04:チョロイン
「どうしてこんなに親切にしてくれるんですか?」
「どうしてって言われても……君が可愛いからかな」
「え……?」
目の前の少女は俺が思わず呟いた言葉に、顔を赤らめた。
「そ、そんな可愛いなんて……」
「あ、つい本音が漏れちまった。
でも、俺は本気でそう思ってる!
初めて会った時から君の事が気になって居たんだ。
その……俺と付き合ってくれないか」
「あ……はい! 私なんかで良ければ、よろしくお願いします!」
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「セリーナたんーーーーーーッ!!!」
「おわぁ!? 何だ、どうした?」
突然叫び声を上げた清水に、俺は思わず悲鳴を上げた。
「センパイ! 僕の、僕のセリーナたんがあんな奴に!」
「セリーナって……ああ、このキャラのことか。
何で『お前の』なんだよ」
っていうか、『たん』とか付けんな。
「僕のお気に入りなんすよ!
設定とかも一生懸命考えたんっすよ!」
「って、一キャラだけやけにキャラ設定が分厚いと思ったらお前の仕業かよ!?
レポート用紙30枚もあるからおかしいと思ったんだ……」
他のキャラはせいぜい1〜2枚なのにな。
「うう〜〜……セリーナたん、どうして……」
「泣くな、鬱陶しい!
仕方ねえだろ、出逢いイベントこなせば好感度が100になる仕様になってんだから!」
「なんでそんな設定にしてるんすか!?」
そこには仕方のねえ大人の事情ってもんがあんだよ。
「MMOってのはな、リソースとの戦いなんだよ。
少しでも容量削ってタイムラグ無しに動くようにしなきゃいけねえんだ。
無駄にダラダラした恋愛イベントに割く容量はねえんだよ」
「だからって、いきなりクライマックスにしなくてもいいじゃないっすか!
って言うか、そんなの不自然過ぎて普通怪しまれるっすよ!」
清水が反論してくるが、甘い。
お前は現実ってものを分かっていない。
「それを確かめる為に今こうやって実験してんだろうが。
ちなみに、今までの被験者は特に不自然とは思ってなかったぞ」
「被験者が偏り過ぎてる気がするっす。
そんな特殊な被験者ばっかり集めても実験にならないっす」
「…………………」
「…………………」
「そう言えば、小説サイトの方はどうなんすか?
って、この前もこんなこと聞いた気がするっすけど」
気まずい沈黙を誤魔化す様に話題を替えた清水だが、俺も好都合なので乗ることにした。
「何とランキング上位に入ったぜ!
こりゃあひょっとすると書籍化とかしちまうかもしれねえぞ」
「おおおーーー、凄いっす!
印税入ったら奢って欲しいっす」
興奮する清水の姿に、俺も思わず得意になって答える。
「任せとけ、寿司でも何でも奢ってやるよ!」
「流石太っ腹っす! 何処までも付いていくっすよ、センパイ!」