表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/19

現実の世界へ戻る

 ピッ…… ピッ… ピッ……

何かの機械の音がする。

 

 うー… うー… うー…

 

暗がりから目が覚めた。医者と看護師と親父が顔を覗いていた。

 僕は病院のベッドの上だった。さっきまで夢を見ていたようだ。

 白髪の初老の大松田という男の医者が

「ようく聞いてくださいね。あなたは、大事故で意識不明で搬送されてきました。そして、3年も寝ていました。あんな大事故でかすり傷だけで、どこも後遺症も無いとか奇跡です」

 僕は驚いた。 

「3年も意識不明で寝ていたのですか?そういえば僕の母校の稲瀬分校はまだありますか?」

 ベテランの柴山という女性の看護師が応えた。

「あの稲瀬分校は、去年取り壊されましたよ」

その言葉に息を呑んだ。稲瀬分校は僕の青春そのものだった。友達と笑い合い、先生たちと過ごしたあの場所がもう存在しないなんて、信じられなかった。


「取り壊された……」

僕は呟いた。

「そんな、何もかもが変わってしまったんですね。」


親父が黙って僕の肩に手を置いた。彼の顔には安堵と心配が入り混じった表情が浮かんでいた。 

「でも、お前が無事で本当に良かった」

と親父は言った。

「3年の間、どれだけ心配したか分からないよ。」


僕はふと、自分の体を見下ろした。3年間という時間は、僕の体をどう変えたのか。筋肉は衰え、体は痩せこけていた。今すぐにでも立ち上がりたい気持ちと、体がそれを許さない現実が、僕の心の中で葛藤していた。


「まずはゆっくりとリハビリを始めましょう」

と大松田医師が言った。

「急に無理をすると、体に負担がかかりますからね。」


僕は頷いた。自分の体がどれほど弱っているのか、実感するのはこれからだ。しかし、今はまずこの現実に向き合うことが必要だった。


「それにしても、3年も時間が経ったなんて……」

僕は再び呟いた。

「友達や家族はどうしているんだろう。皆、僕を覚えているのかな。」


看護師の柴山さんが優しく微笑んだ。

「もちろん、覚えていますよ。皆さん、あなたの帰りをずっと待っていたんですから。そして、退院したら、かきえんでラーメン食べたいでしょ!!」


その言葉に少しだけ心が軽くなった。3年間の空白を埋めるのは大変かもしれない。でも、僕は再び歩き始めることができる。新しい一歩を踏み出す覚悟を決めた。


「さて、まずは少しずつ体を動かしてみましょうか」と柴山さんが言い、僕の手を優しく取り、リハビリの第一歩を始めるためにサポートしてくれた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ