第10話
東方閉瞳神録第10話です。
かなり物語のスケールがデカイので、東方projectの二次創作じゃないんじゃないかと思われるでしょうが、あくまでもメインは東方projectです。
この世界樹編も、前置きにしかなりません。
更に、第10話を投稿するにあたってタグを二つ増やしました。
ユガの終焉については、カリ・ユガという、スーパーロボット大戦UXに出てくるラスボスの姿を参考にしていただければ。
キャラ紹介は、世界樹編が終わってある程度進み、最後の主人公の家族入りのキャラが入った頃に書きます。
ちなみにヒントは、日本の中でも有名な女王様です。
天照達に地上まで送ってもらい、無事に我が家に帰ることができた。
紫も桃蘭も、凄く心配してくれていたので、父親として嬉しかった。
ただ、紫が何やら俺の匂いを嗅いでいたのが気になったが。
あれから更に30年、その昔、神楽が「あと数百年ほどで、世界樹の元にいき、世界樹をどうにかしなければならない」と言っていたが、ついに、その日はやってきた。
数百年という月日は長いようで意外と短かった。
神楽や久遠、桃蘭や紫達と過ごした毎日が楽しかったのもあるからからな。
急激に減少した世界樹の力を感じた俺は、みんなを集め、世界樹の下へと向かった。
世界樹から感じられる神力は限りなく少なく、今にも枯れ果ててしまいそうになっている。
そしてそれに加え、何処か懐かしい力を感じた。
世界樹の力には、紫や桃蘭も気付いているようだ。
最初は久遠達にやられてばかりだった紫も、桃蘭も、今ではかなり強くなっている。
なにがおきても、最低自身の身を守ることは出来るだろう。
世界樹のある陸地につくと、同じように世界樹の異変を感じたのか、天照達や、大陸から来たであろう、見知らぬ神たちがいた。
「真火様、やはり来られましたか。」
「天照、何故ここにいるのかは聞かない。とりあえず、今は世界樹が先だ。」
「そうですね、わたしも同じ意見です。」
「取り込み中のところすまぬが、お主は一体何者じゃ?アマテラスが敬意を示しておるなど、わしには理解できぬのだが・・・」
突然聞こえてきた声に内心驚きつつも、当然だろうといった感じで振り向く。
「海塚真火、この星の始まりからいた者だ。」
「では、お主がこの世界樹を植えた者か?」
「そうなるな。」
声の主は、立派な白い髭を生やした、身体の大きい男の神だった。
「そういうあなたは誰なんだ?見たところ、それなりに力を持っているようだが。」
「これは失礼した。儂はオーディン、北欧の神々の主神をしておる。」
白い髭の神はそういった。北欧っていうと、大陸の方か。
「なるほど、それで、その北欧の主神が何か用かな?」
「いやなに、ちょいと気になっただけじゃ。気にせんでよい。」
そういって、オーディンはもとの場所へと戻っていった。
気になったからってだけで話しかけられるこっちの身にもなってほしい。
(主人公も人のこと言えません。)
「やはりオーディンさんもきてましたか。」
「そういえば、オーディンは天照のこと知ってるみたいだったな。」
「はい、他にも色々な方とお知り合いですよ。例えば、さっきのオーディンさんがいるところの反対側にいるのは、ギリシアの主神、ゼウスさんです。あの方のお母様は、大地母神様なんです。」
「へー、色んな神がいるんだな。」
あの時は俺だけしかいなかったが、随分と増えたものだな。
「では、わたし達も参りましょうか。」
「?どこへだ?」
「対策本部ですよ。世界中の神々の主神達が集まっている場所です。全ての生命に関わる問題ですから、慎重に対策をたてないといけないのです。」
わざわざ現地にきて対策をたてるのはどうかと思うがな。
そんなことを言う暇もなく、天照に引っ張られて、その対策本部まで連れて行かれた。
「では、これより世界樹対策の会議を始める。進行はこの私、ゼウスが務めさせていただく。」
そういって俺たちの向かい側に立った、赤い髪と赤い瞳の男。
彼が、天照の言っていたゼウスらしい。
「皆も知っての通り、今世界が危うい状態にある。各々がこの場に訪れた時間は違えど、目的は同じであることは承知している。かの世界樹は、我等神々を含めた全ての生命の源。その世界樹が今、力を失いつつある。世界樹の力が本格的に無くなれば、この星の全ての生命に影響が及んでしまう。それだけはなんとしてでも止めなければならない。故に、わざわざ諸君達にこの場に集まってもらったのだ。」
ゼウスの言葉に、他の主神達も頷く。
それぞれ思うところはあれど、最終的にはみんな同じなんだな。
「それで、世界樹の消滅を防ぐ為に我々に何ができるのか。そのことについて、話したい。誰か、よき案はないか?」
その言葉を聞いた者達は一斉に俯いたり、他所を向き始めた。
「どうした。誰もおらんのか?」
「ゼウス殿、少し聞きたいことがあるのじゃがよろしいかの?」
誰も喋ろうとしない空気が流れる中、声をあげた者がいた。
誰かと思いみれば、オーディンだった。
「オーディン殿か、聞きたいこととは?」
「今現在、世界樹の様子はどうなっておるのかの?場合によっては、こうしている間にも、取り返しがつかなくなってしまうぞ?」
「今はまだ大丈夫だが、いつ消滅してもおかしくない状態にある。」
「ならば、ここにいても時間の無駄ではないか。無駄な作戦会議などいらぬ。一刻も早く、世界樹を元に戻しに行くのだ。」
「無駄ではない!予期せぬ事態が起こってからでは遅いのだ!だからこそ、こうやって作戦をたてているのではないか!!」
「その予期せぬ事態とは、世界樹が枯れ果て、消滅することではないのか?!それを防ぐ為にも、直ちに世界樹の下に行くべきだ!!」
「それで私たちが消滅したらどうする?!そうなっては元も子もないではないか!!」
「それでこの星の全ての生命を救うことが出来るなら我等の命など、いくらでも捧げようと構わん!!」
オーディンとゼウスが互いに譲らず、殺伐とした雰囲気が漂う中、天照は呑気な表情をしていた。
「天照、さっきから平気そうな顔をしているが、何かいい考えでもあるのか?」
「ありませんよ?真火様なら、いい案があるだろうなぁ、と思っていただけです。」
じゃあなんであんな顔してたんだよ。
「俺に振るなよ・・・まあないわけではないがな。」
「そうだと思いました♪ですが、何故それを言わないのですか?」
「あまりいい案じゃないからな。」
「可能性はゼロではないんですよね?」
「ゼロではないが、限りなくゼロに近い。」
「ゼロじゃないなら、今すぐに教えてあげてください。このままでは埒があきません。」
確かに、ずっとあの二人の口喧嘩を聞くのもいやだな。
「ったく仕方ねぇな、わかったよ。」
「ありがとうございます、真火様。」
まったく・・・どうなっても知らねえからな。
天照の言葉で諦めた俺は、未だに口論を続ける二人の元へと歩きだす。
「お二人さん、仲良く言い合っているところ悪いが、少しいいかな?」
「ぬ?何者だ其の方。」
「おぉ、真火殿ではないか。」
「真火?では、この者が母上の言っていた…」
「はいはい、細かい話しはあとにして、二人とも、いったい何について言い合っているんだい?」
「いきなり割り入って来たかと思えば何を馬鹿な…無論、世界樹を救う為に決まっておろう。」
「その割には、一つも案が出ないまま、互いに言い合っていただけにしか見えなかったけど?」
「オーディン殿がすぐにでも行くべきだと言って聞かぬのだ。作戦をたてていられるわけないではないか。」
「何を言うか!最悪の事態が起こってからでは遅いではないか!」
「その最悪の事態を防ぐ為に作戦をたてているのだろうが!」
「はいはい、二人とも落ち着いて。言い合ってたら何も始まらないだろ?」
「では聞くが真火殿、お主にはあるのか?世界樹を救う方法が。」
「ん、あるよ?」
『っっ!!??』
「では何故それを言わなかった!?其方がその案を言えば、こうはならなかったはずだ!」
「じゃあ聞くけど、君はなんで最初に、俺に聞かなかったの?」
「聞いていたではないか。誰か案がある者はおらぬかと。」
「その誰かとは誰のこと?オーディン?天照?他の場所にいる神々達?君達の本国にいる人たち?」
「そ…それは」
「誰かと聞かれて答える人なんていないよ。みんな、自分じゃないと思い込んで口を開かない。直接指名されたならまだ答えていただろうね。そんな状況で、俺を指名しなかったのはどうしてだい?俺のことを知らなかったからではすまないよ?ここにいる者が全員、互いに知らぬ存在なのは当たり前なんだから。」
止めどなく発せられる言葉に、ゼウスだけじゃなく、オーディンも言葉を失っている。
「そんな状況下で、何も答えなかった俺が悪いんじゃない。それを承知したうえで聞かなかった君の責任だ。」
「……」
「今一度聞こう。君達は何について言い合っているんだい?」
「…世界樹を、救う方法だ。」
「なら、言い合っている暇はないはずだよね?」
「あぁ、その通りだ。」
「なら、君は今どうしたい?」
「どう…とは、一体…?」
「知りたいかい?世界樹を救う方法を。」
「…世界樹を、救う…」
「そう、君が俺に聞いた、案があるのか。これが答え。それで、聞きたいかい?」
「…ああ、聞かせてくれ!その方法を!!」
「よろしい。ではまず、全ての生命の源である世界樹、その世界樹の力の源は何か、知ってるかい?」
「世界樹の、力の源?」
「その様子だと知らないみたいだね。世界樹の力の源は、ここにいる全員が持っているもの。即ち神力。世界樹は、その大きさと力から、常にかなりの量の力を消費しなければならない。」
先ほどと同じく、ほとんどの者達が静かに俺から発せられる言葉を聞いている。
「しかし、その為に妖力や霊力では限りがあり、おまけに効率が悪い。では何で補うか、世界樹が選んだのは神力。自らをつくり出した者と同じ力。量に限りがある妖力などと違い、信仰さえ得られればいくらでも使うことができる。だから世界樹の力の源は全て神力で出来ている。では、その神力が減ったらどうすればいいと思う?」
その言葉に、何人かがハッと顔をあげる。
「察しのいい人は気付いたみたいだね。」
「どういうことだ?」
「普通なら、神力が減れば信仰次第で取り戻せる。しかしそれは毎日神力を使っていなければの話し。ならばどうやって神力を取り戻せばいい?」
「他者から直接流し込む…まさか!?」
「そう、信仰で得られる神力が足りないならわけてもらえばいい。」
「だが、相手は世界樹だぞ!?最悪、流し込んだ者が消滅する可能性がある!」
「無駄に血を流して死んでいくよりマシだ。それとも、他に方法があるのか?」
「……」
ゼウスの答えは沈黙、代わりの案が無い事は理解しているが、下手な事を言って自分のイメージに傷を付けたくないのだろう。
ある意味その行動は正解だ。
「じゃが、それは誰が行うのじゃ?相手は世界樹。我等全員の神力を流し込んでも、足りるかもしれんぞ?」
オーディンの疑問はもっともだ。正直、満たせたとしても百年ともたないだろう。
「安心しろ、君達にはやらせない。その役目は俺がやる。」
『っっ!!??』
「ちょっ、ちょっと父様!どういうこと?!どうして父様なの?!」
「紫、これは俺が撒いた種が実をつけたものだ。実をつけた木の始末は、撒いた俺自身が片付けなければならない。」
「だからって・・・だからって!父様!」
何も出来ない自分への不甲斐なさと、大切な家族を失うかもしれないことへの恐怖から、自然と涙が溢れてきている紫。
その優しさは嬉しいが、それでも・・・
「それでも、これは俺にしか出来ない・・・いや、俺がやらなければならないんだ。」
「どうして?どうしてなの?!どうして父様じゃないといけないのよ!?」
「それは、世界樹を造り、植えたのが俺だからだ。」
「なっ・・・!?」
「それに、あの世界樹で誰かが俺を待っている。それが誰かはわからない。だけど、いかなければならない。そんな気がするんだ。わかってくれ、紫。」
「でも・・・父様。世界樹に行ったら、父様は消滅してしまうかもしれないのよ・・・?父様が居なくなったら、私は・・・どうしたらいいの?」
思いっきり泣き出したいのを堪え、なんとか言葉を繋ぎながら恐る恐る聞いてくる。
もう頭ではわかっている、だけどそれを認めたくない。認めてしまったら、崩れてしまうかもしれないから。
せめて、優しい娘を慰めてあげよう。
「・・・紫、ごめんな。でも、俺は行かなきゃいけないんだ。」
「・・・・・必ず、必ず戻ってきてくれる?」
「あぁ、約束だ。」
「・・・わかったわ。父様は一度言ったら聞かないものね。」
「ははは、返す言葉もないな。」
「まったく・・・優しい父親を持つと苦労するわね。今回だけは、父様の我儘を聞いてあげるわ。」
「ありがとう、紫。」
父親の我儘を許してくれた紫には、感謝しないとな。
「話しは纏まったか?」
「あぁ、君達の方も纏まったようだな。」
「うむ。情けない話しだが、我等はお主に世界樹を任せることにした。」
「我々の力では、世界樹を満たすことは出来ぬ。ならば、せめて世界樹までの道を開き、真火殿を支援させてもらいたい。」
ゼウスの言葉に、再びみんなが頷く。
「ありがとう、みんな。」
一つの事に向かい、様々な神が手を取り合っていく。
みんなの思いに応える為にも、必ず世界樹を元に戻してやらないとな。
会議が終わったその後、ゼウスに、夜に自分のところに来てほしいと言われたのでゼウスがいる、ギリシアの神々の宿舎へと足を運んだ。
「お待たせ。俺に話したいことがあるんだって?」
「こんな夜にお呼びして申し訳ない。それと、昼間は大変失礼をした。実は、真火殿には是非とも聞いて頂きたい話しがあるのだ。」
「わざわざ俺にか?」
「真火殿でなければならぬ。おそらく、今回のことと関係があるやもしれぬからな。」
「……わかった、聞こう。」
「では早速…これは、私の母上から聞いた話しなのだが…」
〜回想〜
「私達オリュンポスの神々は、混沌から生まれた私、暗黒界、愛の4人が始まりだと言われていますが、その混沌も誰かの手で生み出されたらしいのです。そしてその時、混沌はある言葉を聞いたそうです。その言葉とは、『星に華が咲くとき、世界は終焉へと導かれる。』混沌は、この言葉の意味を理解出来ぬまま、私を生み出しました。そして、私にもこの言葉を伝えたのです。正直、私もこの言葉が何を表すのかはわかりません。ですが、いつかきっとこの言葉の意味がわかるときが来るでしょう。」
〜回想終了〜
「星に華が咲くとき、世界は終焉へと導かれる…か。」
「母上はそういって、私に教えてくれた。しかしやはり、私も母上と同じく、この言葉の意味が理解出来ぬ。それで真火殿ならば、何かわかるかもしれないと思い、こうやって話をしたのだ。」
「なるほど…確かに、この言葉には聞き覚えがある。どこか記憶の片隅に、この言葉があるのはわかるんだが、生憎と俺がわかるのはそこまでだ。」
「やはりか…だが、無駄ではなかった。真火殿がこれを知っているだけでも、お話しした甲斐があったというもの。」
「記憶の中にあるということは、多分その言葉と何らかの関係性はあるはずだから、思い出したらまた来るよ。」
「ああ、すまない。今日は色々とありがとう。それではまた明日。」
「ああ、お休み。また明日。」
夜も深くなり、自らの宿舎へと向かい歩みを進める。
『星に華が咲くとき、世界は終焉へと導かれる。』
この言葉にどんな意味が込められているのか、何故自分の記憶にこの言葉があるのか。
今はただ、わからないことだらけだが、世界樹は絶対に枯れさせはしない。
全てはこの星に生きる生命の為に、そして訪れる終焉を防ぐ為に。