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素庵日記  作者: 春野一人
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1月19日 (木) 晴れ

 直木賞受賞した葉室麟はむろりん氏の前作「実朝の首」が出版されたのは、ちょうど素庵が自作「怒濤のうた 鎌倉幕府第三代将軍実朝の青春 銀杏は見ていた」を書いていた頃であった。

 実朝を書くには資料として鎌倉幕府執権北条氏の手になる鎌倉幕府の正史「吾妻鏡あずまかがみ」が、欠かせない。吾妻鏡は北条氏に都合の良いように、事実を改変して書いている部分もあるが、おおむねしっかりした記録者がその任を果たしていて、日本書紀に負けない歴史書に出来上がっている、この時代の主な歴史資料としては、歌人で有名な藤原定家の日誌「明月記」天皇家の血を受けている高僧、慈円じえんの日記「愚管抄ぐかんしょう」が上げられる。

 素庵、暗愚ながら、それらの書物を解読しながら、「怒濤の歌」創作に取り組んだから、平安末期・鎌倉初期の歴史には詳しくなった。

 素庵のこの知識によれば、葉室氏の「実朝の首」に登場する記事はフィクションがほとんどである。吾妻鏡の記事では、実朝の首は鶴岡八幡宮で実朝の兄の二代将軍の頼家の息子公曉(くぎょう)によって殺害されたあと、公曉に持ち去られて、紛失してしまう。

 吾妻鏡には記載はないが、ずっと後代になって、鎌倉からそれほど遠くない丹沢の秦野に実朝の首を祭ったと言われる「首塚」(当初は木製の四尺の墓であった。これは、いまでも、鶴岡八幡宮の宝物館に実物がある!)があることが判明する。

 葉室氏はここに材をとって、実朝の首にまつわる出来事を小説にしている。この小説を読んで、素庵が思ったことは、歴史資料の基づいていないフィクションであるという事であった。・・・しかし、この作品が発刊したのは2007年の事ですでに4年は経っている、今、手元にこの本はなく、当時の印象を述べているだけだから、話が曖昧であることは勘弁して貰いたい。近々、これを分析して見たいと思っている。

 今回の直木賞受賞作「ちょうの記」は、まだ未読だが、(藤沢周平の「蝉時雨」似ているという声もあるが)やはりフィクションであるようだ。過去の歴史に材を取った小説に「歴史小説」と「時代小説」の二つの分類がある。氏の小説はこの分類でいえば、時代小説である。ある時代の中でフィクションな物語を展開するのが時代小説であり、歴史資料を裏切らない範囲で、物語を構築するのが歴史小説である。

 素庵が好きなのは歴史小説であるから、葉室氏と素庵の道は分かれている。そういう事である。


 しかし日本では、小説家は大変な職業である、葉室氏、「実朝の首」以来現在2012年に至るまでの間、4年間に11作を出版している。テレビに出ていた顔は60才と思われない疲れように見えた。小説家は苦労の割には儲からない仕事だ。素庵に金をやるから一年間三冊書けといわれても、遊んだり、本を読んだり、浮かれトンボでいたい素庵には無理無理無理である。


 さて今日も各地の積雪のすごさがテレビで伝えられている。ユーロ圏の経済的動揺が話題である。日本では膨大な財政赤字解消に向けて、消費税の増税が検討されている。

 その中、季節は明らかに春にむけて動いている。


 素庵の三十代後半の長男は、目下求職活動を実施中。就職のため、フォークリフトの研修を受けた。バツイチで娘三人のために扶養料を払っている。もともと金使いが荒く、多少の借金がある。失業で車を売り、借りていたアパートから出て実家である我が家に舞い戻っている。ハローワークで当節としては良い仕事があるそうで、今日、その会社の面接に行った。我が息子に幸あれ。


 素庵、朝はトーストに炒めた「スパム」(缶詰ソーセージである)珈琲。昼は日清の「どん兵衛天そば・缶のポタージュスープ」。夜は「肉豆腐」「毛ガニ」「餃子」「ジャガイモ・タマネギ・人参・豚肉のコンソメスープ」「木更津産海苔(淺草海苔300年の老舗「いせ勘」の品、仲見世にも売店あり!言うなればこれが浅草のりと店の人の弁)」「御飯」「ウイスキーシングル水割り2杯」・・・毛ガニにマヨネーズ・醤油をつけてウイスキーは至福の味であった。最後は御飯に海苔をちぎり入れ醤油をかけ食す。素庵満足。


 正月の冷凍ガニを春に食べ   素庵

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