「貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活」 柳美里 著 2015年4月発行 を読んだ。
柳美里は1968年生まれ、高校中退後、東由多加率いる「東京キッドブラザース」に入団し、最年少役者、演出助手となった。
1993年に「魚の祭」で岸田國士戯曲賞を受賞、1997年には「家族シネマ」で芥川賞を受賞した。その後も数多くの文学賞をとり、中堅作家として知られている。
なのに、カードは使えなくなり、水道も給水停止寸前まで追い込まれる。そのように貧乏なのは何故か?日記風に書かれた本著作は、その謎を徐々に明らかにしてゆく。
それがすごく面白いと言っては本人には実に気の毒だが、当今の小説家をめぐる問題が赤裸々に表されていて、何故かユーモラスで笑えてしまう。
著者が言うには、日本で小説で食べていけてるのは三十人に満たないという。そのほかの多くは、講演会やマスコミ出演などで収入を得ている実態だ。柳美里が、貧乏なのはそうした作家の『副業』が苦手とい事が原因でもあるのだ。けれど原因はそれだけではない・・・。
本書は2015年4月1日に発刊されたばかりで、その新しさゆえに、現在の出版界の雰囲気も伝えている。相変わらず賞に頼った、旧態依然の、出版してやるんだという営業姿勢。印税が本の売り上げの10パーセントの少なさ!
1500円の単行本が三万部売れて450万円!そこから、税金、経費を差し引いたものが作家の手取りだ!これで考えると、作家は年に一本、そこそこ売れる作品を書いて、あとは雑収入に頼って生きるという不安定な日々を過ごさねばならない。
キンドル電子出版では、三ドルを越える本は印税が70パーセントだ。なぜ、印税がこんなに違うのかというと、電子出版は編集と印刷と製本と配達が必要でないところにある。
キンドルでは350円程度の本が一万部売れるだけでも245万円の粗収入があるのだ!これに、講演会などの収入を加えれば、安楽な日々の可能性はあるなあ。
素庵など、月二千円 涙金 素庵