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7 代償

自分が生きるために誰かを犠牲にする

それは人類の摂理なのか

「ガァァァァァァァアア!!!!」


吠えた。

赤色の獣は獅子のように吠える。

その威圧に化け物は後ろに後退する。

赤色の獣は飛びつく。


「ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛!」


バギン!

雄叫びをあげた赤色の獣は化け物の左肩に飛びついた。

赤色の獣はその爪を化け物の肩の可動部分を突き破る。

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!

化け物は痛いと言わんばかりに鳴く。

赤色の獣は爪をを金属板に刺しながら着々と頭部に向かう。

バギン!

バギン!

バギン!

バギン!

バギン!

バギン!

一歩進むたびに腕を振り抜き、金属板に風穴をつくる。


「ガアァ!」


赤色の獣は胴体と頭との接合部に移動していた。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


赤色の獣は力いっぱい接合部のパイプのような箇所を大きな爪で突き破る。

グァン!

折れたようで曲がったような低い音。

少し下に反れているパイプを見る。

完全には叩き切れないようだ。

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!

ズアッ。

化け物は右腕で赤色の獣を握るように掴み潰す。

バギッ!

バギッ!

ブヅッ!

金属が軋む音。

赤色の獣は草食動物のように悲鳴をあげる。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」


バギン!

ベキン!

ズチッ!

バギッ!!

化け物の腕の間からボロボロと細かい赤色の金属が落ちる。ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!

ブゥン!

化け物は右腕を大きく前に振り獣を建物に叩きつける。

ボゴォッ!

ボゴォッ!

ボゴォッ!

勢いよく投げられた獣は建物を何重にも突き破る。


ガッ!

ゴッ!

と体をぶつける獣。

所々装甲が剥がれ血が滲んでいる。

カシュッ!


「ゴフッ……」


赤い獣の仮面が小さく収納され獣の中の〝男〟は血を吐く。

〝男〟の頭からは血が流れている。



「……ブッ……コロス……」


男はゆっくり体を持ち上げながら呟く。

その瞳は赤くなっていた。

カシュッ!

カシュッ!

仮面が顔を覆う。


「ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛!!!」

赤色の獣は大きく声をあげた。

ゴォッ!

ビルを体当たりで突き破る。

ガゴォッ!

ガガッ!

獣はビルの壁を蹴り ながら化け物に駆け寄る。


「ア゛ア゛ア゛ァ゛!! ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛!!!」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!!

ゴゴォッ!!

獣は化け物の頭に頭突きを喰らわす。

勢いのある頭突きの衝撃が周りの建物の窓ガラスを割る。


化け物は後ろにたじろぐ。


「ギィッ!」


ガヅン!

ガヅン!

ガヅン!

獣は両手を組み拳を振り下ろす。

獣の応襲により化け物の頭部は少なからず窪みが出来る。


「ガァァ!! ガァァア!!!」

殴り続ける。

しかし獣の力は最初の勢いとは違い威力が落ちていた。

何かが獣の本能を遮る。


〝一輝のこと……大好きだよ……〟


ピタッ……。


「……マ……イ……」


バシィィィィィン!!!


「……!?」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!!


悲鳴をあげた化け物。

獣が振り返るとそこにはバーニアで飛んでいる紺色の女王がいた。

ビシィィィィィン!!

バシィィィィィン!!

女王は大きく振りかぶっては打つ。

それを繰り返す。


「死ね…! 死ね…! ぶっ壊れろぉ!!」


女王は叫びながら鞭を打つ。

その声は荒い。

罵声が悲鳴のようにも聞こえる。


ヒュッ。

ヒュッ。

ヒュッ。

女王の体から紺色の欠片がボロボロと落ちる。

女王は最初に喰らった攻撃でスーツが耐えきれず半壊状態。

スーツに付いている金属板も半分以上削ぎ落ちている。


「ああああああぁ!!」


バシィィィィィン!!

ビシィィィィィン!!

バシィィィィィン!!

女王は鞭を降り続け距離を詰める。

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!

化け物は悲鳴をあげる。

しかし攻撃してるわりには傷がついてるように見えない。

バチィィッ!!

ガァァァン!!

化け物左腕を曲げて地面に肘をつける。

その腕からはパチパチと火花が出ている。


「ガァァ!!」

獣が女王の方を向きながら吠える。

それを見て女王は驚きの声をあげた。


「な……!? 〝赤色〟……!? なんでこんな時に……!!」


女王はすかさず後退する。


『full Brast』


女王の胸から無機質な音がなる。

女王は鞭を捨て、両手を前に伸ばす。


『rea―』


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!


「……?」


獣が化け物の方を向く。

カッ!!


「!!!!」


バァァァァァァァァン!!!


「ギ……!?」


「……!!」


獣は何かの衝撃に吹き飛ばされた。

その時に獣は女王にぶつかり絡まってしまった。

ボゴォォォォォ!!


ビルの中に勢いよく吹っ飛んだ獣と女王。

窓ガラスを突き破り真ん中の柱にぶつかる。


「……ガ……!!」


獣の装甲に多くのヒビが出来る。

耐えきれなかった部分は装甲すら残っていない。


「コ…………ロ……スゥ……」


獣は女王から離れ四つん這いになりながらも化け物のいる場所までゆっくり歩を進める。

そして化け物が見える位置までゆっくり移動していく。

獣は脊柱のような尾の先端を化け物に向ける。

キィン!

キィン!

キィン!

キィン!

キィン!

キィン!

尾からは黄色の光が集められる。

光は一つの玉のような形に集まっていく。


「シ………………ネ………………!!」


キ!

キ!

キ!

キ!

キ!

キ!

キ!

キ!

キ!


〝一輝、おはよう〟


獣の頭に直接語りかけてくるような声が聞こえた。


〝また、斎藤って言ったー〟


〝一輝、大丈夫!?〟


〝みんなで帰った方が楽しいと思って〟。


〝一輝、急ごう〟


〝一輝のこと……大好きだよ……〟


「マイ………………」


キィン!

キィン!

キィン……!

キィン…………!

キィン………………。

キィン……………………。

………………。

シュゥゥゥ……。

光の玉は小さく萎みそして消えた。


「……これが……僕……」


獣の中にいる男が喋った。

男は首を下に向け自分の腕や体を見る。

大きな爪に赤と黄色で覆われた体、ボロボロになった装甲が戦いの記録を脳に刻み込む。


「オ…………イ……」

男は不意に聞こえた声に驚いた。

そして声の方向を向くと。

瓦礫の下敷きになっている紺色の女王がいた。


「だ、大丈夫か!? 今助けを呼ぶからな!!」


男は紺色の女王の近くにより叫んだ後周りを見渡す。

とにかくこのメタルマンをなんとかしないと。

バギッ!


「うぐ……!?」


男の体がよろめく。

紺色の女王が拳を振るったようだ。

右腕を伸ばしている。


「余計なこと……しなくていいって……」


しかしすぐにだらんと腕が下がる。

よく見れば体の装甲がほぼ全壊に等しくそして左脇腹がごっそり無くなっていた。身体中は血まみれで誰からみても死ぬ可能性が高いと思う。

カシュッ!

紺色の女王は仮面を収納する。

そこからは女性の顔が見れた。


「なんで…………山本が…………」


そこには茶髪で目が大きい同級生。

山本がいた。


「アンタ……誰だよ……顔……見せろや。」


山本は力無く話す。


口からは血が流れる。


「ど、どうやって……?」


男は自分の頭を触りスイッチでもあるかと探す。


「……何やっ……てるの……?」


山本の顔はしかめっ面である。


「どうやっていいかわからなくて」


カシュッ!


「出来た……」

何かを拍子に仮面が収納される。

それをみた山本は。


「兵藤……まさかアンタが……〝赤色〟だったなんて……麻衣は……」


男はうつむいた。


「ごめん……助けられなかった……けどお前だけは……!」


男はしゃがみ手を伸ばす。


「そう……けど……私はもう……間に合わない……」


手がピタリと止まる。

男の顔は青ざめ目元が震える。

ガッ。


「ダメだ……! 生きるんだよ……! 死んじゃダメだ!」


男は山本の肩を掴み揺する。


「それに……ヒュー……今の私た……ち……じゃ……ヒュー……あのプロメテウスは……倒せない……」


山本の呼吸がさらに荒くなる。


「私を……ヒュー……殺せ……ヒュー……」その言葉に男は怒鳴りつけた。


「ふざけんなよ……! 僕一人でアイツを倒せってのか……無理に決まってるだろ……」


僕は山本の右腕を握る。


「ヒュー……ヒュー……私たちは……ヒュー……人間の命を…………ヒュー……エネルギーにして……ヒュー……強くなれるの……」


男は山本が何を言っているのかが理解出来なかった。

何を言っている。

命?

何言ってんだよ?

強くなれるって……なんだ……?

エネルギー……?


「私の……ヒュー……経験値……ヒュー……も高くない……だけど……私たちは……ヒュー……特別……」


意味が解らないしかし今の現状を打破する中で何の意味があるか聞かなくちゃいけない。

「特別ってのはどういうことだよ……僕たちは確かに特別だ……普通の人間より明らかに身体能力が高い……だけど……殺さないといけない理由がわからない……」


「私ヒュー……たち……〝装着者〟同士で……殺し合って……ヒュー……相手を……ゼヒュー……殺したら……レベルが……一気に上がる……の」


山本の呼吸はどんどん荒くなり更にそして声が反比例するかのように弱々しくなっていく。


「早く……ゼヒュー……殺せ……今なら……間に合う……それで……ゼヒュー……あの化け物を……」


山本は右腕をゆっくり持ち上げ胸についている携帯に指を指す。


「ここを……壊せば……いいから……」


山本の声がどんどんか細くなっていく。

目の前でもうダメだと考えてしまった。


「私さ……最初は……ゼヒュー……普通の女の子……だったんだから……ゼヒュー……誰も私を見て……くれなくて……一生懸命……ゼヒュー……変わろうと……した……そして……麻衣だけが……ゼヒュー……私をみてくれた」


山本は天井を眺めながら呟く。

凄く優しい微笑みをしている。


「ゼヒュー……けど……もういい……私も……麻衣と同じ……場所にいかせて……」


「嫌だ……また目の前で人が死ぬなんて……僕が殺すなんて……」


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!

化け物の砲口。

更に悲鳴、建物が崩れていく音。


「早く……なんとかしないと……地球が終わる……お願い……もう殺して……私はもう……疲れた」


山本の呼吸は落ち着いていた。

それは体が回復したわけじゃない。

もう間に合わないと確定したのだ。


「……わかった……」


男は山本の胸についている携帯を取り外す。

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!!

ボゴォォォォォ!!!

化け物がこのビルに頭を突っ込んできた。

男はその拍子で立ち上がる。


「早く……殺せぇぇぇえ……!!」


山本が叫ぶ。

その言葉を遮ることが出来なかった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」バギッ!

破壊音。

拳の中でバラバラになった感触が伝わる。


「……ありがとう……〝一輝〟……」


山本の体が光り出す。

僕は無言でそれを見つめる。

そして光が粒のようにバラバラになっていき空に散った。

ドクン!

ドクン!

ドクン!

男のバラバラになったスーツから新しく金属が精製される。

少しずつ少しずつ体を覆う金属。

プシュー。

金属と金属の間から蒸気のようなものが飛び出す。

ガシャァン!

ガシャァン!

金属の余分な部分が床に落ちる。

そして今までついていた両手両足の爪も外れ、脊柱のような太い尾も床に叩きつけられた。


『set up ready』


携帯からなる無機質な音。そして男の頬を涙が通った。


「チェンジ」


カシュッ!

仮面が顔を覆う。

そこにはテレビの中で戦っていた英雄がいた。


〝赤色の戦士〟


ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!

化け物の頭が壁を破壊しながら赤色の戦士を襲う。

赤色の戦士は左腕を化け物の方に伸ばし手のひらを広げる。


『Brast』


ボオッ!

化け物が勢いよく吹っ飛んだ。

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!


「一瞬で片を付ける」


赤色の戦士は両腕を伸ばし化け物の方へ向ける。


『Full Brast』


『set up』

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!!!

化け物が襲いかかる。


『ready』


「シュートっ!!」


バギィィィィィィ!!

化け物の体の真ん中を突き破る。

化け物が崩れ落ちる。

バチバチという音がなり完全に動かない。

終わったのか。

もういない。

誰も……いない……。


〝一輝……〟


頭の中で斎藤の顔がよぎった。

まだ生きていないのか……。

ダッ!

男は走った。

全力で走った。

生きてるはずだ……。

希望を捨てたくない……。

絶対にいるはずだ。

男は下まで降り倒壊したビルにむかって走った。


死んでない。

死んでない。

自己暗示を強くかける。

死んでる訳がない。さっき見たのは夢だ。

目の錯覚だ。

生きてるに決まってる。

そう思えば思うほど速く進める気がした。

そしてその時には最初のビルの前にいた。

違うビルだった瓦礫の前にいた。

赤色の戦士は瓦礫の上に上がる。


「麻衣!! 生きてるなら返事をしてくれ!!」


だが返事は返ってこない。

周りを見渡す。

大丈夫。

かならず見つかる。

見つけて見せる。

赤色の戦士は大きな瓦礫を掻き分ける。

どこだ。

どこだ。

どこだ。

周りを更に見渡す。

すると瓦礫の中から出てきている細い腕を見つけた。

麻衣だ。

助けられる。

間に合った。

赤色の戦士は滑り込むように近づく。

カシュッ!

戦士は仮面を収納した。


「麻衣、今助けるからな!!」


瓦礫を掻き分ける。

彼女の頭部が見えた、引き上げられる。


「よく頑張ったな……すぐ病院連れてくからな……」


赤色の戦士は右腕を掴んで持ち上げた。

グイッ。

赤色の戦士は引きずりあげた。

麻衣の〝上半身〟を。


「マ………………イ……」


戦士はこれ以上喋れなかった。

麻衣の体は腰から上までしか無く、左腕が千切れており血が渇いていた。

戦士は膝をつき体を抱え込む。


「あああぁああぁぁあぁぁ!!!!」


涙が止まらなかった。

身体中が震え考えることをやめたくなった。

僕が一緒に帰らなければ……学校で金崎に手を出さなければ……二人とも死ななかったんだ。

もう誰とも関わらない……僕の存在が人を殺す。

関わらない……もう誰とも……関わらない。

戦士はこの惨劇に誓った。


〝一輝……学校で助けてくれた時、凄く格好良かった……ありがとう〟

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