白い世界
周りが白に包まれた。先程までいた神様も見当たらない。上も下も、右も左もない白の世界。俺はそんな中に一人で漂っていた。
すると前方の方が揺らぎ、そこから人が出てきた。
「うおっ!?……お、俺?」
そこにいたのは俺だった。髪も顔も身体も、紛うこと無き俺。ただし俺とは圧倒的に違う点が一つあった。白いのだ。黒髪に学ラン、黒の運動靴の俺とは全くの逆だ。目の前にいる俺は髪も肌も服も、全て白い。そしてそれは何故か儚げにも見えた。
「誰だお前?」
驚愕はあったが気負うことも無くとりあえず質問する。
「俺はお前だよ。橘四郎」
「おおっ!?」
何やらファンタジーな感じに楽しくなってくる。やっぱり俺は日常が退屈だったのかもしれない。まぁ茜とイチャイチャごっこするのは楽しかったけどな。
「お前が俺なら何でわざわざ出てきたの?」
白い俺に疑問をぶつける。
「まぁただの老婆心からの忠告だよ」
いや、お前が俺なら同い年だし。老婆心も糞もないだろ。
「クク、そんな事はないさ。そんじゃ忠告しとくけど…」
ゴクリと俺は思わず息をのむ。
「ちゃんと避妊はしろよ?」
「……」
そう言って白い俺は景色に溶けていった。
「な、なんじゃそりゃーーー!!!!」
全くいきなり現れて爆弾発言して即退散とか悪趣味すぎんだろ白い俺。本当に俺かよ。てか避妊って…そんな相手いないし。
いや、待てよ?もしかしてあんな事言うってことは異世界でも彼女出来るのか?
期待に胸が膨らむ。茜には悪いとは思うけど俺らの付き合いはちょっと特別だったし。
そんな事を考えていると突然視界が開けた。自分よりも遥かに下の方に大地が見える。
「つまり落下ですかい!」
うっひょょぉぉー!!と叫びながらそのまま落ちてゆく。
そして思い切り地面に激突した。軽くクレーターが出来ていたのでかなりの高度と速度で落下したことが窺える。
「それでも俺の身体は無傷でしたよ、はい…」
分かっちゃいたが自分の不死身さには呆れるばかりだな。とか思いながらも俺は周りを見渡してみる。 そこは草原だった。アフリカの大地とかよりもゲームのフィールドに近い感じ。
「リアル草原フィールドきたーー!!」
とりあえず叫んでみた。感動して辺りをキョロキョロと見回す。
『感動してくれて神様冥利に尽きるわい』
いきなり頭の中に神様の声が響いてきた。一瞬驚いたがまぁ神様だしという事で納得した。
「いやぁ、すげーな。ファンタジーだよ。ファイナルよりもファンタジーだよ!」
興奮して訳も分からない台詞を言ってしまった。
『うむ、それだけはないぞ』
ニヤリ、と神様が笑う効果音まで聞こえてくる。すごいけれど確実に能力の無駄使いだろ。
『なんと、このすぐ近くで美少女が魔物に襲われておるのだ!!』
神様がそう言い切った直後。
キャアアアァァーーー!!!
という甲高い声が聞こえた。




