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素庵日記  作者: 春野一人
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12月3日(土) 冷雨

 一昨日、会社が終わった後、社長の本社転任祝いと忘年会をかねて、木更津の丘の上のホテル「ロイヤル ガーデン木更津」に行った。ホテルの窓からは、中都市にあるような、木の多い風景が街の明かりに照らされて見えている。料理は「白和え三種」」「まぐろ・イカの刺身」「魚焼き物」「吸い物」「茶碗蒸し」「天ぷら」「鍋」「炊き合わせ」「酢の物」「お新香」「御飯」など、わりと地方旅館ででるような古風な、麗しい料理なので、素庵はビール(サッポロ黒ラベル・ラガー)を2杯飲んだあと、冷酒に切り替える。聞いた所によれば地酒と言うことだが、酒名は解らなかった。デカンタに入れられた酒をコップに移して飲んでみると、これが辛口の良い酒であった。東京、浜松街界隈の居酒屋などではもっと質の悪い酒が、飲み放題の席には出されて、素庵は仕方なく日本酒はあきらめてビールを飲み続ける事が多いのだが、この酒は気に入った。今でこそ、木更津は、どちらかというとマイナーな街であるが、江戸時代は俳人・小林一茶を句会で経済的に支えた文化の街であるから、木更津の人の口が肥えているのは当然かも知れない。以前、同じように会社の飲み会で八王子第一といわれる割烹料亭「なか安」にて素庵はただ飲みして、料理、酒の美味に満足したが、このように東京近郊の元宿場街には、江戸的な料理と良い酒が残っている事が多いのである。(ただだから余計うまい!さもしい貧乏素庵である)

 素庵、したがってマイペースで地酒を飲み続け、お新香で御飯まで食べて、悪酔いのない良い酒席となった。別室で行われた二次会はパスして、この日も早々床につくよい子なのである。

 翌日は雨、ゴルフをするグループとしないグループに分かれて行動。五時に目が覚めてしまった素庵は自販機でホット珈琲を買ってロビーで高木彬光「邪馬台国の秘密」を読む。この作品は邪馬台国の位置について、なかなかの独特な推理が興味深い。ロビーは英国風の高級家具が使用されていて居心地が良い。このホテルは結婚式場にも、用いられているから、良いインテリアなのだろう。朝ご飯は「鰺ひもの」「海苔」「温泉卵」「アサリ佃煮」「納豆」「味噌汁」「御飯」。比較的単純な組み合わせながら、さすがの千葉、鰺の干物焼は絶品である。ノンゴルフ組みは10時アクアラインにて帰郷・海ほたるにておみやげを買った後、(素庵は1200円なりのピーナッツバウムクヘンを二箱にアサリさつま揚げを土産とする。これは我が家と次男家族への土産である。東京にて素庵は、車から降りて、わが恐妻に電話する。雨だから午後から映画を一緒に見ようという相談である。

 見た映画は「RAILWAYS 愛を伝えられないおとな達へ」である。RAILWAYSシリーズ第2弾である。監督 蔵方政俊 出演 三浦友和 余貴美子 小池栄子。主人公は59才、定年を控えた富山電鉄の運転主である。定年後はのんびり旅行でも楽しんで暮らそうと思っているが、普段あまり会話のない妻が看護士の資格を生かして働きたいと言い出す。彼にはそれが理解できないのである。ここか問題が起きてくる・・・後はストーリーになるから書かないが、「積み残した青春の夢」と「老後」についてじんわりと感動できる映画であった。個人的に言えば、素庵の母方の祖父は、富山の農家の子で、青年期神田のテイラーに丁稚奉公として出てきた人である。であるから素庵は自分の事を、やはり富山出身の落語家、立川たてかわすけ(1954年新湊市生まれ)に似ていると思っている・・・。

 田舎のない素庵は古里を富山であると思っている。映画中、立山などの富山を囲む雪の高山が走る電車の背景として使われ、素庵は呟く「ああ、富山!」

 

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