みんな修行
「いいか、はっきり言うがお前は弱い!」
朝食のパスタをもぐもぐしながら四郎はメイナーに言った。まだ眼が半開きだ。恐らく寝不足なのだろう。
「うぐ…確かにボクは弱いけどそんなにハッキリ言わなくても…」
痛い所を突かれたメイナーは思わずたじろぐ。その姿勢は中途半端にパンを口に運ぼうとしている所で止まっている。
「うるへー、とにかく特訓だ特訓!」
寝起きの四郎には遠慮や配慮が一切ないようである。
「質が悪いな」
シャルビィは我関せずと黙々と食事をとっている。他の者も同様だ。
「で、でも特訓って何をすればいいの…?」
「……………」
どうやら何も考えていなかったようで四郎の動きがピタリと止まる。しばらく思案してから四郎は言った。
「アレにしよう。よし決めたアレだ」
「アレって何?」
「アレはアレさ。ただ準備に時間が掛かるからしばらくは別の特訓をして貰う。だからとりあえずは拳士かなぁ」
食事を再開する四郎。メイナーは複雑な表情をしながら頷いていた。
「シロー様、私たちの特訓については何かありますか?」
「う~ん、ミリーは角についてはほぼ習得してるから大丈夫じゃない?強いて言うなら部分竜化が出来ると有り難い」
「なるほど。では明日からそちらの訓練もしてみようと思います」
ミリーは満足げな表情をする。四郎は続いてネミリアに視線を向ける。
「ネミリアにも特訓して貰うぜ」
「何をやればいいのかしら?」
ネミリアは意外にも乗り気のようで聞き返してくる。
「精霊魔法の強化だ。とりあえず瞑想から始めて今までよりも精霊との繋がりを身近なものにしてもらう」
「なるほどね。瞑想というのはよく分からないけど大体分かったわ」
次に四郎はシャルビィに視線を向ける。シャルビィも食事を一旦止めて顔を上げる。
「シャルビィは<武装化>を覚えてるからそのまま<武神化>の訓練に入って貰う」
「ああ。任せてくれ」
シャルビィも二つ返事で頷く。四郎は最後にティカに視線を向ける。
「ティカは?<雷矢>はもう出来るようになった?」
「そんなに大量には撃てないけど大丈夫よ」
えっへんと胸を張ってティカが答える。ちなみに当然ながら揺れる程の胸はない。
「なら次はまた<雷矢>を覚えて貰おう」
「ええー!?何でよっ!!新手のイジメ!?」
ティカがギャンギャンと喚き散らすが四郎はそれを意にも介さない。
「安心しろ。お前は<雷矢>だけでどんな敵にも勝てるようになるから」
「本当に?」
ティカが上目遣いで四郎を見上げる。全く効果はないようだが。
「ああ。ただ今回覚えて貰う<雷矢>はこの前のよりも難しいからな」
「えぇ!?アレより難しいの!?」
ティカがテーブルを思い切り叩いて立ち上がる。
「ティカちゃん、お行儀が悪いですよ」
「あ、ごめんなさい」
ミリーに注意され素直に謝ってすぐに席に座り直す。
「まぁお前なら出来るから大丈夫だ。だから頑張れよ」
四郎はそう励ます。
「分かったわよ。相変わらず師匠は無茶なんだから」
頬を膨らませながらティカは文句を言っている。メイナーはどうやらそれが面白かったようでクスリと笑っている。
「そういえばシローさんは特訓しないの?」
メイナーのその言葉に全員が固まった。それからすぐにティカが怪しげに笑い出した。
「うふふふふふふ、そうよ、私たちだけ特訓して師匠だけ特訓しないなんて納得出来ないわ」
「そうだな。日々の鍛錬も重要だがシローはそれすらしている様子もないしな。そんなんだといざという時に困るぞ」
「シローちゃんも切り札を作っておいた方がいいわよ」
「そうです。シロー様の凛々しいお姿……ハァハァ」
メイナーの言葉により皆から口々に非難される四郎。額には脂汗が浮かんでいる。
「ていうかミリーだけ意見じゃなくて欲望じゃねーか!」
「いいから特訓して下さいシロー様。もぎますよ」
「どこを!?」
「ふふふ、どこでも、ですよ」
ミリーが指を唇に添えながら色っぽく言う。四郎はリアルに命の危機を感じていた。
「…いやいや、俺には執筆もあるしそんなに暇じゃ」
「往生際が悪いわよ師匠。シャル、捕まえちゃって」
慌てて逃げ出そうとする四郎の首根っこを掴むシャルビィ。
「えと…大丈夫なの?」
自分の発言のせいで四郎が酷い目にあっているのを見てビクビクしているメイナー。
「大丈夫よ。こんなの日常茶飯事だもの」
ネミリアがメイナーを落ち着かせる。
「おい、お前ら!何和んでだ。助けろぉぉぉぉっっ!!!!」
そのままズルズルと四郎は訓練場へと連行されていった。




