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14. ベラトリウム⑥

『前回のあらすじ』


ノアとホレスの激戦が終わり、次の試合はルカスとヴァノの決勝戦へ。

幼少期からの因縁と友情を胸に、互いの誇りと信念を懸けた闘いが始まるーー勝敗が決するその瞬間、二人の想いが交差する。

観客席が息を呑む。

二人の刃が幾度も交錯し、火花が舞い上がる。


汗が頬を伝い、双剣が円を描くように輝く。

その剣筋は荒々しいが、迷いがない。


「今日こそお前に勝つ!」

「……負けるつもりはない」


俺は剣を構え直す。

ヴァノの踏み込みを見切り、正面から受ける。

火花が散り、俺たちの視線がぶつかり合う。


俺の剣がヴァノの双剣を外へ滑らせ、瞬時に反撃へ転じる。

だがヴァノも咄嗟に身を引き、背中合わせに回り込むように構え直した。


(やはり……動きに一切の無駄がない)

(だが、私はーーもう昔の私ではない!)


ヴァノは低く息を吸い込み、再び踏み込む。

双剣が舞うように動き、二方向からの連撃が襲いかかる。

俺は受け流しの中で、微かに口元を動かした。


「ここだ!」


長剣が一閃。

その動きは静かで、しかし確実だった。

刃がヴァノの片方の剣を弾き飛ばす。


「しまっーー!」


ヴァノが後退する。

観客席から歓声が上がる。

俺は追撃をせず、ただ静かに構えを戻した。


「ヴァノ、まだ続けるか?」

「当たり前だ。ここで終われるか……!」


ヴァノは残った片手剣を逆手に持ち替え、俺に向かって突撃する。


(あの日からずっと、追いつきたいと思ってきた。才能では敵わない。ならば努力で――。今日こそ、追い抜く!!)


ヴァノの渾身の踏み込み。

それを俺は正面から受け止めた。

刃と刃がぶつかり、金属音が会場に響き渡る。


互いの剣先は微動だにせず、押し合う力は拮抗する。

観客全員が固唾を呑んで見守っていた。


「やはり、一筋縄ではいかないな」

「行くぞ、ルカス!!」

「あぁ!」


二人が同時に跳び、刃が交差する。

光の閃きと共に、会場の空気が震えたーー。


だが、その瞬間だった。

観客席の上空で何かが爆発する音が会場内に響き渡る。

俺は反射的に視線を上げる。

淡い光の結界がひび割れ、割れたガラスのように砕けて破片がパラパラと降り注ぐ。


(……嫌な気配だ)


空気が歪み、会場を包む風が変わる。


「結界が……破れてないか!?」


観客の中で叫び声が上がる。

俺は息を呑む。

会場のざわめきが、一気に緊張へと変わる。



突然、上空で爆発音が響き渡った。

続けざまに、何発もの爆発音が会場内に鳴り響く。


次の瞬間、会場の天井が崩れ落ち、屋根だったものが轟音と共に落下する。

隣にいたユスティナ様を、レオニス様が咄嗟に庇った。


「ユスティナ、無事か!?」

「……ええ、大丈夫よ!」

「二人とも怪我はないか?」

「はい!」

「問題ない!」


辺りを見渡すと、天井は崩れ落ち観客たちが血を流して倒れている姿が目に入った。


「ルカス様は……!?」


中央に視線を向けると、ルカス様とヴァノ様の姿が見える。

そのすぐ近くには、昨日遭遇したセレナとレオンの姿もある。


「ユスティナ様!」

「ノア、ルカスのもとへ!」

「はい!」


僕は急いで中央へと駆け出した。



「昨日ぶりだね、ルカス!」


セレナは無邪気に手を振り、レオンはその後ろで退屈そうにあくびをしていた。


「セレナ=カリグラ、そしてレオン=ガイウスか……」

「こいつらが昨夜言っていた連中か!」

「貴様ら、自らの愚行の重さを理解しているのか?」

「勿論だよ?」


セレナは不気味に笑う。


「この場での狼藉、決して看過はできない。覚悟してもらおう」


ヴァノは怒り二人に向かって剣を構えた。



「え?私たちとやり合うつもりなの?」

「やめた方がいいと思うけど〜?二人とも、もう体力残ってないでしょ?」

「このような暴挙を前に、黙っていられるわけがないだろう!ーーふざけるのもいい加減にしろ!」


「おい、ヴァノ!!」


俺の静止も聞かず、ヴァノはセレナに向かって駆けだした。

途中で片方の剣を拾い上げ、そのままセレナへ振り下ろそうとする。


セレナはニヤリと笑い、余裕の表情を浮かべた。

ヴァノは、そのまま正面に突っ込むかと思いきや次の瞬間には姿を消す。

背後に回り込み、双剣を振り下ろす。


しかし、レオンがすでにその一撃を受け止めていた。


「速さは悪くねぇが……剣が軽ぃな。そんなもんじゃ俺たちは倒せねぇぞ」

「くっ……!」

「楽しそうだね〜。ねぇルカス、私たちもやり合おっか!」


セレナの右手に、銀色の魔法陣が浮かび上がる。


「Pluvia Laminarum!」


無数の金属片が俺に襲いかかる。

俺は剣を振るい、次々と弾き飛ばした。


「守ってるだけじゃ勝てないよ〜!」

「私と本気でやり合いたいなら、魔法を使わなきゃ無理だと思うけど?」


その右手に、今度は黒い魔法陣が現れる。


「お前……闇属性の魔法使いなのか!?」

「そうだよ。せっかくだし、受け止めてみて? 『光属性』のルカス様♪」


「Nigrum Ardere!!」


黒炎が魔法陣から噴き上がる。

それは闇そのものが燃え上がったような、形を持たない炎だった。


「Murus Lucis!」


俺は光の防壁を展開し、闇の炎を受け止める。

だが、セレナの魔力は強大で試合の疲労が残る身体では徐々に押し負けていく。


(くっ……もう……限界だ……)


その時、横から新たな闇魔法が放たれセレナの魔法とぶつかり合い相殺された。


「ルカス様!ご無事ですか!?」


駆けつけたのはノアだった。


「ノアか……助かった……」

「ここは一度退きましょう。状況が悪すぎます」

「僕が二人を引きつけます。その間に撤退を!」

「……わかった。絶対に無事に戻ってこい!」

「もちろんです!」


ノアは一呼吸おいて言葉を続ける。


「僕が合図を出したら、そのタイミングで離脱してください」


俺は無言で頷いた。


「あーあ、仕留め損ねちゃった」

「あ、ノアじゃん!優勝おめでとう!勝つと思ってたよ〜!」

「それはどうも、ありがとうございます」


ノアは俺の前に立ち、セレナを鋭く睨みつけた。

次の瞬間、ノアの魔法が発動し濃い霧が一帯を包み込む。


「そう簡単に逃すと思う?」

「伯爵家の従者として、必ずお二人をお守りします!」

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