02:チートスキル
気が付くと俺は鬱蒼と茂った森の中に居た。
どうやら神様の言っていた通り、異世界に飛ばされたようだ。
白い空間に居た時は死んだ時のジャージ姿だったが、いつの間にか皮鎧を着て剣を持っていた。
「ええと、チートなスキルを貰ったんだよな。
試してみるか……鑑定!」
試しに手に持っていた剣に意識を集中して唱えると、目の前にウィンドウが立ち上がってきた。
青銅の剣 スキルスロット×2
「おお、本当に出た!
しかも、スキルスロットがあるのか。
これ、俺だけが見れるなら色々と有利だな」
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鑑定の表示を見てはしゃぐ男をモニタ越しに見ながら、ホッと胸を撫で下ろした。
「危ねぇ危ねぇ、スキル設定を忘れるなんてとんだポカしたもんだぜ。
清水のやつをからかえねぇな。
デバッグモードが間に合ってよかったわ……」
俺はキーボードを打ち込んで、デバッグモードを閉じた。
デバッグモードとは開発者向けの機能で、ゲームのテストのためにキャラクターのパラメータなどを操作するモードだ。
鑑定 :ON
火魔法 :ON
水魔法 :ON
地魔法 :ON
風魔法 :ON
光魔法 :ON
闇魔法 :ON
ラーニング :ON
「鑑定と全属性魔法と能力コピー……よし、全部反映されてるな。
これでしばらくは見てるだけで大丈夫だろ。
今の内に報告書を書いちまうか」
俺は録画モードに切り換えると、報告書を書き始めた。
「センパイ、何やってるんすか?」
「見りゃ分かんだろ、報告書を書いてんだよ」
夜勤の時間に合わせて出勤してきた清水に話し掛けられ、そう答える。
「いや、それ……報告書っていうより小説にしか見えないんすけど」
「別にいいだろ、被験者はこんな感じのストーリーで進んでいますって上に付けとけば。
後はバイタルデータを添付しておけば、報告書としては十分だろ」
「う〜ん、いいんすかね……?」
いいんだよ。
「それに、このまま小説サイトにも投稿出来るからな、一石二鳥だ」
「ちょ、それマズくないっすか!?」
いいんだよ。
「別にサイトの規約には違反してないだろ。
公開された創作から取ったわけでもないから盗作じゃないし、実在の人物そのままじゃなくて実在の人物の妄想を小説にしただけだしな」
「いや、小説サイトの規約とかよりもプライバシーの問題とか……」
「こうやって頭ン中覗いてる時点でプライバシーも何も無いだろ」
こんな実験やってる時点で倫理を語るだけ無駄だろ。
「しかし、こんなの投稿してウケるんすか?」
「サイトの傾向には合ってるし、何よりもリアリティが違うぜ。
現在進行形で進んでる映像を見ながら書いてるんだからな」