稲瀬分校略して稲分よ永遠に その1
親父が迎えに来た。
「うちの息子がお世話になりました」
と大松田医師と加藤看護師長に会釈をした。2人とも手を振って見送りしてくれた。
「親父、車はどれだ?」
親父は黄色のZC33S型のスイフトスポーツに指差して
「お前が前から乗りたかった車だろ、これからはお前の愛車だ」
と、スイフトスポーツの鍵を渡された。
僕は驚きと喜びで胸がいっぱいになった。この車はずっと憧れていたもので、実際に目の前にあることが信じられなかった。
「本当にありがとう、親父。これからは大事に乗るよ」と感謝の気持ちを込めて言った。
「お前が頑張ったからこそだ」
と親父は笑顔で答えた。
車に乗り込むと、ハンドルを握る手が少し震えた。エンジンをかけると、心地よいエンジン音が響き、これからの新しい生活に向けての期待が高まった。リハビリでの苦労が報われた瞬間だ。
僕は、
「母校の稲分があった駒梨町は、平成の大合併で隣の大湯滝市と合併したんだよな。稲瀬分校のあった連庭は今は、連庭町になっているから、寂しいもんだな」
と、言った。
親父が、
「稲分があった場所へ行って見るか?」
僕は、うんと頷いた。
僕は、稲分がある連庭町へ車で向かった。




