し、一人として欠けることは許されない。彼女たちは十三週を一期として一期ごとに登録の更新を行い、全四期を勤め業務を終了する。大抵の魔法少女は全四期を勤め上げ、最後に願い事を一つ叶え引退する。しかし家庭の都合、処女の喪失、当人の死亡などにより、満期を迎えることなく退く魔法少女も稀にいる。
新年度を迎えるにあたって僕が担当する地域「日本」では、十一人の魔法少女のうち二人の引退が決まっていた。今月中に新たな魔法少女を発掘しないと、魔方陣に空白ができてしまうのだ。この事態だけは避けたい。避けたかった。その焦りの結果が……。
再起動するとそこは見知らぬベッドの上だった。
辺りを見回す。女の子の部屋っぽい。
「あ、気がついたみたい」
ルイだ。ナオもいる。
「大丈夫? ここはわたしのお部屋。なんか飲む? それとも食べ物がいい?」
「すまない。気を失っていたようだ」
正確な状況を把握しなければ。
「もう一度事実関係を確認させて貰いたいのだが」
「えーっと、ナオちゃんが女の子って話?」
「いや。ルイの方」
ナオが言った。
「ルイは間違いなく男だ。小さいとき一緒に風呂に入ってチンコを見た。すっげー小さかったけどな。ドングリみたいだった。今でもあんなに小さいのか?」
「ナオちゃん、そういうのセクハラって言うんだよ」
なんてこった。男を魔法少女登録してしまった。魔法少女史上あるまじき失態だ。
「なにか問題あるの?」とルイ。
「よく聞いてくれ。男は変身できない、男には魔法が使えない! これがどう言う意味かわかるかい?」
二人とも首を横に振った。
「六百六十六しかない席の一つが欠番になってしまったんだ。少なくとも十三週の間! 今後の戦略的配置を考え直さなければならない。大失態だ!」
「わたし変身できないの?」
「できない。と言うか、したら死ぬ。即死だ。男は高次元エネルギーを許容できない」
「えー? そんなの聞いていないよ」
「僕も君が男の子だなんて聞いていない! 聞いていれば登録なんかしなかった!」
「だって聞かれなかったもの」
「う……」
その通りだ。確認を怠った僕の責任だ。今日まで見た目だけの判断で選考してきた。これに疑問を持つことをしなかった。時代の変化に気づけなかった我々端末の責任だ。
「しかし困ったぞ。登録者は存在そのものが地球を覆う魔方陣の一部となる。魔方陣は災厄の攻撃目標にもなるんだ。ルイは変身できないから自分の身を守ることができない。雑魚にでさえ命を奪われる可能性がある」
ナオが顔をしかめ言った。
「うわ、それ酷いな。その登録ってチャラにできないのかよ」
「できるのなら誰も困ったりしない。一期十三週の間は登録解除できないんだ。本人の死を除いては!」
「わたし死んじゃうの?」とルイが青ざめ口元を手で覆った。
「どうするんだよ、このイヌネコ野郎! ルイになにかあったらお前を毛皮にするぞ!」
毛皮って。なんて物騒な男……いや女の子なんだ。
……女? そうか、これでも立派な少女なんだな。
改めてナオを観察する。綺麗に整った顔立ちは確かに女性的である。しかし髪型も服装も完全に男の子だ。これが女の子とは! 試しにシングルマインドを計測する。
……。
ルイほどではないが高数値を検出した。驚きだ。適合者がこんな局所に二人もいようとは!
これはチャンスかも知れない。
「ナオは魔法少女に興味あるかい?」
「なに?」
「君には素養がある。ルイと近しい関係なら、ルイの護衛役としても適任じゃないかな」
「フリフリのスカート履くのは無理。死んだ方がまし」
「コスチュームのデザインは当人の内面が反映される。だからフリフリのスカートとは限らないよ」
大抵の場合、フリフリのスカートになってしまうのだけどね。
「ルイが一期勤める間だけでいい。もちろん全四期勤めてくれてもいい」
ナオは腕を組み、しばらく考えると言った。
「願い事ってなんでも叶うのか」
「世界に影響を及ぼさない範囲のものなら」
「俺とルイの身体を入れ替えることってできるか?」
「ナオちゃん、わたしも同じ事を考えていたんだ。ねえクーちゃん(・・・・・)、身体の入れ替えってできる? 性別の変更ってできる?」
そんなことを考えていたのか!
「……できると思うよ」
「わかった。俺、魔法少女に……いや、魔法少年になる。魔法少年になってルイを守る!」
「ナオちゃん、嬉しい」とルイがナオの頬にキスをした。
中学生とは思えない実に熟れた所作……。
「ちょっと聞きたいんだが」
「なんだ?」
「君たち二人はどう言う関係なのだ?」
ナオが力強く答えた。
「結婚を誓い合った仲だ」
なんと!
「君たちは、いわゆる性同一性障害と呼ばれる人と理解して良いのだろうか?」
「まぁ、そうだな。きちんと医者の診断を受けたのはルイだけだけどな」
「同性愛者が異性と結婚するのか?」
「おい、イヌネコ野郎、勘違いするなよな。俺とルイは同性愛じゃない。それぞれ間違った身体に生まれてきただけだ。心の中では俺は男だし、ルイは女なんだ。だから俺たちは同性愛じゃない。精神的には普通なんだ。よく憶えておけ」
この三次元宇宙に出現して半世紀。十二才の少女に諭されるとは思ってもみなかった。自身の認識不足を認めざるを得ない。しかしこのナオの説明だけでは、社会的認知を得ることは難しいだろう。世間の常識は理屈だけでは覆らない。
「身体を取り替えれば、俺たちは完璧な恋人同士になれる。正々堂々と結婚できる。これは願ってもないチャンスだぜ。なぁ、ルイ」
ナオはルイの腰に手を回すと優しく抱き寄せた。やはり熟れた所作。
「念のため聞いておくが……君たちの間で性交渉はないだろうね」
「セーコーショー?」
「セックスのことだ」
「ああ、俺は正真正銘ドーテイだし、ルイはショジョだ」
「……そうか。それを聞いて安心したよ」
男と違って死にはしないが、処女でなければ魔法は使えない。
が、この二人は童貞と処女の意味を正しく理解しているのだろうか。
「それでは登録を行う」
本日二回目の登録である。
◇
変身の予行練習をするため僕たちは深夜の公園に出向いた。登録者がどの様な形態に変化するかは、変身してみなければわからない。またどんな魔法を有するのかもわからない。事前に確かめておかないと実戦に対応できないのだ。アニメのように第一話からいきなり変身して戦えるほど、魔法少女は簡単な仕事ではない。
「まずは呪文の登録だ。好きな言葉を選ぶと良いよ。でも日常的に使う言葉はNGだ。変身は一日一回しかできないからね。都度変身していては肝心なときに変身できなくなる」
「へへ。とっておきのを考えてきたぞ。『ミラクルチェンジ・ゴー』だ。格好いいだろう?」
ナオがどこかの戦隊ヒーローのようなポーズを取った。
「ナオちゃん格好いい」とルイが手を叩く。
どう考えてもセンスないと思う。ワードを送信し登録を完了。
「それでは変身してごらん」
「よし、行くぞ」
ナオが両足を広げ再びポーズを取る。
「ミラクルチェンジ・ゴー!」
頭上に掲げたペンダント(ID)が輝き、光がナオの身体を包み込んだ。着衣が素粒子レベルで分解し再構成される。変身が終了した。
「なんじゃこりゃあ!」と自身の変身姿を見たナオが叫んだ。
それはフリフリの、絵に描いたようなゴスロリ魔法少女だった。黒の基調色にターコイズブルーのフリル。短かった髪は腰まで届くロングヘアーとなり、光り輝くリボンで飾られている。過去半世紀におよぶ魔法少女の歴史においてもトップクラスの見栄えだ。ただし変身ペンダント(ID)はポピュラーなステッキ型ではなく、ニーソックスと一体となった右太もものホルスターに厳つい拳銃の姿となって収まっていた。
「話が違う! なんだよこの短いスカートは! パンツ丸見えじゃねーか! しかも女物! こんなんじゃ戦えねえ!」
魔法少女のコスチュームデザインは当人の潜在意識が反映される。おそらくナオの日頃の男装には虚栄があるのだろう。これはその反動なのだ。巨大で厳つい拳銃は、ペニスに対するあからさまなコンプレックスの現れに違いない。
「これが君の潜在意識そのものなんだ。受け入れて貰わないと」
「ナオちゃん綺麗。すっごく素敵だよ。ミニスカート超可愛い。長い髪もよく似合う」
「うっせえ! 俺に向かって可愛いとか言うな!」とポロポロと涙を流した。
そんなに嫌だったとは。ルイが慌ててなだめる。
「ナオ。その拳銃の威力を確かめてみないかい?」
ナオは涙を拭うと、ホルスターから拳銃を抜いた。銀色に輝く銃身に植物のレリーフがあしらわれている。
「……これは……かっけぇー……かも」
「そこのジャングルジムに向かって撃ってごらん」
ナオが拳銃を両手で構え、ジャングルジムに向ける。そして引き金を引いた。
「ミラクルショット」
銃口から光弾が射出された。光弾は着弾すると閃光を放ち、直径三メートルほどの光球となってジャングルジムを包み消えた。地面には半球状にえぐれた真っ黒な穴がぽっかりと開いていた。ナオが目を見開く。
「すげえ! ジャングルジムが消えたぞ。どこに行ったんだ?」
ジャングルジムを空間ごとどこかの次元へ飛ばしてしまったようだ。ナオの魔法属性は四元素系とその派生系のどれにも当てはまらない。強いて言えば「空間」と言ったところか。このような属性は初めてだ。厄災に致命的な一撃を与えることができる。見栄えだけではなく魔法も超一級品ではないか。
「実に素晴らしい! 君には是非全四期を勤め上げて欲しい」
「このスカート、どうにかならないのか?」
「それは君自身が作り上げたものだ。僕に言われても困るよ」
「そんな。こんなヒラヒラした格好じゃ人前に出られない。絶対無理」
「ナオちゃん、変身したあとにレギンス履いたらどうかな」
この完成されたコスチュームにレギンスを加えるだと? 冗談じゃない! ミニスカートとニーソックスが構成する、この絶妙な絶対領域が壊れてしまう。
「ルイ。レギンスってなんだ?」とナオ。
「えっと、スパッツ?」
「スパッツか! よし、明日買いに行く。ルイ、付き合ってくれ」
「うん」
こうして新人魔法少女の第一期がスタートした。
「第一期・前 チュートリアル」に続きます。