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素庵日記  作者: 春野一人
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11月17日(木) 晴

ボジョレヌボー解禁日である。もとより素庵、ワインのことなどは詳しくはないが、どちらの酒が好きかというのは、個人の好みの問題なので、対処できるのである。ここで、おろかな素庵の自慢話であるが、以前仕事で出入りしていた、私立女子校の行事の打ち上げの折、「私は、良い酒かどうかは余り良く解らないが、その日本酒が純米酒であるか、醸造用アルコールを混ぜたものであるかどうかなら、解る」と、用務職場の好々爺の長に、うっかり豪語したものだから「それなら、品定めをやってみろ」といわれてしまった。グラスに少しずつ入れた日本酒が三つ、用意された、このなかの一つが純米酒であるという。純米酒も醸造アルコール入りの酒も安酒ではない。飲み比べた素庵は、純米酒を言い当てた。メデタシ、素庵は恥をかかずに済んだのであった。こういうと、素庵はよっぽど酒飲みと思うに違いないが、そうではない。「実朝」を書いていた頃、鎌倉に足繁く通っていたのだが、その鎌倉は御成通りに高崎屋という老舗の酒屋さんがあって、折々に四合瓶入りの純米酒を買っただけの話なのだ。素庵はそれを夕食時に一合ほど飲むだけの人である。さて今日は、ボジョレヌボーを二本買い込んだ。一本は、高級スーパーで知られる「成城石井」のオリジナル2400円の品、もう一本は近頃都内に多店舗化している、イオングループのミニスーパー・マイバスケットの880円のオリジナルなんとプラボトル入りの品である。

 晩ご飯は自家製太巻きである。材料は福島の農家から直送された新米とこちらで調達した山ごぼう(嘆かわしい近所の大型スーパーではあまり売っていない)・自家製卵焼き・赤でんぶ・きゅうり・甘炊き椎茸・江戸前海苔(木更津産)などである(うまい)。これを食していると、二種のボジョレを、山の神がキッチンでグラスにそそいで運んでくる。したがって銘柄は解らない。エントリーは出もどり息子・素庵・次男である。次男はまだ仕事から帰らない。色合いは、良く似ている。味も良く似ている。熟成していないフルーティな味である。素庵は、普通の赤ワインのような濃い味のものを、成城石井のものと判じた。長男も右にならえである。ハズレ、あっさりした味のものが成城石井のものであると、山の神の笑いものになった。おまけに「来年からは安いものでいいね」と曰われる始末である。帰ってきた次男が、のちに部屋にやって来て、「のみくちがあっさりした方が高いものなんだね。俺も間違えた」と言うのであった。

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