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01:カミサマ

ジャンル別のエッセイランキングを眺めているうちにふと思い付いて書きました。

また、「チートに納得出来る理由を」というコンセプトとブラックな部分は桐生たまま様の「チート保険」(※)からインスピレーションを受けています。


※正式名称「トラックに轢かれて異世界転生 ―チート保険の使い方―」

 ブックマークから飛べますので、そちらも是非。

 気が付いたら真っ白な世界に立っていた。


「……ここは?」

「気が付いたようじゃな」


 突然掛けられた声に驚いて振り向くと、ギリシャ神話に出てくるような白髪の爺さんが立っていた。


「だ、誰だあんた……それに、ここは一体?」


 混乱するままに尋ねると、爺さんは鷹揚に頷きながら答えてきた。


「ふむ、混乱するのも無理はないの。

 まあよい、順番に答えてやろう。

 ワシはお主達が神と呼ぶ存在じゃ」

「か、神様!?」


 た、確かにそれっぽい格好だが……本当に神様なのか?


「それとこの場所じゃが……お主、自分が死んだことに気付いとるかの?」

「な!? し、死んだ? 俺が?

 う、嘘だろ……」


 唐突に自分が死んだと言われて混乱する。

 しかし、言葉とは裏腹に俺の脳裏には意識を失う直前の光景が蘇ってきた。

 そうだ、就活が上手くいかなくて不貞腐れて歩道を歩いていた俺は、猫が車に轢かれそうになってるのを見て思わず飛び出して……。


「俺は……死んだのか」

「うむ、確かにお主は一度死んだ。

 しかしの、本来ではまだ死ぬべき運命ではなかったのじゃ」


 死ぬべき運命でない?


「ど、どういうことだ?

 それなら何で俺は死んだんだ?」

「ま、まあそれはどうでもよかろう。

 重要なのは、お主には選択肢が与えられるということじゃ」


 何か誤魔化すような態度が気になるが……それよりも今は話を進めよう。


「選択肢?」

「本来ならばこのまま輪廻の輪に戻るのみじゃが、

 本来死ぬべき運命ではなかったお主には記憶を持ったまま異世界に転生する道もある」


 い、異世界だと?


「転生する世界や能力等もある程度選べるが、どうするかの?」


 そんなの決まっている。


「剣と魔法のファンタジー世界にしてくれ!

 それから鑑定とか全属性魔法とか能力コピーとかのスキルだ!

 チートなスキルで俺TUEEEEE!!でハーレムだぜ!」




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「チートスキル付与でファンタジー異世界、と。

 お決まりのパターンだな」


 モニタに映る男と神様ユニットのやり取りを見ながら、俺はキーボードを叩いて設定を打ち込み始めた。


「その人が今回の被験者っすか、センパイ?」


 キーボードを打っていた俺に後ろから声が掛けられた。

 俺は打ち込みを続けながら、その声に答える。


「清水か。ああ、コイツが今回のお客さんだ。

 猫を助けようとして車に撥ねられたんだとよ」

「おお、今時珍しい良い奴じゃないっすか!」


 まぁ、猫を助けようとして車に撥ねられるなんて良い奴っぽく聞こえるが、正直賛同出来ない。

 なお、俺達が言っている「コイツ」はモニターの向こうに鎮座しているカプセルの中で寝かされ、数多のケーブルが繋げられている。


「いや、そこだけ聞きゃ確かに美談だけどよ、普通に車道走ってたら目の前にいきなり飛び出てこられた運転手の方が悲劇だぜ。

 100%コイツが悪いのに責任負わされるんだからな」

「ああ、言われてみればそうっすね」

「ま、流石に半分以上はコイツが自分で負うことになったみたいだけどな。

 おかげで抱えきれなくなった家族から見離されてここに流れてきたってわけだ」




 ここはとあるメーカーの隠し研究所、今俺達がやっているのはVRMMOの開発だ。

 VRMMOの肝である仮想現実の仕組み自体は既にある程度出来ているんだが、問題となっているのは安全性の証明だ。

 脳に直接アクセスするこの仕組みは当然ながら安全性を疑問視する声も多く、それらの反対を抑えられなければ認可が下りず商品化は不可能だ。

 そして、その為には実験を行い安全であることを証明する必要があるんだが、商品の特性上マウス実験というわけにもいかず、当然ながら人間で実験する必要がある。

 しかし、仮に大々的にモニタを募って事故が起こればアッと言う間に会社は倒産してしまうだろう。

 故に裏で非合法に被験者を集めて、密かに実績を溜め込んでいるのだ。


 事故等でまともに生きられなくなった者を被験者とし、様々な実験を行うのが俺達の仕事だ。

 被験者には仮想現実の世界で思い思いに過ごして貰う。

 ある程度はこちらでイベントを起こしたりもするが、基本的には能動的に行動して貰い、その反応を見るのが実験の趣旨だ。


「それにしても、今回のカミサマはお爺さんにしたんすね」

「幼女も飽きてきたからな、原点回帰だよ」

本作品はアンチテンプレの方でもテンプレ作品を愉しめるようにする調味料です。

これまで敬遠してたテンプレ作品も、裏でセンパイと清水君が頑張ってると思えば楽しくなってこないでしょうか。



まぁ、アンチテンプレの方はあらすじに挙がってる単語で除外してここまで読まれないかも知れませんけど。

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― 新着の感想 ―
うわ、ある意味近未来っぽい。 VRもARという言葉すらない時代にこんなマンガがあったなあ。 読み切りでバッドエンドだったけど。
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